鍵とある日々
■-1
奇妙な戸棚を開いたのは、ほんの欠片程度の好奇心からだった。その僅かな好奇心こそが現在も冒険者であり続ける理由の一つなのだろう。好奇心を制する警戒心が働かなかったのは無謀といえるが、戸棚の説明が記された書き置きに悪意が感じられなかったのもまた事実だった。そうして戸棚から手に入れたものは、書き置き通りに不思議なものであり、それだけである。手に取ったのも単なる気紛れに過ぎない。
宿に帰り着き、一通りの雑事を終えて、ふと思い出す程度には不思議だった。それぞれが持つ鍵と、込められた意味が。
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