(誘っている……のか? 八千穂が? 俺を?)
身を寄せてくる八千穂と見詰め合いながら、皆守はやや仰け反る体勢で必死に現状を理解しようと努力していた。
「私の胸、こんなにドキドキしてる」
八千穂は皆守を跨いでその上に腰を下ろすと、皆守の手を取り自分の胸に押し当てた。
「皆守クンも、ドキドキしてるね……」
いつの間にか八千穂の空いた手は皆守の股間に触れており、優しく撫で上げている。
まるで小悪魔にも似た、普段の八千穂では思えない余裕を含んだその言動に、皆守は軽い畏怖を覚えた。
しかしそれ以上に、目の前に居る少女に対する情欲は膨れ上がっている。
何かを期待しているかのような潤んだ瞳で見つめてくる八千穂もまた、皆守の目から見てもハッキリと分かるくらい
息荒く興奮しており、欲情していた。
「皆守クン……?」
理性を総動員して必死に耐えている皆守に気付き、八千穂は可笑しそうにクスリと微笑むと、皆守に自分の唇を寄せた。
たっぷりと唾液の塗された舌はあっさりと皆守の口内に到達し、ぞろりと舐め上げる。
それがスイッチとなった。
次の瞬間、皆守は八千穂を物凄い力で押し倒して先程と体勢を入れ替えると、お返しとばかりに八千穂にキスをする。
「あ、ん……ふ」
激しく口内を舐る皆守の舌に応えるように、八千穂は息をする間も惜しんで皆守の唇を貪る。
口の端から唾液が零れるのも構わず、舌を突き刺し、絡め合う。
「は、ふぅ……」
1分に渡る半ば無呼吸のディープキスを終え、皆守は荒く息をつきながら唇を離した。
混ざり合った唾液は互いの唇に橋をかけ、ぽたりと八千穂の胸に零れる。
「いいんだな?」
皆守がそう尋ねると、八千穂はまるで別人の様に甘い声色で頷いた。
「うん……いいよ」
自らブラを外し、ショーツを脱ぎ、スカートを残して全裸になる八千穂。
「九龍クンは、きっと、正直に話したら解ってくれるよ」
その答えに、皆守は乱暴な手つきでズボンを脱ぎ、天を突かんばかりに反り上がった剛直を取り出した。
片手を八千穂の腰に当て、もう一方の手を竿に添えて腰を進める。先端が八千穂の秘所の入り口に触れると、
八千穂は小さく体を震わせた。
「いくぞ」
その言葉と同時に、亀頭が八千穂の肉を分け入り、ぬるりとした感触に包まれる。
既に溢れんばかりに濡れていた八千穂の秘所はあっさりと皆守のソレを受け入れる。
処女の証である粘膜にたどり着くのはすぐであった。
「ひ、ぐぅ――」
初めての恐怖感からか僅かに抵抗する八千穂だが、皆守は構わずに腰を突きつけた。
粘膜が引き裂かれる感触。
同時に、八千穂が小さく悲鳴を上げる。
「動くが、構わないな?」
皆守は体を倒して八千穂に体を重ねると、耳元にそっと呟いた。
「……うん」
一呼吸の間を置いて返ってきた八千穂の言葉を合図に、皆守が腰を前後にスライドさせる。
動きに合わせて二人の結合部がグチュグチュと水音が響く。
「あ。んん、はぁっ!!」
八千穂が時折悲鳴とも嬌声とも取れる声を上げる度に、皆守の腰の動きは激しさを増し、さらなる八千穂の声を求める。
まるで食いちぎらんばかりに締め付けてくる八千穂の秘唇は、少し動かすだけでも皆守に激しい射精感を与えた。
爆発しそうな感覚を歯を食いしばり耐えながら、皆守は激しく腰を動かす。
「みな、皆守クン――!!」
皆守の限界が近いと気付いたのか、八千穂が息もきれぎれに名を叫ぶ。
ソレが引き金となったらしく、皆守は八千穂の中で盛大に爆ぜた。
音が聞えてきそうなほど激しい射精は八千穂の中を満たし、精液が秘所から溢れ出てくるまで続いた。
まるで全てを吸い尽くされるような感覚に陥りながら全てを出し切った皆守の肉棒を、それでもなお締め付け、
精を絞ろうと八千穂の秘唇は蠢いている。
皆守は噴出した汗を拭いもせず、同じく汗だくで軽く呼吸困難に陥っている八千穂に覆い被さるように倒れた。
荒い息を整えながらも、二人は互いの体の感触を確かめ合うように抱きしめあい、もう一度キスをする。
精も根も尽きた二人はいつしか、そのままの体勢で寝息を立てていた。
「やっちー、皆守、気付いたか?」
アレからどれだけの時間が経ったのだろう。
皆守と八千穂が気付いた時、目の前には壁が爆破された際に散った瓦礫と、自分達を見下ろしている葉佩の姿があった。
「葉佩……?」
「九龍クン……?」
並んで、もとい抱き合って寝ていた二人は次第に意識を覚醒させ、葉佩の姿を確認するなり、
「わぁぁぁぁぁ!!」
「きゃぁぁぁぁ!!」
同時に悲鳴を上げて飛び上がった。
「あ〜、やっちー……。できれば制服を着てくれると嬉しいんだけど」
葉佩は少しだけ困ったように目を逸らし、床に放り捨てられるように落ちている制服を指差す。
八千穂はソレを慌てて拾い、袖を通した。下着などこの際、二の次だった。
「九龍クン……、その、見た?」
「…………」
見てない筈は無いのだが、葉佩は苦笑こそ浮かべるものの何も答えない。
八千穂の裸の事も、それ以前に裸で皆守と抱きあって寝ていた事も、葉佩は見ていない事にしてくれるらしい。
八千穂は葉佩のそんなささやかな心遣いに感謝しつつ、同時に、皆守との情事の事を思い出して真っ赤になった。
皆守は既に冷静な様子を見せていたが、明らかに目が泳いでいて葉佩の方を向こうとしない。
とりあえずこの気まずい空気を拭い去ろうと、葉佩はまず真相を告げる事にした。
「二人とも、ちょっといいか?」
先程拾った殻の瓶を取り出して八千穂に見せる。
「やっちー。この瓶、覚えてるだろ?」
葉佩が手にした瓶を見て、八千穂は「あっ」と声を上げた。
八千穂が罠にかかる前の部屋で見つけた、良い香りのする液体の入った瓶であった。
「やっちー、コレを香水だと思っていただろ? 俺もその時は気付かなかったから、
やっちーがこの瓶を持って帰ることを了承したけど、あの後でふと中身の見当がついたんだ」
葉佩は申し訳なさそうに頭を掻き、皆守と八千穂を互いに見る。
「コレ、媚薬だったんだよ」
葉佩の言葉に、八千穂と皆守は目を丸くして言葉を失い、互いに顔を見合わせる。
「すぐそこで空になって床に転がってたコレを拾った。この部屋に落ちた際、やっちーのポケットから落ちたんだと思う。
空なのは、落とした際に出来た瓶の底のヒビ割れから漏れたんだろうね」
葉佩の説明に、皆守は頭を抱えた。
「じゃあ、あの妙な火照りとかはそれのせいだって言うのか?」
「……やっぱり」
皆守の問いに、葉佩は顔をしかめた。
「妙な興奮や頭痛、火照り、動悸、あとは……異常な性欲」
葉佩の言葉に、皆守と八千穂は体を硬直させた。
「もし、二人が、無意識の内に変な事をしてたとしても……ソレは事故だって事を覚えていて欲しい。
気化した媚薬は持続時間が短いから、後に効果が残るような事は無い。
二人とも、その……俺は知らないけど、二人が何か、そういう事をしていても、それは仕方ない事だというのは理解して欲しい」
葉佩の説明に皆守と八千穂は空いた口が塞がらない気持ちであった。
「それじゃあ、アレは薬のせいで……その、錯覚してたの?」
今現在、皆守との情事を思い出しては頭から湯気を吹かんばかりにしている八千穂は声にならない声を漏らしながら
床にへたり込んだ。
皆守はやはり冷静な様子を見せていたが、八千穂と同様らしい。
「ふん……。ともかく今日はゆっくりとカレーに浸かって、風呂でも食って眠りたい気分だぜ」
あからさまに妙な事を口走っていた。
翌日――。
「昨日は大変だったね……」
「そうだな……」
昼休みの屋上。八千穂と皆守は並んで墓地の方向を眺めていた。
遺跡での一件を思い出しては、互いに何とも言えない恥ずかしさに身を焼かれている。
「でも、不思議だよね」
「なにがだ?」
「あの後九龍クンに詳しく説明してもらったんだけど、気化した媚薬の効果ってせいぜい5分程度しか続かないんだって」
八千穂は俯き、若干赤くなる。
「だから昨日のって、もしかして途中から自分の意思でしていた……のかな?」
「ぶっ!!」
八千穂の言葉に皆守は盛大に吹き出し、ゲホゲホと咽返る。
「…………」
「…………」
しばらくの沈黙。
「でもね、嬉しかったよ?」
「……ハァ!?」 m
「なんかもう、普通の友達以上に分かり合えた気がするもん」
「なんか意味が違うぞ、ソレ」
「そうかな? じゃあ、こんどこそ昨日の続きをしよっか?」
「な!? 馬鹿、何を言ってやがる!! こんな場所でするなんて、正気か?」
取り乱す皆守。皆守の考えに気付き、赤くなる八千穂。
「な、違うってば!! お、おしゃべり方だよ!!」
「……ぁ」
「もう!! 皆守クンったら!!」
八千穂は口を尖らせてそっぽを向く。
しかしすぐに振り返ると、赤い顔をしたまま微笑んだ。
「……でも、そっちでもいいかも」
昼休みの終わりを告げるチャイムが聞こえてきた。