schole〜スコレー〜
エピローグ
諸星さんの正式な奴隷となってから数週間が過ぎた。
僕は中学へ真面目に通うようになり、諸星さんもまた、真面目に高校へ通うようになった。あのまま欠席を積み重ねて
いればやはり卒業はできなかったようで、更生して本当に良かったと心から言える。
更生と言えば、諸星さんはあれ以来不良を求めて町を彷徨う事をしなくなった。僕の周りでも『十字町の救世主』とい
う単語はあまり聞かなくなったし。
代わりに有名になってきたのは。
『十字町最後のスケバン』。言うまでもなく銀島さんの事である。
活発的な活動を控えるようになった諸星さんの代わりに、十字町の不良を取り締まっているのだという。なんともスケ
バンらしくもない人だ。
自主的に動きはしない諸星さんだが、友人である銀島さんのために、大きな闘いがある際は助っ人として協力へ向か
うらしい。諸星さんがいれば当然負け無しに決まってる。有名ではなくなっても、諸星さんが『十字町の救世主』である事 に変化はない。
ドSとしての欲望を満たすため、諸星さんは嬉々として闘いに参加しているようだ。僕を殴っても、ドS心を満足させる
事はできないって言ってたし。…………嬉々として他人を殴る諸星さんを想像すると、若干嫌な思いがするのは何故だ ろう。
閑話休題。
僕と諸星さんは毎日、放課後に会っている。
場所は定まっていない。十字町をぶらぶらと二人で歩くだけだ。別れ際には、諸星さんからパンチをお見舞いしてもら
ってる。時にはキックになったりエルボーになったりするけど。とにかく、痛みをもらってる。諸星さんとは違い、僕のドM 欲は毎日満たされている。そう考えると、諸星さんのストレス発散先は必要かな。仕方ない仕方ない。
「山田ぁ。今日はどこ行く?」
おっと。ご主人様からお呼びがかかった。
「駅前のゲームセンターで時間を潰して、ラーメン屋にでも行きましょうか」
「良いなそれ。じゃあそれでいこう」
笑う諸星さんは、以前の赤ジャージを着てはいない。彼女の通う高校、そこの制服を着ている。セーラー服だ。恐ろし
く似合っていない。可愛いけど。
あぁ、今日はその姿で、僕をどんな方法で痛めつけてくれるんだろう。
僕はドM。諸星さんはドSだ。
以前勘違いしていたように、ドMとドSの相性は決して良いものじゃない。ドSにとってはドMなんて邪魔でしかないは
ずだ。
でも僕は――――――いや、諸星さんは、僕と主従関係を結んだ。
そこにはもしかしたらドMだとかドSだとかなんて関係ないのかもしれない。
『十字町の救世主』の『お付きの山田』である事を僕は誇りに思う。
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