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子孫
 
玉座には、かつて私達の祖先が戦った竜王のひ孫が座っていた。
「そちがムーンブルク王女か。今回は大変だったであろう。あのハーゴンに国を襲われて命が助かったのは、奇
跡としか言いようがない。せっかく助かったというのに、王子達と旅を続けるのは何故なんじゃ?」
「私は、自分の目で確かめたかったんです。私の国を蹂躙したハーゴンの姿を。そして彼に問いただしたい。
ムーンブルクを襲撃し、罪のない人たちを殺めたのは、どうしてなのかを!」
 ムーンブルク王女は、緑色をした身かわしの服に、持っていた杖をぐっと押し付けた。
「そうか……あえて辛い旅を選ぶというのだな。姫よ……わしは曽祖父の犯した罪を償う為、ここを動く事を
禁じられておる。何もすることができないが、せめて姫の無事を祈ろう……」
「竜王……」
 竜王の笑顔は優しい。かつての祖先同志のわだかまりなど微塵もない。
 それにしても自分の罪ではないのに、軟禁状態の現竜王が気の毒でならない。
「ロトの子孫たち、君たちの前途に幸いあれ」
 誇り高き竜族の王は、別れ際私達に世界地図を贈ってくれた。

「本当にいいの?」
 竜王の城を後にしたサマルトリア王子は、心配そうに尋ねる。
「これからもっと危険な旅になるぜ。俺の国か、こいつの国で待っていた方が……」
 ローレシア王子は、じっと王女の瞳を見つめた。
「守ってもらおうなんて考えてないわ。私、実はもうひとつ確かめたいことがあるの」
「なに?」
「私が本当に勇者の子孫なのか、自分を試してみたいの」
「王女も俺達と同じ考えか」
「やっぱり似てる。僕達、同じ血が流れているんだね」
「何もかも勇者の血に頼ろうなんて思ってないけど、世界を見て回れるチャンスだと思えば気が楽だよな」

 旅立つ時、国からロクな物貰えないのも、勇者の伝統なんだってさ!
 
 ローレシア王子の渡された路銀の少なさを聞いて、私達は笑う。
 色々ロトの末裔っていうのも苦労するよね、と同じ境遇同志溜息ついて。
 戦いに負けて泣いたり、勝ってガッツポーズ決めたり。喧嘩したり、仲直りしたり。
 宿で枕投げて女将さんに怒られて、怒った女将さんの真似をしてその後みんなで笑い転げて。
 今日も、私は彼らと旅を続けている。
( 完 )  2003/10/13
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絵師&SS職人合同支援 ムーンカレンダー8月 海底神殿の竜王編
◆DOIIFWZQzoさんの絵に文をつけさせて頂きました
死を覚悟の討伐というより修学旅行気分のパーティです