■-27

ネプの日記-

 解らない事は解らないんだから仕方が無い。
 そう思って、グレイは懸命に進んでいる。
 本人がそうなのだから、俺も信じるしかない。俺に出来る事はこのくらいしか無いけれど、出来る事はやっておきたい。



グレイの記憶-
「こう振り被ってきたら?」
「えっと…こう、かな」
「それじゃ手は斬れるかもしれないけれど止まらないよ。捻られて刃を折られる事もある」
 朝早く街の外で、戦い方が上手くなるようにネプから稽古を付けて貰ってる。短剣はあんまり使った事無いってネプは言ってたけれど、ぼくにはまだ解らない事が多過ぎて、基本からじっくり教わってる。
 今は爪を持つ敵に襲われた時どうしたらいいかを習ってた。そっか、爪の間に通しちゃうと危ないんだね。
 暫くして、ネプが時間を見て休憩を入れてくれた。少し休んだら帰らないと、待ち合わせに間に合わなくなっちゃう。
 ぼくは草の上にへたり込んで、つい溜め息をついた。

「ふうー…、疲れたあ」
「お疲れ様。段々良くなってるよ」
「ほんと?良かった!いつまでも足手纏いじゃいられないし、自分の身は自分で守れるようにしなきゃだよね」
 それを言ってから、ぼくは気が付いた。これじゃ護衛がいらなくなるようにって言ってるみたい。
「あっ、えっと、ネプがいらないとかそういう事じゃなくって」
「解ってるよ。それに力だけ付いたって、君の何処までも正直な性格じゃ何かと不安だしね」
「えへへ…。頼りにしてるよ」
「それはどうも」
 そよ風が吹いてくる。ネプにとっては寒いのかな。
「でも無理しないでね?羽根で治せても、ネプが怪我したら悲しいよ」
「ああ。有り難う…」
 言い終わりにネプは、何か気が付いたみたいにぼくを見る。
「なあ、その羽の事なんだけど」
「うん」
「治癒能力があるって事は一体どうやって知ったんだ?誰も持っていなければ教われないし、自分で気付くにも、羽根を煎じたりなんてしないだろ」
「えっと…気が付いたら知ってた」
「サラマンダーには生まれた時から知識があるのか?」
「ううん、生まれたては何にも知らないよ」
 どうやって知ったのか、思い出そうとしても全然思い出せない。
「その羽は謎が多いな…」
「ネプ…これが変な物だったらどうしよう…」
「少なくとも、悪い物じゃないとは思う。あまり気にしない方がいいのかもな」
「うん…」
 本当に悪い物じゃないといいんだけど…。



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