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◇◆ 彼が盗んだもの 登校 ◇◆
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全く、やってられないよねもう。
折角、本日一位を獲得したって言うのにさ? タータンチェックでもなけりゃ、ギンガムチェックでもなく、牛柄よ? いまどき、牛柄のパジャマを着るってどう思う? 大体、文子はいっつもそう。 もう少し、誰かに見られるってことを、意識したほうがいいと思うのよね! 「思想を口に出すのはやめろっ!」 なんだかチミッコイ生き物が、地面の方から喚くから、仏頂面のまま見下げれば 「私は、アリですか?」 俺の目線の先まで潜り込み、下顎を突き出すアフォ面文子。(でも可愛いけど) ところがそんな文子の脇からぬっと現れた、もはやこの世のものではない形相。 「ルパンくん、あ〜んど、ふみりん、ごきげんよぉ♪」 朝から呪われ、幽体離脱っ!(くわっ!) ところが呪いは、まだまだ続く…… 「えへっ 実は、今日の実習のために、奮発しちゃったのだ♪」 「な、な、な、な、なにを?」 ふ、ふ、ふ、ふ、文子の真似。(やっほーマネっこ) そんな冗談を心の中でつぶやいているうちに、魔女が怪しげなバッグから怪しげなブツを取り出しながら、 今にも魂を吐き出しそうな文子に言い出した。 「ふみりんだけには、特別に教えてあげるのだぁ〜! ウシガエルの内臓をすりつぶ……」 「ピーーーーーーーッ!」 慌てて止めに入るが、既に瀕死の文子の姿。 けれど、いいところで止められたことに憤慨する魔女が、語尾に力を込めて吐き捨てる。 「ルパンくんたら、なんなのだぁ! ちょっとうるさいぞ?」 「よい子のさくはぴでは、それ以上は無理っ!」 妙な沈黙を乗り越えて、気を取り直した魔女が話を戻す。 「でも続けるのだぁ〜♪ 実はそのウシガエルのふん……」 「ドナドナド〜ナ〜ド〜ナ〜!」 文子の耳をヘッドホンのように手で塞ぎながら、大声で名曲を歌うところで魔女が突然歩みを止めた。 「ん? 次元くんの電波の匂いがするぞぉ? どこなのだっ!」 で、電波には、匂いがあるの? 「居たなのだぁ〜!」 木の精では飽き足らず、今度は電柱の精に成りすました次元に魔女が襲い掛かる。 「や、やめろっ! よ、よせっ! く、くるな〜っ!」 次元の絶叫を背中に受けながら、ここはひとつ……撤退っ!(当然だ) 他力本願責任転嫁! (素敵な八字熟語) 「ル、ルパン……」 「ん?」 「あたしの電波の匂いって、どんなのだろ……」 制服の匂いをフンフン嗅ぎながら、文子が心配そうにつぶやいた。 だから心優しき俺は、そんな心配を吹き飛ばせるようにと、文子の疑問に解答する。 「そりゃお前、フミフミっと、ロリロリって、ムチムチった匂いだろ?」 「どんな匂いだよっ!」 さぁ? サッパリ? 喧々囂々とバトルを繰り広げているところで、子泣きジジイを背負っちゃった、背中を丸めるワトソンを発見。 「ワトソン、ずいぶん背中が重そうね?」 そう問いかける俺に、振り向き縋りつくワトソンが、訳のわからん言葉を吐いた。 「ル、ルパンくん、十字架は持ってきたんですけど、枝毛は無理ですよね?」 「はぁっ?」 そして今度は、俺に縋りついたまま文子に懇願する。 「く、久島さん、ぼ、僕は枝毛が欲しいんです!」 「えぇっ?」 けれど意外にも、俺よりも先に立ち直った文子の方が、親切ぶってワトソンの問いに答え始めた。 「あ、だったらさ、毛先にハサミを入れて人口枝毛を作ったらどうかな?」 文子、それは顕微鏡クラスが必要だろ…… 「そ、それが女子の皆さんが言っている、毛先カットだったんですね?」 ワトソン、それもきっと違う…… 和気藹々と会話を楽しむ俺たちの元に、突然突風が吹き荒れて、頭の中に響く声。 『あたしは勝つ、絶対勝つ、名にかけて勝つ、そして勝つ!』 こ、この声は、悪魔から聞こえてくるの?(えぇ、その通り) 「あ、由香だ。由っ…んぐっ!」 悪魔召喚呪文を叫ぶ文子の口を押さえ込み、塀際まで抱えて歩く。 気分はヌリカベ状態で、文子を中に入れたまま塀と一体化を試みるが、ふと隣を見れば、傘地蔵と化したワトソンが佇んでいるからビックリ仰天! ワ、ワトソン、その手ぬぐいはどこから調達したの? てっきり悪魔から逃げられたと思いきや、振り返れば真後ろに佇む福島が囁いた。 「いい度胸だな、お前たち……」 ひ、ひぃ〜〜っ! バレてるよ! (当然です) 結局、なんだかんだと四人並んで、ラストスパートの坂道を上がる。 そこで、ずっと気になっていたことをワトソンに聞いてみた。 「なぁ、魔女の苗字って、ナノダ?」 「いや、奥田だったと思われますよ?」 「そうおくだぁ〜! 知らなかったおくだ♪」 「やめろルパン! 呪われるだろっ!」 けれど予想に反して、地の底から響く悪魔の不気味な笑い声…… 「プギャッ ギョバッ ブワッハッバー!」 姉さん、それはその……喜んでいただけて恐縮です…… ようやく最後の十字路に差し掛かったところに、およびでない男の登場。 「やぁ、グッモーニン、僕の小さな天使さん」 いきなり飛び出してきたと思ったら、そんなセリフとともに左手で髪をかき上げ、極限まで伏せ目にした翔也が、 俺に向かってウインクを放った。 えっと、翔也? 俺はお前より大きいだろ? ノビタくんが眼鏡をとっちゃった状態で、見つめる八個の瞳。 けれどなぜか不服顔の翔也が、決してさわやかには程遠い顔で言い放つ。 「な、なんだよルパン、邪魔するなよ!」 「はぁっ?」 そう返答しつつも後ろを振り向けば、顔面麻痺状態のリアルフジコが呆然憮然。 翔也へというよりも、人類全てに軽蔑の視線を投げかけている感じ? そんなリアルフジコを見据えながら、悪魔が腕を組んで仁王立ちを決める中、唇を噛み締め、頬を赤く染めた文子がモジモジと言い出した。 「フ、フジコちゃん……お、おはよう♪」 ま、待て、文子それは勘違い…… けれどそんな可愛らしい文子をサラッと無視したリアルフジコが、なぜかワトソンに向かって微笑んで 「史彦くん、おはよう」 だなんて、悪魔の目の前でさわやかに言っちゃった?(くるぞ〜っ!) とりあえず、その場で固まる文子を肩に担ぎ、一目散に坂を駆け上がる。 けれど何やら体が重い。 まるで魔界に引きずり込まれるような感覚に、恐怖を覚えながらも振り返れば、 俺のベルトに手を掛けるワトソンと、そんなワトソンのベルトに手を掛ける次元がもれなく付いていた。 俺は、大きなカブですかっ! (失礼しちゃう!) 校門前で、反対方向からやってくる中島が手を振って 「みんなおはよ〜っ!」 誰もが明るくなれちゃうような、優しい笑顔で迎えてくれた。(あぁホッとする) けれど文子を見るなり、中島がブツブツ文句を言い出した。 「ちょっと文子、ネクタイが曲がってるじゃないの! あ、もう、スカートにもシミを付けて! 全くだらしないんだから……」 中島、お前って本当に……(お母さん) 「ぬおっ!」 昇降口に入った途端、文子が驚きの声を発した。 脱いだ革靴を拾いながら見上げれば、丸くて黄色いスポンジを頭中にくっつけた小島が、下駄箱に寄りかかりながら溜息をついている。 「あたしって、存在感がないんだよね……」 そんなたわけたことをつぶやく小島に向かって、頭にくっついたそれを指差しながら中島が叫ぶ。 「け、恵子、カーラー!」 「え? ぐわぁ〜っ!」 真実に気がつき、慌てて頭を押えながら走り去る小島に向かって、それぞれがそれぞれの思いを発した。 「こ、小島、俺はある意味、お前を見直した……」 「ぼ、僕、金髪のサザエさんかと思いました」 「いや、どう見ても、金髪のアフロマンだろ?」 「あれで電車に乗ったのかな?」 「そ、それはそれでカッコイイやも……」 わざとらしくゴムの音を立てて階段を上りきり、くだらない話で爆笑しながらクラスのドアを開ける。 けれどドアを開けた向こうには、体をリズミカルに左右にスライドさせながら、素晴らしく激しい『イートーマキマキ』を繰り広げるゴエモンの姿。 ゴ、ゴエちゃん、それはスクールメイツ? 「おっ? きたなKEN!」 と、とりあえず、踊っとく?(東村山希望!) そうこうしているうちに、一時間目の授業が開始され、文子のいない技術室でうな垂れる。 どうして男子には家庭科がないんだなどと、クラス全員にフェミニスト宣言をしてみるものの、フミフミ病だと簡単に片付けられて、 ふて腐れたまま机に突っ伏した。 電糸ノコの甲高い音を背後に聴きながらゆっくりと目を閉じれば、とっても良い気持ちになったところで俺の肩を叩く人。 口を尖らせ文句を言おうと起き上がったところで、視界に輝く文子の顔が目に入る。 「ルパン、マドレーヌを作ってみたんだけど、食べてもらえるかな?」 「よ、喜んでっ!」 慌てて飛び起き、今すぐ抱きしめたくなる気持ちを抑えながらマドレーヌを受け取った。 アヤパン、君を信じていて良かったよ俺…… やっぱり一位だけのことはあるんだね! そういえば、欲しいものを自分から催促しても好感触だとも、アヤパンは言ってたな? どうせダメ元だが、言うだけ言ってみようかな? 「文子、お前をくれ!」 「いいよ♪ どこで? ここでもいい?」 「えぇっ? あ、いや、それはダメだ……」 けれど俺が懸命に止めているというのに、文子が制服のボタンを外し始める。 「ばっ! や、やめろっ! 他のやつにみられちゃうだ……あれ?」 肌蹴たブラウスの中に見える文子のブラの柄は、何度目を擦っても、あのパジャマのようなヘンテコ牛柄。 「夢なんだなコレ……」 「夢なんかじゃないってばっ! 好きだよルパン……」 ぜ、絶対に夢だ……(有り得ない) で、でも、夢でもいいか?(もったいない) ご、ごちそうさま!(まだ食ってない) ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 「あいつ、一時間目から爆睡かよ?」 「素晴らしく効率的な、時間の使い方ですよね……」 「うっわ、とてつもなくエロイ顔で笑ってるよ……」 みなさんも、良いお年を! あ、違った、良い夢をね! あっ…ふ、ふみこ…そ、そこは……(ムフ♪) END |
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