「風邪が治って良かったね」
休み時間。一人机で頬杖をつく仗助の元に康一がやってきた。
「情けねえよな。三日も寝込むなんて」
「そんな事ないよ。タチの悪い風邪が流行っているみたいだし」
はあと仗助はため息をついた。スタンド使いに襲われて承太郎の部屋のソファで横になったところから記憶がなかった。
次に気がついた時には、自室のベッドにいた。母親いわく承太郎さんが運んできてくれたらしい。
――お礼くらい言いたかったぜ。
承太郎は今はもう日本にはいない。急用ができたと仗助が目を覚ます前にアメリカへと旅立ってしまった。
「しかし、助かったぜ。康一たちがスタンド使いを倒してくれて」
億泰と康一がスタンド使いをブチのめした時、石化された人々も元に戻ったそうだ。
「お陰でオレの秘密も言わなくて済んだみてーだしよー」
「承太郎さんも言っていたよ。仗助の秘密が聞けなくて残念だって」
その言葉に仗助は曖昧に笑う。ふと渡せなかったプレゼントを思い出す。スタンド使いの騒動せいで行方知らずだ。
「あんなに頑張ったのによー」
「え?」
「何でもねー」
次に会った時に渡せば良い。
――また会えますよね。承太郎さん。
窓の外を見る。澄んだ冷たい空気に中、青い空がどこまでも続いている。あの人のところまでこの空は繋がっていればいいと仗助は思った。
しかし、それ以降。承太郎からの連絡がくることはなかった。春を過ぎ、夏を過ぎ、秋が過ぎ去って冬を巡っても。仗助の元に来ることはなかった。
【メドゥーサの眼】