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サルものを追う者たち
 
 水の羽衣を織ることのできる唯一の職人が住むというテパの村に俺達は向かっていた。
 船で川をさかのぼり、森深い山道をゆく。
 森か……嫌な思い出が蘇る。
 旅に出たばかりの頃、俺達はよくデカい猿にコテンパンにされたっけ。
 その猿の名は「マンドリル」
 丁度こんな感じの薄暗い森の中で奴等が襲ってきたんだよなぁ。


「何か来る!」
 森の奥を見つめ、サマルトリア王子が叫ぶ。
「もしかして、マンドリル?!」
 ムーンブルク王女もトラウマなのだろう。顔が引きつっている。
「マンドリルに似てるけど、色も紫がかってて、ちょっと違う毛色の猿だよ」
「どちらにせよ、猿なんだな。よーし、今の俺達はあの時と違うって所をエテ公に見せてやろうぜ」
「おう!」
「うんっ」
 ガササッと茂みを大きな手でかき分けて現れたのは、ヒババンゴだ。
「まずいっ。王子、ヒババンゴはマンドリルと違って魔法を使うよ。気をつけて!」
「何だと? この俺も使えないってのに、猿の分際で魔法使うのかっ」
 違う意味で俺は燃えた。
 猿に負けてたまるか!
「先手必勝だぜっ」
 俺はヒババンゴに斬りかかった。
 ヤツは図体が大きいくせに動きが素早い。
 小馬鹿にするような視線を向け、ヤツは咆哮した。
「キッキッキー!」
「あっ!王子が、マヌーサの霧に翻弄されてるっ」 
 俺の渾身の一太刀は空振りしてしまった。
 う、前が見えねえ。これじゃさすがの俺も手が出ない。
「んもう、王子っ。何やってるのよ!」
 王女がバギを放つ。
 相手が見えなくても、真空の刃は関係ない。
 ヒババンゴがバギに切り裂かれ、鋭い悲鳴をあげる。
 ついでに王女のローブが破れ、足まで傷ついても、猿を倒す為には構っていられない。
「ベギラマッ!」
 戦いが長引くと不利と判断したのか、サマルトリア王子までが珍しく攻撃魔法を使う。
 とどめは俺だ。今度は失敗しねえぞ!
「たあっ!」
 剣の先にズシッと重い手応えを感じる。
 ベギラマの炎に包まれたままヤツは真っ二つになり、呻きをあげる間もなく倒れた。
 俺達の勝利だ。


「ふっふふ……やったぜ!」
 勝利に酔いしれる俺。
「ふう……テパまで魔力もつかなぁ」
「あと何匹あの猿がいるのかしら……」
 勝ったってのに、二人は俺の前をとぼとぼと歩く。
 何だかなぁ……俺まで気が重くなってきちまったよ。
 俺達のサルのトラウマは、いつになったら無くなるんだ?
( 完 )  2003/10/13
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へたれんさんの絵に文をつけさせて頂きました
DQ2のサル系をナメちゃあいけません。心してかからないと全滅です。