■-30

グレイの日記-

 当たり前の事だったのに、それがおかしくなって、ぼくは怖い。
 何かが無くなるような気がする。
 一つじゃない、沢山のものを、取られるような。



グレイの記憶-
 いつもの時間に起きると、珍しくグレイがもう起きていた。グレイも朝は早いけれど、グレイの起床よりは早く起きるようにしていたのだけども。
 ベッドで膝を抱えて、其処に顔を殆ど埋めている。

「おはよう、どうかしたのか?」
「…ネプ」
 グレイが顔を上げると無表情が見えた。あまりこんな顔を見た事が無い。
「変な夢、見た…」
 グレイは弱々しい声で、夢の内容を話してくれた。
 誰かに感謝をされたけれど、その言葉はグレイの問いかけにも答えずに一方的な物だったらしい。

「何なんだろう…」
 ついこの間の事があったのに、追い打ちをかけるような内容だ。
「でも…一つだけ、解るんだ」
「正体が?」
 グレイは拳を作って、絞り出すように言った。
「何かが、ぼくの中で、動いてる」



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