神の乙女 おまけ(18禁)
礼装を返していつも通りの服に着替えると、二人で歩いて屋敷に帰る。帝国一の剣士のアネスが一緒だと、夜道も安全だ。
「あ、花」
道端の木が白い花をつけている。
「本当だ。去年は従軍で見過ごしたからな。明日日中に見に来ようか」
「明日は、休み……」
「俺もだ」
ボロウェは心の中で、よしっ、と喜んだ。上手く休みを重ねられた。
「じゃあ、今日は眠らなくていいな」
ボロウェは頬を熱らして、コクンと頷いた。
「よし、早く帰ろう」
人通りの少ない道に入ったのをいいことに、手をつないで道を急いだ。
使用人達はすでに帰り、屋敷の灯りは落とされていた。使用人頭のミシェアが置いてくれたのだろう、玄関の分かりやすい所にランプと着火道具があった。
ランプに火を灯したとたん、後ろから引き込まれ、抱きすくめられた。
「うん……、あっ」
腰に回った片手で、体を浮かされる。爪先立ちになって足をもがかせる。ローブの裾が揺れるのを、アネスの手がたくしあげていく。
「ボロウェ、持って」
「え……?」
言われるままにローブの裾を持ってから、やっとそれが自ら露出する姿だと気づいた。
「アネス!」
下着の締めを緩められた。
「あ……あ」
下着がずり落ちていくのを、股を閉じて止めようとする。だがその閉じた太腿の間にアネスの手を差し入れられる。
「あぁっ……!」
つい股を開いて、下着を離してしまう。膝に引っ掛かるが、アネスに太腿を撫でられる度、脚を揺らしてしまって、ちょっとずつ下に落ちていく。
太腿は感じやすいのだ。アネスはボロウェに翌日仕事がある日はほとんど挿入しない。いつも、太腿の間に挟むだけの優しい交合をしてくれる。
「ひゃあ……んっ……」
その分ボロウェの太腿は、性器のごとく著しい反応を返す。大きな男の手がボロウェを感じさせようと這う。掌を密着させ、吸いつくような撫で方。
「……ふ……ぃや……」
ボロウェの弱いところを、知り尽くしている。
「ボロウェはここ、好きだけど、今夜は挟んだりしない……。後ろに入れるからな……」
彼の声が甘く湿っていた。太腿を撫でられながら、後ろの穴が疼いてしまう。
(……入れ…られる……)
ビクビクと脚が震え、耐え切れず白い下着が床に落ちた。
何も付けていない下半身を、服の裾を自ら上げて晒している。立ち上がった小振りの男の証に、陰毛だけが衣となっている。
「今度、礼装仕立てような」
「……だが……貸してもらえる……」
アネスがボロウェの手を取り、服の裾を掴んでいる指を開かせた。快感にきつく握りしめていた指を解いていく。ローブがすとんと元通りに落ちた。
性器は隠れたが、下着をつけていない感覚が落ち着かない。
「借りものじゃ、こういうことできないだろう」
服の上からボロウェの性器を掴んだ。
「は、……やぁ……」
「似合っていた、すごく。……脱がせたかった」
緩急をつけて揉み込まれる。
「……あ…、ん…」
「こういう服も可愛いボロウェに合っていていいけど」
先っぽをぐりっと刺激される。
「……ぃ…っ…」
「あの服はボロウェのピンと立った背筋が際立って……、色っぽかった」
耳元で心地いい低音で囁かれる。服の上から大事な部分を優しく撫でながら。
「……っ」
耐えきれなかった。浮いた爪先を震わせながら、服の中を湿らす。濡れた染みがローブに。
「濡らしてしまったな」
あまりに恥ずかしくて、涙が込み上げてきた。
「……う……アネス…が……」
「ああ、俺が汚したんだよ……、ボロウェを……」
アネスが、汚した……。
背筋を、甘い痺れが走った。
「汚れたところ、よく見せてくれ」
愛しい人の、いやらしい頼み事。耳に吹き込まれ、頭に響く。恥ずかしい気持ちと、もっと恥ずかしい格好をしてアネスに喜んでもらいたい気持ちが混在する。ボロウェはこくんと、幼い仕草で頷くと、ローブの裾をもう一度上げだした。
「……ん」
素足がすーすーする。暖炉の火を落としているから、室内は少し冷たい。その冷たさが、火照った場所が晒されていく感覚を鋭くする。
「…アネス……」
口を開いたが、熱い吐息しか出てこない。それでも後ろから抱き込んでいるアネスを振り返って潤んだ瞳で見つめると、アネスは意を酌みとって、
「よく見える。可愛らしいよ」
褒めてくれた。嬉しい……。
「あ、うっ……!」
アネスの手が股間に入り、指が窄みを突いた。片手で尻を持ち上げ、その中指がボロウェの中に入ってくる。
「やっ、やぁ……」
(こんな……玄関で立ったまま……、抱き…かかえられて……、指……)
腰を支えられて、爪先も床に着かないため、抵抗も、……協力さえできない。アネスの思うままに、指が入ってくる。ボロウェは足をばたつかせては、
「あぁ……ん…っ!」
自分を苦しめて甘い声を上げてしまう。
「痛くないか」
アネスに訊かれて、必死に頷いた。痛くはない。むしろ空中に浮いた体は力が入らず、いつもよりすんなりアネスを受け入れようとしている。この感触は多分、アネスの中指がすでに半分近く埋まっている。
「なら、いくぞ……」
「え……ああっ!」
急な刺激に思わず悲鳴を上げた。指を一気に根本まで入れられた。アネスは心配そうにボロウェの様子を見たが、ボロウェの立ち上がったペニスを見て安心して、笑った。
「まだいかない方がいい。最後までもたないぞ」
「そ…な……」
そんなのどうしようもない、と言葉にできない。指がぐちゅぐちゅと注挿される。指を曲げては、中の弱いところを突くのだ。
入口の縁ぎりぎりまで指を引かれる。もう一本の指の先が窄まりに触れ、
「……ん……」
二本まとめて入ってきた。
「きつい……」
今度は拡張するように指を広げられる。ぐいぐいと広げられて、この後何を入れようとしているか、想像してしまう。
「……ぅん……」
「もう……、入るかな」
三本目の指も押し入ってきた。
床に足がつかないまま、後ろに指を三本も入れられるという、なんとも隠微な姿をしている。
「……っ!」
体が揺らされ、指を銜えた場所から快感が湧きおこる。
「や……やめ……っ」
アネスが歩いているのだ。ボロウェを抱え、その股間に指を入れたまま。
「ベッドへ行く。こんな所で最後までする訳にはいかないから」
こんな所で始めたくせに。
「ボロウェ、ランプを持てるか……、危ないか」
アネスはランプの灯を吹き消した。真っ暗になり、ボロウェにはただ、触覚しか感じない。腰に回された腕と、背中に逞しい胸。そして股間には……。
真っ暗闇だが、一流の軍人のアネスにとっては問題にもならない。訓練されて歩幅が整っているので、家の中ぐらい距離や方向が分かる。
ボロウェには分からない。後どれくらいで寝室につけるのか、見当がつかないのだ。ギィと扉の開く音がして、閉まる音がする。それは何処の扉なのか。後ろを苛められたまま、いやらしい音を立てて、何処だか知らない場所に連れられていっている。
「ぅ……ひっく…アネスの…スケ…ベ……」
ついに泣きべそをかいてしまう。アネスが笑ったのを感じた。
「お前は罵り言葉も可愛いな」
「…ばか……ぁ」
「出会った頃の、頑なな時みたいだ」
拒絶しているように見えたが、今思い返してみれば肩肘張って、戸惑っていただけだった。アネスが酷いことをしても、助けてくれた。
「誘拐するように出会って……受け入れてくれたことに感謝するよ」
感謝なんて……、指であそこを掻きまわしながら使う言葉じゃない。
「今も攫われて、寝室に連れ込まれるところだし」
また扉が開く音がした。
(ここが……寝室)
いつも一緒に寝ているところだけど、何も見えない。今からこの指を抜かれて、……アネスのペニスに貫かれるために連れてこられたんだ……。
アネスが身を屈めた。ふわりと背中に弾力があり、寝台に下ろされたと分かった。
「……んっ…」
指を引き抜かれる。
「脱がすから、手を上げて」
そう言われても感じたまま動けない。暗闇から手が伸びてきて、服を剥ぎ取った。
全て脱がされて、寝台の上に裸で横たわっている。シーツの上で熱い肌が空気に晒されている。
「……アネス……」
「ああ、今行く……」
衣擦れの音。アネスが脱いでいるのだ。
広げられた後ろが疼く。欲しくて……欲しくてたまらない。
「ボロウェ……」
上に覆いかぶさってきた逞しい体と、アネスの声。熱い。アネスも欲情している。足を掴まれ、股を広げる格好をさせられる。
(…くる……っ)
窄まりに熱いものが触れる。ぴちゃ、と濡れた音がした。
「入れるぞ……」
「……!」
ズッと先っぽが入れられた。侵入者に、体中が喜んでしまう。きつく押し広げられた口はヒクヒクと収縮して、アネスの男根を食む。大好きな肉棒が与えてくれる極上の味を期待して、奥へ奥へと吸い上げるのだ。
「狭いな……相変わらず」
キュウキュウと男根を締め上げる中。体格差を気遣って、傷つけないようにゆっくりと進んでくる。
「…いい…の……、もっと……」
狭いのは侵入を拒んでいるのではない。……がっちりと掴んで、逃がさないため……。
「……奥……きて……」
男根が硬さを増した。アネスの腕に引かれ、その胸に抱き寄せられる。
「……ああっ!」
一気に貫かれた。尻にパンッと、アネスの肉体がぶつかる音がした。あまりの刺激にボロウェは震えて耐えたが、すぐに男根を入口近くまで引かれ、また一番奥まで挿入されると、もう駄目だった。
「……や……っ…あ……」
パンッ、パンッ、パンッ、と激しく抜き差しされる。アネスの太くて硬くて長いので、入口をめくりあげられて、中を擦られて、奥を突かれる。
きついって言ったくせに、アネスの硬さはものともせず、ボロウェを貫く。抵抗など一切無駄で、切っ先一つでボロウェの大事なところを蹂躙し、陥落させる。
「……あ…あぁん……」
背を反らせ、断末魔の声も甘く、白濁を解放した。
薄れようとしていく意識の中、未だ揺さぶられている。
「……まだだ」
ぺしっと軽く頬を叩かれる。男根の動きが速くなり、アネスがいまにも射精しようとしている。朦朧としたまま、それだけは感じた。
(……アネスの…精子、……精子……くる……)
無意識に欲しがるように、中が収縮した。
「……ボロウェ…!」
「ひゃぁ……っ」
一番奥までぎちぎちに入れられた男根が、ドクドクと脈打つ。
(……アネス……、射精…してる……)
熱い飛沫が中に注がれている。流れ込んでくるアネスの快感の証が、嬉しくて、愛しい。暗闇の中、荒い呼吸をしている目の前の男。その首に手を回し、ぎゅっと抱きしめた。
アネスもボロウェの頬に両手を添え、
「んっ……」
唇を寄せた。
熱い吐息とともに、触れられるだけの口付け。緩やかに唇を食まれる、優しい感触。まるで……神聖な愛を捧げられているよう。
(この人はきっと……)
腰を引き寄せられ、くちゅっと中で揺れた液体を、ボロウェは禊ぎの聖水のように感じた。
(神様が決めてくれた相手……)
帝国も神国も、この人がくれる愛に敵うことがあるだろうか。
(アネスがいてくれたら……、それだけで……)
「……好き……」
口付けの合間に、言葉がこぼれる。
「愛してる……」
言葉を返されて、また口付けを受ける。
「あっ、あ……!」
交合は、一度では終わらない。最初に注がれた精子が、じゅぽじゅぽと音を立てて滑りを助ける。
のけぞったボロウェの胸に、アネスの口が寄せられる。きつく吸われて、そして優しく舐められる。乳首をちゅぱちゅぱと濡らされて、もう片方はくにくにと摘ままれる。
(あ……)
だんだんと大きくなっていくアネスの性器が愛しい。胸の粒を舐められる度に、中の圧迫感が増していく。
(アネスが感じている)
それを感じる度、受身の喜びを感じる。自分の性器の張り詰めるのと同様に、銜えこんでいるアネスの張りつめが快感になる。自分の体の中で二つの快感に震える体があって、繋がっている……。
「く……っ」
アネスがいった。ボロウェの中にまた、熱が注がれる。ボロウェも一緒にいって、アネスの腹筋に白濁をかける。
幸せ……。
覆いかぶさった厚い胸から響いてくる心臓の鼓動。奥深くに穿たれた男根もまたビク、ビクと鼓動して、射精直後の痺れを味わっている。
大好き、アネス。もっと、感じて。感じさせて。
そんな気持ちをこめて、アネスの背に腕を回す。
「……ボロウェ、俺…まだ、もっとしてもいいか」
コクンと頷く。とたんにまた揺さぶられる。
「…あ……っあ……ん……っ」
「可愛い……、俺のものだ、ボロウェ……好きだ……」
こめかみに口付けされた。何度も、何度も顔中に。
好き……。
そう言葉にするのも難しいくらい、激しい行為に飲み込まれた。
心地よく目が覚めた。
窓から光が差し込んでいる。
「アネス……」
小さく声をかけたが、隣で寝ている好きな人は、起きない。寝顔を見て頬が緩んだ。二人とも素肌の上に、直接上掛けをしている。アネスの綺麗に筋肉を纏った首筋が色っぽい。起きて服を着ようか迷ったが、
(このままの姿でいたら、起きた時またしてくれるかな……)
そう思うと、両肘をベッドについて、アネスの寝顔を楽しんだ。
(美形だ)
何度見ても、そう思う。外に出ると心配の的だが、二人きりならこんなに贅沢な鑑賞品はない。きりっとした目元が特に好き。身を乗り出して、眉間に起こさないようそっと口付ける。
「……!」
「おはよう」
眉間を狙ったはずが、アネスに引き寄せられて、口付けになってしまった。
「……お、おはよう」
頬が熱くなる。その様子を見て、アネスが噴き出した。
「な、何だ」
「昨日は随分恥ずかしいことをさせてくれたのに。口付けくらいで」
「っ!」
昨日の恥ずかしいことを思い出して、布団の中に隠れてしまったボロウェを、アネスはいとも簡単に引きずり出した。
〈終〉