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僕の日常
 
「うえっ!!」
 カインが料理を吐き出した。
 同情の眼差しで、僕は彼を見る。
 気持ちはわかる。なんたって、ナナ姫の舌の感覚ときたら……。

「ナナ! 何だよこの料理はッ! てめぇオレを殺す気かっ?!」
「なんですってぇー!」
「ただサカナ焼くだけなのに、なんでこんなマズくなるんだよッ!」
「まぁっ! スパイスの配合には苦労したのよ!」
「岩塩でもまぶした方が、まだマシだぜっ!」
「文句言うなら食べなくっていいわ!」

 また、二人の喧嘩が始まった。
 カインとナナ、どうして二人は寄るそばから喧嘩するのだろう。
 二人とも引き下がらない性格のせいかは知らないが、間に立つ(一応)リーダーの僕は、ほとほと参ってしま
う。
「オレが作り直してやるっ!」
 カインが腕まくりして、魚を掴む。
 ナナは、ぷいっと膨れている。
「どうせ私はお姫様ですからね。お料理は得意じゃないわよ――ってアンタ! な〜に呪文唱えてんのよっ!」
「……偉大なる女王ルビスの名において、汝らを召喚する……うるさい! こんな魚、ベギラマでこんがり焼
いてやるぜ!」
「バカー! 黒焦げにする気なの――っ!!」
「まあまあ、二人とも……」
 止めに分け入る僕に、凄い形相で二人が睨む。
「あんたは黙ってて!」
「お前はすっこんでろ!」
 二人同時の罵倒の声に、思わず僕は心の中で呟いた。
(ナイス・コンビネーション)

 そんな騒ぎを聞きつけて、魔物どもまでやって来た。
 くそー、昼メシまだだってのに!
 僕も空腹で腹立っていたが、二人の仲間は、もっとエキサイトしている。
 低級モンスター相手に、容赦なくイオナズンやザラキをかけまくる。
 ――こわい。ローレシアに帰りたい。

 ようやくしつこい魔物を一掃すると、カインとナナは、パン! と手を打ち、ガッツポーズをとっていた。
「よーし、見てやがれよ!」
 ストレスを発散したせいか、上機嫌でカインが腕をふるう。
 何でもソツなくこなす奴だ。当然料理もうまい。
 やがて、湯気立つ美味そうな一品が、皿に盛られて登場した。
「おいしーい!」
 満面の笑みを浮かべるナナに、カインがにやりと笑う。
「ふん、オレさまにかかれば、こんなもんさ!」
 幸せそうに料理をほおばるナナ。その横には得意げに腕組みするカイン。
 二人はさっきまで喧嘩していたことなんか、すっかり忘れている。
 こんなパーティだけど、僕はこの仲間たちが大好きだ。

 僕もカインの差し出した皿を受け取った。
( 完 )  2002/06/11
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最萌に引き続き開催された最燃男トナの支援物資。
ゲームブック版のカインは強気サマルトリア王子の元祖ですね。
読み物としても面白いゲームブックは大好きです。