無間の幽鬼
■-25
魂というものが、果たしてどうなったかは知らない。彼が本当にフレイアルトなのかどうかは、もう誰にも解らない。
「俺は、恨んだりするんですかね、自分だけ幸せになりやがって、って」
座った手に当たる、何処か見覚えのある野草を見ながら言う。赤黒い大地にぽつぽつと咲き始めた野草は、まだまだ実験段階だ。
「うらむかも、しれない……」
「けれど、あなたのふこうを、のぞむことは、ないとおもう……」
それぞれから同じ声がする。
「そう、ですかね」
遠くで、この世界の動物が何か察知して鳴いている。雨でも降るのだろうか。
今日も曇り空は晴れない。だが少しだけ風が吹くようになった。時々あの雨は降るが、あまり痛くはない。体は強化されているようだ。
「種蒔き、行きましょうか」
こくりと彼女が頷く。繋ぐ手は、二人共温かい。
「いってらっしゃい……」
「いってきまーす」
控えめに振られる触手に手を振り返す。
楽園でもなく、地獄と化した場所を再生するという途方も無い目標だが、やり遂げてみたい。創造主面をする気は無いが、優しい世界を作ってみたかった。
幸福、感謝、初めて感じるものはやはり、想像以上に心地良い。
形などそれぞれだ。これが彼らの幸せの形である。
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