■-41

ネプの記憶-
 少し過ごして、現実が解った。あの子が居なくても、止まる物は何一つ無い。
 驚いたのが、工房の職人達が俺を引き止めた事だ。例の装飾破壊事件の事まで持ち出され、工房全体の護衛をしてくれと頼まれた。俺はそんな大それた力も持っていないのに。断り切れなかったのは、きっとあの子の残した物に少しでも触れていたかったからなんだろう。
 あの子が話をしていた人全員に嘘をつき、あの子は故郷に帰った事になっている。それでいいんだ、誰かを悲しませる事は望んではいなかっただろうから。
 俺の嘘であの子がまだ生きていてくれるなら、それで。




Back Previous Next