■-29
記憶-
気が付くと、ぼくは真っ白いところにいた。自分の体は見えるけれど、それ以外はみんな真っ白。
何か聞こえたような気がするんだけど、此処は何処だろう。
「果たして此処まで来たか」
「えっ」
声のような、頭の中に直接響くような、変な感じがする。聞いた事の無い声で、ぼくは辺りを見回したけど、誰もいない。
「何?誰?」
「お前がよもや育つとは、想定しておらなんだ」
「きみは?何処にいるの?」
「感謝するぞ、私を育むものよ」
「ねえってば!」
何だろう、声は穏やかなのに、凄く、凄く嫌な感じがする。
そう思った瞬間、目の前は薄暗い天井に変わって、ぼくは元のベッドにいた。
でも、何かが違う。
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