うわさになりたい - 後書きのようなもの
長々お付き合いいただきまして、どうもありがとうございました。
BLを無謀に目指して、ほんとうに無謀でしたが、相変わらずの行き当たりばったり、書いた本人(だけ)は楽しかったです。
CGIからHTMLにするのに、一度文章を全部ワードパッドに移したのですが、出来心で、いつも本を出す時の原稿の仕様に設定してみたら、90Pありました(苦笑)。
よくもまあ、これだけ、ご都合主義の妄想を垂れ流したなあと苦笑いしつつ、それはいつものことなのですが、よりによって54かよと、問題はそこなのかと(苦笑)。
何も考えずにつけたタイトルは、爆風スランプの、はるか昔にCMに使われたシングルから。
「素直になれなくて」は、シカゴの大ヒット曲。
いっそ全部曲名で統一しやがれってなもんで。
また機会があれば、このふたりでいろいろ書いてみたいなあと思ってます。懲りもせず(苦笑)。
レアな上に、ホモエロはやめてと言われる(笑)ジェロたん絡みでしたが、最後までお付き合い、ほんとうにどうもありがとうございました。
あまりにうるさく54エロエロ抜かすこいつに、絵掲示板とか字掲示板とか、その他様々なところで、ロクでもない妄想に付き合っていただけて、ほんとうに幸せでした。
これからもよろしくです☆(え?)
でもって、下に蛇足を・・・単なる書き足しですが、オマケということで。ちなみにタイトルは、大好きなTOM☆CATより。温故知新っつー気分な今日この頃です。ではではまた☆
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「目をとじて」
ハインリヒが、いつもひとりで寝るベッドが、ジェロニモにちょうどいいはずもなく、毛布だけを手早くつかんで、ふたりは床に降りた。
脱いだ服は、ベッドの上に放り出されて、ふたりは、床に体を投げ出して、くしゃくしゃになった。
「あんたをここに泊まらせると、風邪を引きそうだな。」
ベッドもたれて床に坐るジェロニモの脚の間に、膝を抱えて坐り込んで、ハインリヒがおかしそうに言った。
ふたりとも、シーツと毛布に、それぞれ汗の引き始めた体を包んで、狭い部屋で必然的に起こる、物理的な近さを、一緒に楽しんでいる。
「仕事を休む、いい口実になる。」
珍しく不真面目な答えを返して、ジェロニモが、腰を抱いた腕に力を入れて、それから、ハインリヒの首筋に顔を埋めた。
「そうだな、あんたが風邪を引いたら、俺も看病を口実にして仕事が休める。」
下らないことを言い合って、そうやって、会わなかった間の時間を、埋めようとしてみる。
埋め合いたいのは、ひとりきりだった時間だけでは、なかったけれど。
ひとしきりじゃれ合った後で、狭いキッチンにふたりで立って---ずるずると、シーツと毛布を引きずったままの格好で---、いつものように紅茶をいれて、ジェロニモの焼いたチーズケーキを切り分けた。
リビングのソファの傍に放り出したままの、ぬいぐるみのクマの視線を避けるように、ふたりは無言でうなずき合って、またベッドルームの床へそのまま戻った。
床に坐って、ケーキをつついて、紅茶を飲み終わる前に、ハインリヒはもう一切れお代わりをした。
半分近くに減ってしまったケーキを冷蔵庫にしまってから、ベッドルームへ戻る途中で、ハインリヒは、クマをソファにきちんと坐らせて、それから、思いついたように、頭をぽんぽんと撫でた。
ジェロニモだけを床に寝かせるのが気の毒で、ベッドよりは広いけれど、けれど大して面積のない床に、毛布やシーツや上掛けをあるだけ敷いて、その上で、ふたりで肩を寄せ合った。
ジェロニモの大きなベッドでなら、それぞれが勝手な格好で寝るけれど、今だけは真正面から抱き合うように、互いの体に腕を回して、ふたりはまだしばらく、眠らずに、他愛もないことをつぶやき合っている。
「明日は、あんたのところへ行こう。」
「グレートのところへも顔を出そう。」
「ああ、それもいいな。」
ジェロニモの硬い肩口に、額をすりつけて、眠るための瞬きを何度も繰り返しながら、ハインリヒは、一度大きく息を吸い込んで、やっと言った。
「・・・明日、あんたのところに、あのぬいぐるみを、連れて行ってもいいか。」
あごが動いて、ジェロニモが、ハインリヒを見下ろした気配があった。
「・・・ひとりにすると、淋しそうだ。」
付け足すようにそう言って、似合わない言い方に、ハインリヒはひとりで頬を染めた。
ジェロニモの腕が、首に下に入り込んで来て、ハインリヒをもっと近く引き寄せながら、腰に回された鉛色の右腕を撫でる。
「ピアノの傍に、坐らせれば、きっと淋しくない。」
静かにそう言われて、言葉を尽くしてわかり合おうとしなくても、わかり合える相手もいるのだと、安堵しながら、ジェロニモの腕に、頭を預ける。
裸の手足と、胸と腰と、けじめもなく重ね合わせて、眠りに落ちる。
あのぬいぐるみが、首に巻いたリボンに、ジェロニモのアパートメントの鍵を通す夢の中で、アルベルトと、優しい声で呼ばれたような気がした。
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