M沢病院に転院させられたラムネとミルクは、ココアからの手紙を読んだ。
 そこには、「かなり難しいですが、アララ城に帰って二人が元の姿に戻れる機械を作ることにします。完成したら連絡しますので、それまで何とかばれないように気をつけてそちらで暮らして下さいね」とあった。
 「(小声で)ココア、おれたちが入れ代わってること知ってるんだ。」
 「(同じく小声で)お姉様がそんな機械を作ってくれるんなら、ちょっとは落ち着いていられるわね。」
 常日頃は、周囲の人物には大迷惑なココアの発明だが、今回ばかりはこれに感謝しているラムネとミルクであった。
 ともあれ、二人は医師の診察を受けることになった。  全身にセンサーをつけられ、心電図と脳波を測定されることになったのである。
 「なんかくすぐったいわ。」
 ラムネの姿になっているミルクが、草尾毅に似た声で言った。ハッキリ言って、端から見たらオ○マ、あるいはゲ○の女役以外の何者でもない。
 「ちょっとの辛抱だ。我慢しろ。俺だってくすぐったくて、今すぐ全部剥がしたいぐらいだ。」
 ミルクの姿になっているラムネが、横山智佐に似た声で言った。声がかわいらしいのだが、口調は決して穏やかでないことは回りにいる人の誰もが受け止められた。
 ややあって、測定が終了し、二人はセンサーを取り外された。その結果は....。
 「お二人とも、脳波・心電図とも全く正常です。私どもといたしましても、こんな症例見たことも聞いたこともありません。どうやらお二人の病気は、 おそらく現代の精神医学では治療することは不可能でしょう。もっとも、日々の生活そのものには全く差し支えありません。」
 日々の生活には差し支えないとはいうものの、回りは大迷惑だ、というつっこみはしないように。
「(小声で)あーあ、最初から期待してなかったけれど・・・。やっぱりおれたちを戻せる人がいるとすれば、ココアだけか。」
 かくしてラムネとミルクは、元の姿に戻れぬままM沢病院を退院した。この時、実に次の月曜日の夕方であった。
 その日の夜。ミルクの姿になっているラムネがお風呂に入ろうとし、脱衣所でシャツを手にかけた時、彼.....もとい彼女は、不意に洗面台の鏡に映った己の姿を目にとめて、突如我にかえった。
 (あ、そういえば、俺は今ミルクになってたんだ。ということは、俺ミルクの姿でお風呂に入ることになるのか.......。それじゃあ、ミルクのあんなところとか、こんなところとかも、全部丸見え、ってことか!?..............とにかく、落ちつけ、落ち着くんだ、俺!) ラムネは、大きく深呼吸した。さあ脱ぐぞ、とばかりに、気合いを入れなおす。そこにドアをノックする音がする。服をまだ脱いでなくてほっとした。ドアをあけてみると、自分になってしまったミルクが立っていた。
「(小声で)ラムネス、一緒に入ろう」
「(同じく小声で)み、ミルク、いったい何を言い出すんだ!」
 なんとも大胆なミルクの発言。でも、いいのだろうか。ふたりはまだ中学生なのである
。 「いいじゃない。今はお互い入れ代わってるわけだし、プライバシーもくそもないじゃない。」
「まあ、言われてみると、確かにその通りだな。それじゃあ、一緒に入ろうか。」
 結局、積極的なミルクに押し切られて、二人で一緒にお風呂に入ることになってしまった。
 ミルクは着衣を男らしく(?)ぱぱっと脱ぎ捨て裸になった。細身ながらも必要な筋肉はしっかりついている、勇者の肩書きに恥じない理想的な体型だ。 うーん、ミルクは女の子だったころから、お風呂に入るときにはこんな豪快な脱ぎっぷりで脱いでいたのか.........。手付きのなれ具合が、雄弁に「その通り だ」と言っている。
「ちょっと外野、なんか言った?」
ラムネの姿(しかも「象さん」丸見えのすっ裸)で指を鳴らすミルク。なんかこわい(^-^;。
 一方ラムネはというと、シャツを脱いで上半身ブラ1枚にはなっていたが、スカートのホックがどこにあるのか分からず、悪戦苦闘していた。
「ちょっとラムネス、後ろ向いて。」
ミルクに言われるがままに後ろを向くと、ミルクは背中の腰のあたりにあるホックに手をかけ、チャックをおろした。するとスカートは、ニュートンの法則に従って、つるりと滑り落ちた。そのとき、ミルクは今まで感じたこともない奇妙な、しかし気持ちいい感覚に襲われた。 (な、なんか、足の付け根が、むずむずしてきた....)。 ラムネになったミルクの股間で「象さん」が雄叫びをあげる。が、目線をそらしたらすぐに感覚が戻った。
「そうそう、ブラジャーのホックも後ろよ。自分ではずせるでしょ?」
「こ、こうか?」
 背中に手をまわし、ブラのホックをはずすラムネ。ショーツは難無く脱ぎ捨てて、ようやく裸になった。こちらも、あれだけ食べているにも関わらずスリムな体型である。ただ胸がない。それでも腰のくびれは美しく、ボーイッシュ系美少女の体型といえよう。ラムネになったミルクは、さらに強力に沸き起こる「象さん」からの感覚をなんとか封じ込め、タオルを手にとり、本来の己のからだを引っ張って風呂場へと入っていった。
 ミルクの姿になったラムネが体を洗うために椅子に腰掛けると、彼....改め彼女の目には大きく股を開いて、女の子の大事なところが丸見えになった裸のミルクの姿が飛び込んできた。なんと言っても、今ミルクの体を動かしているのは、あのラムネなのだ。ラムネは現在の己の.....本来あるべきミルクの霰もない姿をみて、 一気にのぼせ上がってしまった。
(ああ、ラムネスの体があたしの裸を見てあんなにも興奮してる....昔はそう言うの許せなかったけど、今のあたしには、なんかその気持ちわかるなぁ)。
ラムネの姿になったミルクは、浴槽からあがり、のぼせ上がったラムネに代わって「象さん」をタオルで隠して本来の自分のからだの背中を流す。タオルをこする感覚は、いつも通りの柔らかさだったが、自分の裸がラムネにとって魅力的に映っていたことが何となく嬉しかった。
何せミルクは、現在の自分のからだの 反応と、本来あるべき自分の体に入っているラムネの反応の双方からそのことを知ったのだから。
そして、本来の己のからだが正気にかえるのを待って、風呂からあがり、下着と寝巻きを身につけ床についた。
 あけて火曜日。  
朝6時半ごろ、ラムネの姿になっているミルクが寝床の中で目を覚ました。ふと近くを見ると、女の子の写真がいっぱいの怪し気な雑誌が、まくら元に山積みされている。まだ、起きるまでには若干の余裕があるので、それを手にとってみた。ミルクの目に、恥ずかしい姿をした女性の写真が飛び込んでくる。
 (ラムネスったら、いつもこんなの見て喜んでるんだ。...何かしら、この感触!なんだか気持ちいい....。)
 ラムネになったミルクの左手は、ふとんの中で何やら怪し気な動きをしていた。
 そんなとき。
 どたどたどた.....。
 「おなかすいた〜!」
 ミルクの姿になっているラムネが、パジャマ姿のまま一目散に冷蔵庫を目指す。ラムネは、勢い良く冷蔵庫を開けた。 がぶっ、もぐっ、ごくん。
 「うーん、グラッチェグラッチェ!」
 ラムネはミルクの姿で、冷蔵庫の中にあったものを全部平らげると、瞬時にそれを消化した。
 ミルクは、自分の目の前を駆けていく己の姿を見て思った。
 (あら、今駆けて行ったの、私よね。それになんで私が女の人の裸の写真を見て、気持ちいいと思うのかしら...まさか!) ミルクがベッドを出て姿見の前に立ってみると、そこに映し出されたのは、案の定寝巻きを身につけたラムネの姿であった。しかも、股間が不自然に膨れ上がっていて、みっともない様子である。女の子の心になっても、やはり、「象さん」は正直だったのである。
 (やっぱり私、まだラムネスのまんまなんだ....。そして、あの私はラムネス....。それにしてもこの膨らんだ股間、超かっこ悪い....。でも今の私は男の子...それも、あのスケベなラムネスなんだし、この手のもので喜ぶのも無理はないのかもね。) 姿見に映っていた時計の針が、7時を少し回っていたので、ミルクはそのまま着替えることにした。もちろん、男物の学生服など身につけるのは、ミルクは生まれて初めてである。
 (そう言えば、今は私ラムネスなんだし、こんなに早起きして髪をとかしたりしなくてもよかったのよね。でも今はラムネスが私になってるんだし、ちょっと心配。)
 ミルクは、自分になってしまったラムネが気掛かりで、いつも通りの時間に起きて学生服に着替えた。そして、自分の姿になっているラムネを起こしに、本来の自分の部屋の扉をノックする。
 「ラムネス、入るわよ。」
 ミルクの姿になっているラムネは、空腹を満たすとそのまま再び凄まじい寝相で眠ってしまっていた。
 「ほら、女の子は朝の支度に時間がかかるんだから、早く起きないと遅刻するわよ!」
 「せっかくおなか一杯になって気持ちよく寝てるのに、もう少し寝かせて....。」
 「ダメよ!女の子の朝の支度を何だと思ってるの?」
 ミルク(見た目はラムネ)は、ラムネ(見た目はミルク)を強引に起こして洗面台の前に連れていき、強制的に髪をとかす。
 「いてっ!....あれ?なんでミルクが俺に髪とかされてるんだ?....まさか、今の俺、まだミルクなわけ?」
 「そうよ。今日は私がラムネスとして、ラムネスが私として、登校するのよ。」
 「そ、それじゃあ、俺、あの制服着るの?」
 「あたりまえでしょ?今はラムネスが私なんだから。ところで、ラムネス一人でブラジャーつけられるかしら?」
 「ブ、ブラジャーぐらい自分でつけられるよ!」
 ミルクの姿のラムネは、寝巻きを脱ぎ捨てショーツ一丁の姿になった。  ラムネになったミルクは、その姿をまともに見て、鼻血を吹き出し失神してしまった。己の姿とはいえ、また昨日の晩、一緒にお風呂に入ったとはいえ、あのラムネと化した今のミルクには、ショーツ1丁でへそから上が裸の女の子の姿は刺激が強すぎた。
 (全く、ミルクのやつ、男に...俺になったとたんこれだ.....。そういえば、ミルクは俺の見てる前では着替えることはなかったなぁ。  もっというと、俺もミルクになったら、とたんにひどくお腹が空くようになった。このあたりは、前と全然変わってないな。)
 ラムネは、慣れない手付きで何とかブラジャーをはめ、ミルクの制服を身につけた。
 そして、ミルクの姿で、自分の姿のミルクと一緒に、渋々登校することになった。                             



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