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時空のエトランジェ 〜Les etrangers qui ont transcende le temps〜 < 6 >
 
 サトリがバスタブに浸かっていると、ロランも浴室に入ってきた。
「さっきのお詫び。背中流してあげるよ」
「怒ったのは冗談だよ。本気にするなって」
「ううん。君の事を信じてれば迷いなんてなかったはずだ。やらせてよ」
 浴用布を泡立て、サトリの白い背を洗う。首筋、腕……そして、ロランの手がするりと脇へと滑った。
「前も流してあげる」
「あっ……」
 回されたロランの手が泡を含んだ布で、胸元から下へと弧を描きサトリの体を洗い清めてゆく。
「そ、そこはいいって……自分でやるから」
 下半身を這い回る感覚に、たまらずサトリはロランの手を掴んだ。
「息が上がってるよ」  
 サトリを背後から抱き締め、ロランは耳元で囁いた。手の中の愛おしいものが力強く鼓動を伝える。
「……こんな所でかよ……っ…」
「いいじゃないか」
 細かな気泡が纏ったロランの手が、いつもよりずっと滑らかにサトリの肌を撫でた。
 彼の中に侵入した指が本数を増やす。
「ああッ……ンあ……ッ」
 壁に両手をつき、サトリが呻いた。
「そろそろ……いくね」
 泡だらけの腰を引き寄せ、ロランは彼の中に身を沈めた。
「うあああッ!」
 腰を何度も突き動かす。その衝動によって波打つ濡れた金髪がロランの目の前で乱れた。 
「んッ……アあッ!……あっ……」
「……っと!」
 力が抜け、前のめりに崩折れそうになるサトリの体をロランが抱きとめる。
「やっぱりこの体勢じゃ疲れる?……ベッドに行こうか」
 心配そうにロランは床に手を着いたサトリの顔を覗き込んだ。
「……サトリ……?」
「……」
 俯いたまま、サトリが聞き取れぬ声で呟く。
「えっ。何て言ったの」 
「うるせえな! 大丈夫だから、くっ喋ってねえで続けろ!」
「痣だらけになっても後で怒らないでよ」
 くすっと笑うとロランは再び激しく腰を打ちつけた。
 彼の充実したものが奥に届く度にサトリの喉から苦しげな声が漏れる。
 やがて最後の昂まりを受けたのと同時に、サトリも床の上にうつ伏せた。身を重ねたロランの火のような呼吸
が聞こえる。
「もう一回洗わなくちゃダメだね」
 サトリを助け起こしながらロランは照れくさそうに笑った。
「今度は自分で洗う」
 湯を頭からかぶり、サトリが石鹸を泡立てる。
「え〜。僕が洗ってあげるのに」
 すずめの行水よろしく洗髪もそこそこにバスタブに飛び込んだロランが、上目遣いで残念そうな声をあげた。
「遠慮なんてしてねえよ。お前に遠慮してどうする」
「じゃあさ、サトリ……お風呂から出たら……」
「出たら……なんだ?」
「い〜い?」
 にんまりとした顔半分を湯船から出し、指を一本立てているロランの頭をサトリはポカリと殴った。

「なあ……ロラン、俺らそろそろ……は…あ……っ」
 サトリのベッドにロランが潜り込み、彼らの夜毎の営みが始まっていた。
 身を包んでいた夜着がたくし上げられ、ロランの唇が押し当てられる。
 乳首を舌で弄られたサトリが、ビクンと躰を震わせ白い喉を見せて仰け反った。
「…んっ……なに?」
「……いや。……そうだ、そろそろ冬の支度をしないとな……」
「それなら心配ないよ。薪もたっぷり用意してあるから。今日なんかさ、セナムさんの手伝いしたら、収穫した
ての根菜を沢山分けてくれたんだ。しかもその後に僕、エリィ小母さんの所で近所の奥さんたちと一緒にジャム
も作ったんだよ! 初めてにしちゃあ、なかなかいい出来だってみんなに褒められてさ」
 ロランが、にこにこしながら大きな鍋をかき混ぜる仕草を再現する。
「色んな果実で作った熱々のジャムを、こう、瓶詰めにしてさ。明日には冷めるから、小母さんちに取りに行っ
てくるね」
「なるほど。そこで俺の結婚話に花が咲いたわけか」
「うん……よく分かるね」
「いかにもご婦人方の好きそうな噂話のネタだろ」
「小母さんたちに、根掘り葉掘りサトリのこと訊かれて困っちゃったよ」
「まさか本当のこと言えないしな」
 ロランは頷いた。
「実はサトリが異世界の国の王子で、しかも邪神さえ倒した勇者で、魔法も使えるって知ったら、みんなどんな
顔するだろう」
「うわ、嘘くせえ! 俺だったら信じねえな、絶対!」
 二人は笑い合った。それらは全て二人だけの秘密だ。
「真実は――」
 再び真顔で向き直り、ロランはサトリに唇を重ねる。
 深く接吻を繰り返すと同時に、右手は彼の一番感じる部分へと伸びた。
「んんッ……んっ!……」
 布の中に包まれている彼のモノは愛撫によって隆起し、先端から蜜が滴り始めていた。
「――君と僕の心の中だけにある」
「あっ…あ……」
「綺麗だ……サトリ、君の胸に花びらが散ったみたい」
 ロランは彼の白い胸に唇を押し当て、自らの烙印を押す。
「感じてる? ……ここも」
「うあ……っ」
 ふいに乳首を摘ままれ、サトリが小さく声を上げる。
「君の……もっとよく見たい」
「あ――」
 サトリの足は大きく広げられ、ロランの前に昂まらされたものが晒される。
 ロランの舌が熱い軌跡を描くたびに、彼の恥ずかしい部分も脈動しながら揺れた。 
「ふふ、ビクビクしてるよ」
「や……ロラ……ウあッ……ンなに……触るな…っ」
 手首は脱がされかけたシャツにがんじがらめにされ、サトリは手で払いのけることも出来ずにロランにされる
がままだった。

「蜜がいっぱい出てきてるよ」
「ウ……あっ……ンッ!……はッ……」
 サトリの前にそそり立つものを掴み、ロランは激しく上下に手を動かす。
 ロランの手の中でジュッ、ジュプッと熟れた果実が濡れた音を立てた。
 毎夜抱かれても、サトリは達するときに羞恥心を感じるらしく、息絶え絶えに躰を捩りながら灯りを消してく
れと懇願した。
 だが、聞き入れられることはなく、サトリが掠れた啼き声をあげて果てるまで責めが続くのが常だった。

 彼は僕の、僕だけのものだ。誰も息を乱す彼のこんな姿を知らない。
 強く抱きしめるロランの背に、サトリの腕が回される。
 瞳を閉じたサトリは何も言わない。しかし背の指は確かに早く寄越せと語っている。
 ロランは己の肉体を彼の欲する処へと――。

 幸福感に満たされてロランはサトリの横顔を眺めていた。
 星明りに照らされたサトリの髪はきらきらと光っていて、この世のものとは思えないほど綺麗だった。
 世界を救うべく旅立った頃からずっと彼を想い続けていたが、何年たっても変わらない。この先もずっと変わ
らないだろう。
 本当に彼を独占しているのが自分でよいのだろうか。今でも信じられない。
 サトリは勇者ロトを祖とする名門サマルトリア王家の王子。あらゆる芸術を嗜み、魔導書、古代文字も読み解
く才知に溢れ、その美貌は人々を魅了した。
 彼を慕う者、あるいは彼を手に入れたいと望む者の多さを充分熟知していたし、同じ勇者の血を引きながら、
魔力のない自分に自信が持てなかった。
 ある時、どうしようもない不安をぶつけた自分にサトリは言った――『俺は、お前だけだ』
 それから色々なことが起こったが、今も変わらず彼はロランの傍らにこうして居てくれる。
 何よりもそれが真実だ。自らの意志で、彼はロランと共にあることを選んだのだ。
 ロランは眠っているサトリに向かって呟いた。
「僕も、だよ……。僕も君だけだ、サトリ」
 ん……と眉を寄せ、サトリが寝返りを打った。
 おっと、声が大きすぎたかな。ロランは慌てて口元を押さえる。
 もう寝なくちゃ。朝食は、とびっきり新鮮な卵を使ってスクランブル・エッグを焼こう。
 
( 続く )  2008/3/9
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というわけで大人向ver.でした。
実は、このパートは去年完成していたのです。
しかしながらパスワードかけた方がいいかな〜なぞ思っている内に、だんだん面倒くさく……
いえ、思案していたがゆえにアップに時間がかかってしまいました!

お手間をかけさせたわりに、大してエロくなくてスマンヌ。(つД`)