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旅路の終焉
 
「王子、早く王の前へ!」
「王がお待ちかねですぞ!」

 大神官ハーゴンと破壊神シドーを打ち破った俺たちは、ローレシア城の王の間に立っていた。
 満面の笑みをたたえ、俺たちの凱旋を祝う顔、顔……嬉しくないはずはない。
 だが、俺は躊躇していた。
 一歩踏み出せば、俺の冒険は終わる。
 子供だからと許された冒険は、終わりを告げるのだ。
 俺は両隣の仲間の顔を眺めた。
 穏やかで優しく、それでいていざというときは自分を投げ出す事も厭わなかった、勇気あるサマルトリア王
子。
 慈愛に満ちた心で俺たちを癒す一方で、強い魔物たちを次々と倒した素晴らしき魔法の使い手、ムーン
ブルク王女。
 水が素足に気持ちよかった砂浜で、木登りの競争をしながら果実をもいだ森の中で、そして――寒く辛
かった雪の台地で。
 いつも俺たちは一緒だった。

「なーに? 照れるなんて、あなたらしくないわよ」
「緊張してるね」
 二人は笑うと、俺に向かって呪文を口ずさんだ。
「あなたの勇気に、ベホマ!」
「きみの心に、スクルト!」
 二人のはなむけの呪文が、暖かく俺の中に広がる。
 俺は涙をこらえ、きっと前を見据えた。
「さあ、いきなよ」
 王子がそっと俺の背を押す。
 王女が一瞬ぎゅっと手を握り、俺を送り出した。

 振り返りたい衝動を抑え、俺は玉座の前に立つ。
 父王が、王位継承を高らかに宣言する。
 そばにいたはずの仲間たちが、やけに遠くに見える。
 嬉しそうで、それでいて淋しそうな二人の顔が、もう戻る事の無い少年の日々と重なった。

 祝福を告げるファンファーレが、ローレシア城に鳴り響く。
 王となった俺は、自らの手で冒険の書を閉じた――。
( 完 )  2002/05/27
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決勝の支援物資。
色々な人と出会えて楽しかったです。ありがとう最萌!
ちなみにタイトルに「の銀河へ」とつけると、違うゲームになりますので御注意を。(つけません)

「(スクルトで)守ってどうするw」と某千一夜でツッコミを頂きましたが
「心を強く保つ」ってことで勘弁してホスィ と、こんな所で激しく遅レス。