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◇◆ Nandasore! 3 ◇◆
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チューハイやカクテルの、空き缶が転がる秘密基地。
飾り気のない部屋だけに、巨大ベッドに凭れて、弟相手にくだを巻く。 「何でみんな、内緒内緒って、私を仲間外れにしてコソコソと」 「誰も美也を、仲間外れになんてしてないじゃん」 「してるよ! してるじゃん。聞いたもん。本間から」 「あぁ、石岡さんが、俺の会社へ来たって?」 本間と別れ、待つこと数分で弟が現れ驚いた。弟のジムがあの店の近所だと知り、尚驚く。 多分本間は、それを知りつつ、あの店に私を連れ立ったのだと思う。 別段、私を思いやったわけではなく、水さんの仕事が終わるまでの繋ぎに、私を利用したまでだ。 こういったことに関して、あいつは昔から抜け目がない。 迎えに来た弟は、車だっただけに、そのまま居酒屋へ行くことができなかった。 駐車場へ車を停め、そこからまた繁華街へ繰り出すには、時間が遅すぎる。 ということで、コンビニで大量のお酒とツマミを買い込み、秘密基地へと雪崩れ込んだ。 迎えに来た弟の顔を見て、少しばかり安心した。本間が不機嫌だったと告げたこともあるけれど、この穏やかな表情からして、何かを深く思い悩んでいるようには見えなかったから。 それでも、弟に悩みが有る事には変わりがない。 だからチューハイの缶をぺこぺこと潰しながら、弟へ切り出した。 「ねぇ亮ちゃん、私じゃ頼りにならない? 相談にも乗ってあげられないの?」 「別に、石岡さんは俺に相談があって来たわけじゃないよ」 「萩乃ちゃんのことだけじゃないよ。亮ちゃんだって悩み事があるんでしょ?」 そこで弟は、飲もうとしたお酒を口元に宛がったまま、動きを止めて率直に答える。 「あるよ、沢山」 遣る瀬無い。そんなにも呆気なく簡単に言われてしまうと、無性に物悲しくなる。 やはり私では、何の役にも立たないのだろうか。 「それを、私には全然言ってくれないよね……」 両膝を立て、そこに顎を置きながら呟けば、弟は頬杖をついて切り返す。 「俺は言ってるよ? いつでもちゃんと美也に伝えてるけど?」 「聞いてないよ。聞いてません」 「そうだね、美也は聞いてない。でも俺は言ってる」 聞いてない。否、覚えていないんだ。私はいつもそうやって、話を右から左に流してしまう。 でも今日は、今日こそは、そんなことをしないと約束する。その証拠として正座で誓う。 「ちゃんと聞く。ちゃんと聞くから、話して?」 姿勢を正して、弟の正面へ向き直り、誓いの言葉をだらだら告げる。 けれど弟は、最後まで言わせることなく、話を展開させた。 「亮ちゃんはお節介って言うけど、私は…その、お姉ちゃんらしく、弟の悩みを聞い…」 「では、相談に乗ってもらおうかな? 美也さまに」 思わず顔が綻んだ。つい、弟を抱きしめようと腕が上がるけれど、これをやると、何やら怒られそうな予感がしたから、自分の身体を抱くだけに止めた。 「うん。いいよ? もう、何でも言って!」 遂に始まった、弟の悩み相談。心躍らせて待ち構えたけれど、意外な言葉に驚いた。 「俺って、すごいやきもち妬きなんだけど、これって治らないのかね?」 十数年一緒に暮らしてきたけれど、そんなことには全く気がつかなかった。 弟も兄も、とにかくドライな人間だ。やきもちを妬くなど、父の専売特許なはずだ。 それでも申告してくるからには、妬く相手が居るからであり、それを気づかされたことになる。 「もしかして、彼女にウザイって言われちゃったの?」 「いや、やきもち妬いてることにも、気付いてないんじゃない?」 「何だそれ? 鈍感な女だね? あ、ごめん……」 弟の口端がひくっと持ち上がる。いくら姉とは言え、弟の彼女を虚仮にしては拙い。 だから瞬時に謝った後、姉らしい実体験に基づいた深い言葉をかけてやる。 「治さなくて平気だよ。私はさ、好かれてる気がして、ちょっと嬉しかったりするよ?」 けれど、謝罪が足りなかったのか、弟は片方の眉毛を上げて凄み始める。 「へぇ。誰に妬かれて嬉しかったの?」 「いや、私の話じゃなくて、亮ちゃんの話でしょ?」 「俺は、そっちの方が気になるけどね」 弟が少し怖い顔をしながら、ゆっくりと近づいてくる。思わず目線を逸らし、話も逸らす。 「か、彼女は幾つ? もう、どれくらい付き合ってるの?」 そこでようやく弟の動きが止まり、安堵の溜息をそっと吐いたところで、またもや意外な言葉が、弟の口から吐き出された。 「彼女じゃないよ。俺の片想い。でも絶対、手に入れるけどね?」 こんなにも可愛い弟に、落ちない女がこの世に存在すること自体が気に入らない。 ここは一つ、私がその女に説教を食らわせてやる。 「何だそれ? 亮ちゃんの何処が気に入らないの。その女、一辺呼んでこいっ」 ところが弟は、明後日の方向を見ながら溜息を吐く。 「何時になったら、気付いてくれるんだろうね……」 何やら、今の言葉は、レモンの香りが漂っていたような。 そこで、萩乃ちゃんの姿が頭に浮かび、はたと気がついた。 「も、もしかして亮ちゃん、告白しても気付いてもらえないとか?」 「当たり。何度好きだと言っても、相手にされず?」 身体が怒りで、否応なくわなわなと震える。両拳を握り締め、感情を爆発させた。 「なんてふざけた女だ! 普通は気付くだろ? 可笑しいよそいつ!」 「それだけじゃないよ? 他の女と俺をくっつけさせようとすんの」 「ひ、ひどっ! 亮ちゃん可哀想……」 口を手で覆い、泣きそうになる想いを堪えて囁く。 「そんなことされても、その人が好きなの? 違う人じゃ駄目なの?」 私の隣に落ち着き、同じくベッドに凭れ掛け始めた弟は、真剣な瞳を湛えて私に言った。 「駄目。他の女なんか眼中ない。好きだよ、凄く好きなんだ」 堪らず腕が動き、レモンの王道を貫く、素晴らしき弟を抱きしめる。 「くぅぅぅ。亮ちゃん、あんた男だね。私、感動しちゃった」 それなのに、姉の気持ちを知らぬ弟は、お酒をずびっと啜りながら小言を呟いた。 「はぁ。これだよ……」 抱擁を解き、弟の両肩を何度も叩いて気合を入れる。 「そんなに好きなら、ずっと言うしかないよ。きっと亮ちゃんの想いは届くよ!」 「ほんとに届くのかね?」 弟の諦めに似た口調に腹が立ち、肩に置く手に力を込めて、気持ちも籠める。 「諦めちゃだめだよ! ちゃんと好きだって。やきもち妬いてるって、他の女なんか紹介するなって言わなきゃ!」 「とりあえず、他の女を押し付けるのは止めさせたいよね。あれは腹が立つ」 「そうだよね。どうしてそんなことするんだろ……」 弟は私の手首を掴み、にと意地悪な笑みを浮かべて、自分の企みを私に溢す。 「それって、ちょっと強引に、解らせていいと思う?」 「いいよ、強引で! あ、でも、犯罪っぽいのは駄目だよ?」 簡単に背中を押してしまったものの、飽く迄も相手は女性だ。 生涯心に残ってしまうような、傷をつけてしまったら可哀想過ぎる。 それに弟が、警察のご厄介になることだけは、姉として助言者として、阻止しなければならない。 ところが弟は、意地悪加減に磨きをかけた微笑で、私を見据えながら明言する。 「大丈夫だよ。後で絶対覚えてろって言っといたし。ね?」 その言葉は、昨日言われたばかりだ。あれは余り、良い言葉だと思えない。 特に想いを寄せる女性へ向けて、放ってはいけない台詞だとも思う。 「亮ちゃん、私にはいいけど、あんまりそういった言葉を女の子に言うのは……」 けれど弟は、もうこの話は解決したとばかりに、話を大きく切り替えた。 「美也、石岡さんと一緒に買い物したんだって?」 「え? あ、萩乃ちゃんが言ってたの?」 「うん。とにかく、彼女は美也が大好きだって言ってたよ」 その言葉は、私に破顔一笑を齎した。押えても押えても頬の緩みが止まらない。 「ほ、本当? 萩乃ちゃんが、私を好きって?」 照れ続ける私に、弟は軽く相槌を打つと、これまた軽いノリで聞いてくる。 「お兄さんも居たのに、女二人で何を買ったの?」 「あぁ、下着下着。流石に男の人とは、萩乃ちゃんも買えないじゃない?」 「また美也も、付き合いと勢いで、一緒に買ったでしょ」 勢いは余計だが、確かに買いました。しかも、本間と勝負も致しました。負けたけど。 「本間との勝負に負けただけだよ? でも、あいつが異常だか」 「へぇ。勝負下着を買ったんだ」 地雷を踏んだのですね、今私。単独事故とも言いますが。 又もや上がり始める弟の片眉毛。単独事故なのだから、寛大な心で許してくださると有難い。 「本間さんに負けたってことは、今着けてるんだよね?」 「いや、ま、まぁ、そうなりますかね?」 復讐を誓ったマフィア顔が、蛇のような狡猾さで近づいてくる。 「美也、誰に見せるため、着けていったの?」 「ちがっ、だ、だって、箪笥の肥やしになっちゃうのはイヤじゃん!」 両手で白旗を揚げるものの、弟は許してくれないらしい。 あっと言う間に、例の顔へ切り替え、首を傾げながらのお強請り要求。 「じゃ、俺が見るよ。美也、見せて? お願い……」 「うぅぅぅ。い、いいよ……」 や、やっぱり言っちゃった…… セーターを脱がされ、けれどスカートは穿いたままな、中途半端の惨めな格好。 さらにブラを見つめる弟の眼が、哀れ感を色付けしている情けなさ。 けれどこれは、私だから似合わないのであって、萩乃ちゃんなら似合うはずだと期待を込めて、弟の視線から逃れるように言い訳を試みた。 「や、え、あ、変? やっぱ、私には似合わないよね?」 ところが弟は、似合う云々ではなく、下着そのものを査定する。 「いや別に? 下がガーターベルトだったら退くけど」 「えぇ! ひ、ひくの? 駄目なの?」 それは拙い。勝負なのに、見せた瞬間、その場の空気が乾くのは悲惨すぎる。しかも本人否定だし。 「脱がせづらいじゃん。それとも何? つけっぱなしですんの?」 そう言われればそうだ。何故、そこに気がつかなかったのだろう。 「あ、そ、そうか。そうだよね……」 ガーターベルトを選択したのは、この私だ。萩乃ちゃんに何と謝ろう。 それでも、ガーターベルトを着けなければ、どうにかなるかも知れない。 「で、でも、それさえなければ……」 けれど、そんな淡い期待も、弟の言葉で真っ二つに切り裂かれた。 「勝負下着ってさ、脱がせたくなる下着でしょ? こう、ムラっとさせて」 「あ、えぇ。その通りですよね」 「でも、ムラっとはさせるけど、脱がせたくないやつは無意味だよね」 「こ、これはどちらに属するのでしょう?」 「明らかに後者だよね。そんなにスケスケじゃ……」 私の知識など所詮こんなものだ。姉風を吹かせたくせに、ちっとも役に立たない。 けれどそこで閃いた。萩乃ちゃんのサイズは解っている。ならば今度の休みにでも、弟と一緒にあの店へ出向き、弟本人に選んでもらえば良い。そしてそれを、萩乃ちゃんへプレゼントするんだ。 「りょ亮ちゃん、あの、今度さ?」 「でも、こんなの見せたら、男は形振り構わず襲い掛かるだろうね」 「ほんと? ほんとに? 亮ちゃんも襲っちゃう?」 「好きな女なら襲うよ? こんな風に」 その台詞を最後に、指を絡ませながら手を固定され、キスすることなく唇が首筋を這い始める。 「わ、私を襲わなくていいよ」 否定の言葉を投げかけながらも、既に身体は火照って顎が上を向く。 「何で? 美也以外、誰を襲うの?」 亮の手が、スカートを脱がせに掛かる。 見られた方が良い結果に繋がるはずなのに、見られたくない一心で言葉が零れた。 「りょ、亮ちゃん、ひいちゃうよ…ガーターベル……」 「美也、こんな下着で誘っといて、止めてもらえるなんて虫が良すぎるよ」 「さ、誘ってなんか…はぅっ」 薄いレース越しに、胸の中心を撫で上げられ、頭がベッドにくっついたまま離れない。 拒否など口ばかりで、身体は亮が脱がせ易いように、腰をふと浮かせる。 胸の谷間を唇が這い、指は双方の突起をレース越しに弄ぶ。 溶け出した蜜が、真新しい下着に、染みを描いていくのが分かる。 それでも頑なほど、レース越しに責め続けられていた。唇も指も、決して直には触れてくれない。 そして、唇が唇に、重なり合うことも決してない。 「りょ…亮ちゃ…ん…?」 いつもとは違うそれに戸惑い、躊躇い勝ちに、キスを強請りながら名を呼んだ。 けれど亮は顔を背け、淡々と言葉を吐きながら、執拗に尖る隆起を指で責める。 「美也ごめんね。キスはできない。美也は妹が欲しいんでしょ?」 何故、妹を欲しがると、キスをしてもらえないのだろう。 抵抗という論点から大幅に掛け離れた、疑問ばかりが頭を廻る。 「ふあぁぁ……っ」 生温かい刺激が、胸から伝わる。レースに唾液を染み込ませ、亮が頂にしゃぶりついていた。 いつもとは全く違う感触。いつもとはまるで違う刺激。 何で、何故、どうして、いつものように抱いてくれないのだろう。 亮の頭をきつく抱きしめ、泣きそうな声で喚いていた。 「亮っ…亮ちゃんっ」 「ん? 俺に彼女ができたら、美也を抱くことができないよ。彼女に悪いから」 灰色がかった意識の中で、自分の心と心が鬩ぎ合う。 抱いて欲しい。否、駄目だ。彼女に申し訳がない。でも抱いて欲しい。せめてキスだけでも。 脱がせてもらえない。触れてもらえない。そんなことが、酷く悔しい。 それなのに亮は、やはり直に触れることのないまま、レース越しに秘裂をなぞる。 「くぅぅぅ……っ」 不意に身体が浮かび上がり、ベッドの上に降ろされた。 ようやく、ちゃんと抱いてもらえる。ようやく、亮が諦めてくれた。 にっこりと微笑んで腕を伸ばし、キスを求めて頭を上げる。 「美也、案外強情だね」 けれど亮は応えてくれず、それだけ言い捨てると、レースの中に指を潜りこませ、行き場を失い溢れかえった蜜を掬い、固くなった蕾を直に捏ね始めた。 「くぁっっ!」 勢いよく流れ込む電流に、身体が仰け反り、腿が震える。 レースに阻まれても尚、繊細に素早く動く指は、肉芽を甚振り、私を絶頂に押し上げていく。 「ああぁぁっ、……?」 最後の階段へ足を踏み入れようとしたとき、急に動きを止められた。 短く浅い呼吸を繰り返しながら、到達することのできなかった身体で亮を見上げる。 「美也が妹欲しいって言うし、俺、頑張るから、美也も我慢してね」 首を傾げて天使のように可愛らしく微笑みながら、悪魔のような冷たい言葉を亮が言い放つ。 呆気に取られて息を止めれば、また指の動きが再開する。 「んあぁぁ……っ」 亮の中指が、つるりと中へ入り込み、そんな中指に代わって、親指が肉芽を強く捏ねる。 胎内で蠢く中指は、襞を弄り、ざらざら感を運びながら要処を擦った。 それでも身体は知っている。絶対にこの指で、私はイかせてもらえない。 「が、我慢できないぃ…んぁぁっ」 「だって、妹が欲しいんでしょ?」 灰色だった意識は、汚染物質を含んで汚泥と化し、澱んだ感情を湧き上がらせていく。 「妹いらない…妹いらないっ!」 亮の腕を強く握り締めて叫ぶ。それでも亮は、指と言葉で私を責め続ける。 「俺に彼女がいても無理だよ?」 どんなに懇願しても、身体は中途半端に高められ、そしてそのまま突き落とされる。 爆ぜることができず、燻り続ける身体と心は濁りきり、悋気と独占欲の塊になっていく。 亮は、二度と私を抱いてくれないのだろうか。亮は、違う誰かをこれからは抱くのだろうか。 ああやって愛しげに、ああやって愛でながら、私ではない誰かを愛するのだろうか…… 「だめっ、亮ちゃんは彼女作っちゃだめっ」 「美也、俺は誰のもの?」 欲しくて堪らない亮の唇が、目の前で揺れていた。首を傾けてキスを強請るけれど、答えなければ駄目だとばかりに顔を背けられる。 亮はずるい。私の欲しいものを全て知っているのに、目の前にぶら下げて私を焦らす。 この唇は私のものだ。誰にも渡したくない。絶対に渡さない。 「み、美也の! 美也のものっ!」 「うん。全部、美也のもの……」 亮が微笑む。亮が囁く。そして亮が繋がる。欲しくて狂いそうだった唇で、私の喘ぎを呑み込みながら、ゆっくりと確実に私の中へ沈んでくる。 「ぐんぅぅぅっ!」 「亮ちゃん…亮ちゃんっ」 息継ぎの合間に、何度も名を喚く。それでも足りない。もっともっと、唇で伝えて欲しい。 何を伝えて欲しいのかなど解らない。それでも重ねて欲しい。厭という程ずっと。 「美也…好きだよ……」 頭の中で、亮の囁きがくるくる回る。私も好き。亮が好き。この気持ちは今までと何か違う…… それでも亮が動き、快意が身体を貫けば、そんな思考は何処かへ消え飛ぶ。 「ああぁっ、りょ、亮ちゃっ…だめっ、イクっ…んあぁぁっ」 ブラもガーターベルトも着けたまま、座る亮の上に跨っていた。 肌の全てで亮を感じたいのに、下着に阻まれ、それができない。 「も、もう、絶対、こんなの着ない……」 亮の額に自分の額を押し当てて、半べそながらに呟いた。 すると亮は、さわさわと私の身体に指を這わせながら、戸惑い勝ちに私へ問う。 「ん? 何で? そそるよ、凄く」 「だ、だって…ぬ、脱がしてもらえないから……」 その言葉で、亮が艶やかに笑う。私の頬を両手で包み、蕩けるようなキスを齎しながらそっと囁く。 「美也、好きだよ。すごく好き」 ホックを解かれ、ストラップが肩から滑り落ちていく。 亮の目の前に差し出された私の胸。まるで食べてくれとばかりに、ふるっと揺れる。 期待通り、眼を閉じた亮が胸の隆起に吸いついた。その心地良さに深い溜息が零れ、顎が上がる。 まるで氷水へ浸かったように、ぴりぴりと身体が痺れ、敏感に研ぎ澄まされていく。 亮の髪に両指を差し入れ、声にならない喘ぎを漏らし続けた。 「美也…包んで…俺を美也で包み込んで……」 その言葉だけで襞が揺れる。亮の全てを絡め取りたいと、私の襞が訴えている。 「っあぁぁ……」 腰を浮かし、自ら亮を包み込む。分け広がる襞がひくひくと、絡み吸い付き締め上げていく。 「亮ちゃんっ、亮ちゃんっ!」 亮の肩に掴まりながら、止まることなく身体が撥ね続けていた。 胸を這う滑らかな舌の感触と、中心の蕾を捏ねる指の動きに、蕩けて溺れて我を失くす。 ぐちゅぐちゅと、自分の蜜が淫らな音を奏でていた。私もこの蜜のように溶けそうだ。 身体が熱い。高く高く打ち上げられて、吸気の音すら高くなっていく。 瞼を閉じても光は消えず、限界を感じ取った瞬間、亮の指が蕾をきゅっと摘み捻った。 「いやあぁぁぁっ!」 意思とは無関係に、身体が大きく震える。一定の律動を保って、びくんびくんと揺れ続ける。 それでも亮は止めてくれない。するっと私を押し倒し、横向きにさせたまま片脚を持ち上げる。 深く繋がるように、交差された互いの身体。それを解っていながら、亮が限界まで押し込んだ。 「りょ、ふっ、ふか、深いっ…ああぁっ」 「やば。美也そのカッコ、そそり過ぎ」 ガーターベルトの合間から覗く秘処が、亮を咥え込む姿を、本人に見せ付けていた。 堪らなく恥ずかしい。羞恥が込み上げ、顔を両手で覆いながら中心に力が入る。 襞の中で亮がぴくんと揺れた。けれど、それを感じられたのは一瞬だ。 「いやぁっ、ふかっ、あた…あたって…だめぇっ!」 抉って抉って擦り上げ、突き上げられる塊が壁を打つ。 襞の要処を直撃し、壁を貫くその酷烈さに、口を閉じることができず、涎が垂れる。 それでも、持ち上げた私の片脚をぐっと折り曲げ、さらに深く深くと、亮が抉る。 「やめ、やめっ、りょうちゃっ、狂っちゃ、狂っちゃうっ!」 「…俺も…狂い…そっ」 亮がくる。私の中で爆ぜるため、勢いを増した亮がくる。 閉じられた目の中に、幾つもの光の粒が揺らめき、明滅を繰り返す。 「い、一緒に、一緒にっ……んあぁぁぁぁっ!」 「っ…美也、美也っ」 今回は、一語一句、自分の発した言葉を覚えています。故に、言い訳が通用しません。 感じ捲り、乱れ捲り、さらに不可解な言葉を投げつけました。 私の記憶が正しければ、何時から我が弟は、私のものになったのでしょう。 思い切り明言し、しかもそれだけでは飽き足らず、彼女を作るなとまで言い切りました。 誰でも構いません。どなたか、こんな私を怒り、そして救ってください…… 「ねぇ美也、それは、誰に宛てた作文?」 横を向く私の肩に、後ろからキスを施しながら弟が問う。 主催者に決まっている。我ながら、この作文は完璧だ。 きっと作文コンクールに出展すれば、賞という賞を掻っ攫うに違いない……って何だそれ。 「いえ、こちらは作文などとは違いまして、感情の赴くままに言葉を発しただけであり、誰に宛てたわけでも、何方かに聴いて欲しかったわけでもなく、強いて言えば、自分自身?」 「つまり、独り言ね?」 「あぁ、もう、そうでございます。私もそのように申し上げたかったわけでありますが、何せ幾分ですね? 頭が混乱していると申しますか、どのように言い逃れようかとばかり考えている故……」 「いらない言葉が多くなる?」 「いやもう、パーフェクトでございますね! それほどまでの御方ですから、きっと、つい先程の営みにて私が口走ってしまったことなど、露ほども気に留めず、記憶の彼方へ押しやっ」 「あ、それは無理だから。絶対に忘れない」 「チッ」 「チッ? 今、美也はチッって舌打ちしたよね?」 仰向けに転がされ、身体全体で身動きが取れないように抑え込まれた。 「し、してないよっ、りょ亮ちゃんの勘違いだってば!」 どんなに弁解しても聞き入れてくれそうにない弟は、悪魔のような狡猾微笑みを浮かべながら、私の口調を真似てほざく。 「や〜ん亮ちゃん、狂っちゃ、狂っちゃうっ! って、今直ぐまた、言わせてもいいんだけど?」 弟の中心が高まり始めたことを、私の肌が感じ取る。 拙い。酷く拙い。ちょっと欲しいかもって思っちゃった自分が、一番拙い。 弟の身体を力一杯押し退け、裸なことも忘れて正座に勤しむ。 「こ、今回は、どのようなお約束をすれば……?」 すると弟は、うつ伏せに突っ伏したまま、有言実行を囁いた。 「自分の言った言葉には、責任を持ちましょう。かな?」 「あ、それなら大丈夫です。私はいつでも狂ってますから」 「違うでしょ? 妹いらない! でしょ」 そうだった。私はそう断言した。しかも連呼して。 急に身体の力が全て抜け、へなへなと仰向けに転がった。 天井に萩乃ちゃんの姿が浮かび上がる。それなのに、愛しい萩乃ちゃんが遠ざかって行く。 「うわ〜ん。萩乃ちゃ〜ん! 折角、キャッツアイだったのに〜!」 天井へ腕を伸ばして、戯言を叫びながら、萩乃ちゃんの残像を追いかける。 そんな私を半口開いて眺める弟は、溜息混じりの哀れみを述べた。 「別に俺とくっつけなくても、石岡さんは美也の傍に居てくれるよ」 そこで、ふと閃いた。そうだ。萩乃ちゃんを妹にする方法が、まだあったじゃないか。 何で最初から、これを思いつかなかったのだろう。だから私は、何時までも駄目なんだ。 よし。こうなったら、明日からでも作戦開始だ。新たな勝負下着を手に入れよう。 「亮ちゃん、私、頑張る! 石岡さんと私が結婚すれば、萩乃ちゃ」 「美也、お前、マジでぶっ飛ばすっ!」 何だそれ。なんでぶっ飛ばされなきゃならないんだ。変な亮ちゃん。多分。 |
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