ドラえもん〜未来の世界の殺人ロボット〜

ドラえもんパロディ

目次

本編

プロローグ

ほら、きれいな青空が僕達の背中を飛んでゆく———
19XX年X月X日—何もない、一日が、始まるはずだった。平凡な生活—だが、今日は、こんな言葉で目が覚めた。
——————————————逝け——————————————
目が覚めると、ドラえもんが銃を構えていた。
「ガシャッ」 とっさに、僕は右へ飛んだ。ドラえもんが、ためらいもなく引き金を引いた。
突然のことで、何が起こったかわからなかった。ただーつ、銃声、銃弾が腕をかすめ、血が出ているのが、分かったくらいだ。
僕はわけもわからず、逃げようとした。
『外は駄目だ。どこでもドアで追いつかれる。』
彼の目に入ったのは、開いたままの引き出し、タイムマシンだった。
ドラえもんが、次の弾を装填した。
ドラえもんが引き金を引く前に、のび太はタイムマシンに飛び込んだ。行く先は一日前。一日前につくと、仲間(しずか、スネ夫、ジャイアン)を集め、状況を説明、もう一度タイムマシンに乗り込んだ。

1st war 戦いの始まり

『どうして…こんな…』のび太は、わけが分からなかった。血で汚れた腕を押さえながら言った
みんな、下を向いていた。
『でも、ここにいればしばらくは安全——』そう、スネ夫が言った瞬間だった。
地響きと共に、熱い風が吹いた。ドラえもんだった。
『オレから…逃げられるとでも思ったか?』
その声と共に、手の穴から赤いビームソードが出た。その先に、しずかの首があった。
傷は深かった。頚動脈を切って、致命傷だった。
『残り3人…ククク』
ドラえもんの不気味な声が響く。
『どうして…?』
のび太はドラえもんに問いかけた。
『のび太を殺せと上から指令が出たからだ。』
理由は他になかった。
ドラえもんが、ビームソードを振り上げた。のび太たちは、力の限り走り、逃げ出した。

2nd war 二人目の死者

三人は、疲れ果てていた。ここをドラえもんに狙われたら、終りだった。だが、ドラえもんは追ってこなかった。
『なんでだろう…追ってこないね。』
その頃、ドラえもんは装備を整えていた。グレネードランチャー、ショットガン、そして、時限爆弾。だが、ふといいことを思いついた。
『そうだ。のび太、スネ夫、ジャイアン、次に誰を殺すかは、彼ら自身に決めてもらおう』
そう言って、時限爆弾を用意した。
三人は、歩いていた。突然、地面の土が——崩れた——落とし穴だった。
ドラえもんの仕業だった。
一辺5m程の正方形の部屋——真中に固定された時限爆弾が置いてあった。
三人は、土まみれで倒れていた。
『イテテ…』
そうやってゆっくり起き上がると、まず時限爆弾が目に入った。残り7分24秒を指していた。
『うわぁ・・・これ…爆弾だよな』
ジャイアンが驚いた。時間は無情にも刻一刻と過ぎていく。
あたりを見回すと、鋼鉄の扉と何やらボタンがあった。
『何だこれ』
スネ夫は疑問に思いボタンを押してみた。すると、鋼鉄の扉が開くではないか。
『おお、出られるじゃん。』
スネ夫はボタンから手をはなした。
「ガシャン」
扉は閉まった。
残り5分22秒。
『これ…押してる間だけ開くみたいだ。誰か押してくれ。』
答えは返ってこなかった。当たり前だ。誰かが出る——即ち、自らの死が待っているのだ。誰かが犠牲にならなければならない。さもなくば!3人そろって死ぬ——
どちらをとっても、誰か死ぬ——最悪の状況だ。
残り3分14秒。
スネ夫は意を決して、ジャイアンをボタンの方向に押しとばした。ジャイアンが、ボタンの上に倒れこんだ。扉が開いた。
スネ夫とのび太は、一目散に扉へ向かい、逃げ出した。
『くっっそ・・・』
ジャイアンが、身を起こした。
「ガシャン」
無情にも、扉は閉まった。
—————————————裏切り—————————————
残り0分41秒。
最早死を待つしかなかった。
そのころ逃げ出した二人は、爆発に巻き込まれないよう遠くへ走った。
『もう大丈夫か』
そう思った瞬間、後ろで轟音が鳴り響き、きのこ雲が上がった。
ジャイアンが死んだ。それを秘密道具で見ていたドラえもんは、
『残り2人』
と凍りつくような冷たい声で言った。

3rd war 序曲<オーバーチュア>

『残り2人か…このままでは殺す楽しみがなくなってしまうな…』
ドラえもんがあざ笑った。
『そうだ。やつらのクラスメートも混ぜてやろう。サバイバルのスタートだ。』
そういって、前のモニターに過去を映した。
『サバイバルメンバー死体共々34名追加』
32名の命と、2名の亡骸の座標がロックされた。
そして、過去から未来の戦場へ、のび太たちのクラスメートが転送された。
『未来戦争サバイバル<フューチャーウォーサバイバル>参加人数計34名…スタート!』
 
薄暗い雲の中、爆発音が鳴り響く。

4th war Future War Survival

そこは、廃墟となったビルが立ち並んでいた。のび太たち34人は、そこをあてもなく歩いていた。
ドラえもん——両手にレーザー銃<レーザーガン>を持ったドラえもんが、最も高いビルに立っていた。
地上にいるのび太たちは、知る由もない。
————突然、不意の出来事だった。上から青いレーザーの雨が降り注ぐ。
『ヒャッッハァァァ!!』
ドラえもんが笑いながらレーザー銃を乱射する。
のび太たちは近くのビル陰に隠れた。もう既に何人かが撃たれ即死の者もいた。
4人——————残り30名。
『ここにいてはダメだ。ドラえもんに殺される!』
そう言ってのび太、他の者たちはビルの中に逃げ込んだ。それがドラえもんの罠という、空しい現実も知らずに————
『クク・・・何も知らずにサバイバルタワーに入ったな・・・』
モニターで監視するドラえもん。
『ふぅ・・・とりあえずあのレーザーは・・・』
ところが、入口が突然閉まり、開かなくなった。
『サバイバルタワー1F・・・虐殺ゲーム開始!!』
ドラえもんの不気味な声がタワーにこだまする。

5th war Survival Tower

————サバイバルタワー1F————
 
壁に無数の穴かがあいている。張り紙が貼ってある。のび太は声に出して読んだ。
『目の前にある階段を上り、7Fまで来い————脱出したければな!・・・ちなみに何もしなくても3時間後にこのビルを爆破し、君たちはあの世に脱出する。』
・・・その瞬間、壁の穴からレーザーが発射された。
のび太の頬をかすった———壁に当って壁が少し崩れた。みんな逃げようとした。しかし、階段がない。出口がない。
『サバイバルタワー1F逝去者設定1名。』
ドラえもんが屋上で笑う。
また、レーザーが発射された——クラスメイトの腹に直撃した。死んだ。
腹を貫通したレーザーは更に次のクラスメイトを襲った。クラスメイトが飛ばされた———壁に激突した。頭を打った。ガラスにどす黒い血しぶきが飛んだ。もう助からない。
『おや?・・・1名でいいのに2名死んじゃった。生存者残り28名』
そういってドラえもんがボタンを押した。すると———
『あ・・・2Fへの扉が開いてく』
そうしてのび太たちは2Fへ急ぐ。
1Fはレーザーの包囲網と化した。死体は見るも無残な状態だった。
 
————サバイバルタワー2F————
 
1Fと似たような風景。やはり3Fへの階段はない。だが・・・銃が一つと、ロボットがある。
『あのロボットと闘えってことか・・・』
『ウィィ・・・ン』
ロボットが動き出した。
のび太は銃を構えた。射撃には自信がある。
—のび太は首の配線を狙った。
射った。
当った。
ロボットはショートしたらしくバチバチと電気火花を散らした。
『これで終わりか・・・?』
のび太が呟いた。だが、
『俺が仕掛けた罠は闘いではない。ロボットに仕掛けられた爆弾だ!』
3Fへの扉が開いた。一人が先走って階段に向かった。その時————・・・・・
『残り27名』
ドラえもんが楽しそうに人間を減らしていく。
残り2時間20分——悲しむ暇もなく、のび太たちは先へ急がされる。
 
————サバイバルタワー3F————
 
3Fに着いて驚いた。既に4Fへの階段が開いている。
『なんだ。』
一人が歩いて階段へ向かった—————
『ガシャンッ』
突然、天井が開いた。ギロチンが姿を現した。
それが見えるか見えないかの瞬間—————
横から人間を切り裂いた———————————
人間が横から真っ二つになった。
血まみれのギロチンが、血の雨を降らせながら揺れ続ける。
通路が———紅色に染まった。
残り26人、ギロチンの当らない部屋の隅をほふく前進で進む。
一人一人進むのでかなりの時間がかかってしまった。あと1時間35分、急いで4Fへ向かう。
 
————サバイバルタワー4F————
 
また、次の階への階段が開いている——しかし、誰一人足を踏み出そうとしない。先程の二の舞になりたくないのだろう。
『急がないと・・・』
だが、今回は「止まる」という行為が、空しい結果を招くことを、彼らは知らない。
『ゴゴ・・・』
何かが動いている。大きな物が、何かをこすりながら——————
『壁が動いている!!』
壁がこの26人を押し潰そうとせまってくる。
『急げ!!』
走った。しかし、26人もの人間が1〜2列で走ればかなり時間がかかる。
2人—間に合わなかった。一番最初、「止まっていなければ」助かったのに。
「ボキボキ・・・」
押し潰される音が聞こえる。
のび太たちは振り向かず5Fへ向かう——

6th war 戯曲<プレイ>

————サバイバルタワー5F————
 
今度は——6Fへの階段がない。残り24人、あと55分。間に合うのか。
皆が5Fに集まると———突然———
四方八方から大鎌が飛んできた。スネ夫の頭上ギリギリを通過した。
髪が少し切れた。
『恐怖はこれで終わらない・・・』
ドラえもんがボタンを押した。
「ゴゴォォォン・・・ゴォォォン・・・」
何かが爆発し、崩れる音が聞こえた。そして—————
『うわあぁぁあぁ!?』
5Fの床半分が崩れた。大鎌はまだ飛んでいる。
———その大鎌が、一人の首を襲った。血が吹き出て顔に生暖かい雫がついた。
そのまま崩れた床に落ち——先程の爆発で崩れた4F、3F、2Fを通り血まみれの死体と共に落ちる———1名脱落。
6Fへの階段が開く。残り23名。あと30分。
 
————サバイバルタワー6F————
 
・・・一瞬のことだった。ドラえもんがKILL-44を構えて7Fの階段の前に立っていた。
 
「ドゴォォォン・・・」
 
先頭を歩いていた一人の眉間めがけて射った。どす黒い血しぶきと共に脳を貫通し、後ろの壁に突き刺さった。階段に倒れた。頭から出た血と脳漿が階段を流れ落ちる。
ドラえもんはニヤリと笑い、7Fへ上がっていった。のび太達も後を追い、7Fへ急ぐ。
———サバイバルタワー最上階へ・・・残り22名。あと20分・・・
 
————サバイバルタワー7F————
 
パラシュートが置いてある。一つだけ・・・・窓が開いていて、風が吹き込んで来ている。血の臭いを吸い続けた彼らに久しぶりの風が吹く・・・
先頭を歩いていたクラスメイト————古川、パラシュートが一つしかないを見て勘付いた。
『これ・・・一人だけしか助からないんじゃ?』
そう思った古川は、走ってパラシュートを取った。
彼はすぐにそれを身につけると、我先にとビルの外へ飛び出した。だが———
『自分だけ助かろうとした報いだ———受け取れ』
ドラえもんが笑う。
「カチッ」
古川がパラシュートを開く紐を引き抜いた。
ドラえもんがパラシュートをズタズタに引き裂いていたことも知らないで。
パラシュートは鈍い音をたて開いた。だが、パラシュートは布くず同然。
古川は、ビルの7階から垂直に落下した。
地面に激突—————内臓が破裂し、口から血を吐いて死んだ。
残り21名。そしてあと———7分。もう時間がない。
その時、のび太は異常に床が柔らかいのに気がついた。のび太がその床をはがすと———
パラシュートがあるではないか。数は—————20・・・・・・・。
もう選択の余地はない。あと4分。のび太は、一人パラシュートを取ると、逃げ出した。
他の者もそれを追う。一人——ここに残った。皆脱出した。
ビルから離れた。あと1分。逃げろ。遠くへ—————————
「5」
 
「4」
 
「3」
 
「2」
 
「1」
 
地面が揺れた。煙と血の混ざった臭いの風が吹く———
天へ昇る黒煙と共に、一人の命が消えて行く———
 
日は沈む。サバイバルタワー生存者20名。死者10名・・・
サバイバル終了。日は沈む・・・・・

7th war 小夜曲<セレナーデ>

薄暗い雲の中、飛行物体が飛んで行く・・・
「・・・゛P"゛O"゛L"゛I"゛C"゛E"・・・」
警察だ。ドラえもんのいたサバイバルタワーへ飛んで行く。
タワーは既に炎と煙の塊と化している。
 
〜サバイバルタワー周辺〜
 
ドラえもんが歩いていると、先程の警察が飛んで来た。
『貴様・・・犯罪組織GENOCIDE<ジェノサイド>の最高幹部・・・ドラえもんだな?』
『だったら?』
『逮捕する』
『ほぅ・・・』
そう言ってドラえもんはKILL-44を手にし、警官の額に銃口を当てた。警官は隙を突かれた。
『なっ・・・』
————のび太たちは゛POLICE"が気になり戻って来ていた。そこで彼らは見た———
人の頭が砕ける瞬間を。
血しぶきが飛んでドラえもんに当たる様を。
ドラえもんの楽しそうな表情<かお>を。
頭の無い———死体が倒れた。
ドラえもんは気がついた。最期の警察官に握られた——無線機を。
『ちっ・・・奴・・・仲間を呼びやがったな・・・』
そう言って無線機を踏み潰した。
『GENOCIDEの尻尾をつかまれてはまずいな・・・』
『六幹部の要請をするか・・・』
そう言ってドラえもんは暗い空の中を飛行機のようなスケボーに乗って何処かへ飛んで行った。

8th war 四重奏<カルテット>

その頃、未来警察・・・
『GENOCIDE壊滅のために、軍隊を要請する・・・』
時は7時、のび太たち・GENOCIDE・ドラえもん・未来警察・軍隊の四つの勢力が——激突する。
サバイバルタワーから離れた荒野。
のび太たちはこの荒涼の地で休息していた。見渡す限り——何もない————
だが、突然——————
『西の空から、何かが飛んでくる!』
黒い影がだんだん大きくなってくる。ドラえもんか——?
『違う。あれは———A,R,M,Y・・・軍隊だ。』
荒野の上空を幾つかの影が過ぎ———東の方へ向かって行った。
—未来警察はドラえもんの位置をサーチしていた。あの警官が放った。死ぬ間際に放った発信機———
『場所は—KI—4—2—7—Y—荒野の外れか。』
荒野——それはのび太のいる荒野のことだった。
『よし。まず威嚇に短距離ミサイルを射つか。』
『軍隊、第27ミサイル発射車両へ告ぐ。短距離ミサイル<R-30-MWC>発射用意!』
『発射!』
のび太たちは、東の空から上がる白い煙を見た。暗い空に上がる白い煙は、光のようにはっきり見えた。だが———
白い煙が、こっちへ向かって来る。
『なんだ!?』
『危ない!こっちへ来る!』
のび太たちは走って逃げようとした。
だが、ミサイルの起動はのび太たちから外れ、少し離れた場所に着弾——爆発した。
『何だ・・・?』
その頃、ドラえもんはどこでもドアによって、直撃を免れていた。だが、どこでもドアから通った爆風で、わずかな傷を負った。そのせいで発信機が壊れた。
『ちっ・・・』
すると、向こうから砂埃が上がっているのが見えた。双眼鏡で見ると———
『戦車・・・奴ら軍隊を呼びやがったな・・・ならこちらも武器総出で殲滅するか・・・』
そう言ってグレネードランチャーを用意した。
『戦争の始まりだ』
そう言ってニヤリと笑い、グレネードランチャーを発射した。
戦車の先頭軍団が爆発した。
「ブゥゥゥ・・・ン」
遠くから何かの音が聞こえる。
『おや・・・空軍のお出ましか。』
軍隊が司令を出した。
『火器空対地ミサイル発射許可を出す。』
「シュゥゥゥゥゥゥ————・・・」
空中で炎をばらまきながら、ミサイルが飛ぶ。
火の雨が降った。
『ふん。この程度。』
ドラえもんはグレネードランチャーを真上に向けた。
「ドゥゥン!!」
弾は真上のミサイルに命中。爆風が火の粉を一掃する。
軍隊の次の司令は————
『機銃掃射発射用意』
『了解』
・・・その頃のび太たちは、光のミサイルが何なのか確かめに行った。そこで見たのは———
ドラえもんVS軍隊の戦争だった。空軍の軍用機が銃を乱射していた。
『ヤバい・・・逃げるぞ・・・!』
しかし———機銃掃射の流れ弾が———一人の脳天をぶち抜いた。
また一人——仲間が減って行く。

9th war 夜想曲<ノクターン>

ドラえもんと軍隊の戦争が続いている。
そこを、闇の中を————
「バババババババババババババババババ」
ヘリコプターが飛んで来る。
『やっと来たか・・・六幹部第三席・・・ドラミ!!』
『届け物だ・・・KILL-44-M<マシンガン>——。とっととあの軍隊潰しちゃえば?』
『そうだな・・・だが楽しんで殺さねば面白くない。』
『そう・・・じゃ、とりあえず前列の兵士だけでも排除しとくね。』
そう言って、手榴弾を取り出した。
『バイバーイ』
兵士に直撃した。数人死んだ。
『空軍も邪魔ね・・・』
ロケットランチャーを手に取った。
『逝ってらっしゃい』
軍用機のエンジンへ光の煙が飛んでゆく。空中で爆発が起こる。
『俺の方は戦車を殲滅しておくか・・・』
早速ドラえもんはKILL-44-Mを手に、連射した。
その頃、軍司令部は、戦線を拡大するため、大量の兵器を用意していた。
その戦線には、まだのび太たちがいる。彼らを巻き込んで、戦争は酷なものになる。

10th war 五重奏<クインテット>

その頃、のび太たちは兵士の死体の上を歩いていた。軍隊の戦線拡大のせいで、逃げ場がなくなっていた。
のび太たちは死体から銃を取った。自分の身を守る為———闇の中のサバイバル。
空中で、軍用機の爆発が続く。
のび太は、サイレンサー‐KN‐30を手にとり、ドラえもんに照準を合わせた。
狙撃した。
———だが、当る直前にドラえもんはKILL‐44を放った。瞬間、銃弾と銃弾が空中で衝突した。
2発の弾丸が地面に落ちた。
『ほぅ・・・俺を狙うクズ共が軍隊の他にまだいたか・・・』
そう言いながらかぎ爪ロープを取り出した。
『俺を狙った過ちを仲間の血で償え。!』
かぎ爪ロープを投げた。
クラスメイトに刺さった。
ドラえもんがロープを引っ張った。
クラスメイトが上へ飛んだ。
『うわあぁあああぁぁあ!!』
その視界に高速で回転するヘリのローターがあった。
「ババババババババババババババババババババババババ」
——‐ドラミのヘリのローターに、頭から突っ込んだ。
「バババ・・・ガガガガガガガガ!!!」
ローターが奇怪な音を立てる。
肉片と血の雨が、ヘリコプターの風と共に、嵐となって降り注ぐ。
あと18人。
血でヘリコプターは赤くなった。
星の光で、赤は鈍く輝いていた。

11th war 夜明曲<オーバード>

長い沈黙が続いた。ヘリコプターから血が垂れた。
空が明るくなり始めた。血の赤が鮮明な輝きを持った。
長い沈黙を破り、ドラえもんがKILL‐44‐Mを連射した。
血の嵐で赤く染まった大地に、新たな赤が流れ込む。
荒野は爆撃による穴と、撃墜された軍用機の残骸、そして黒い煙で埋め尽くされた。
援軍に来た軍用機が、爆弾を投下していった。
だが———軍司令部は最終作戦を決行した。
『無差別飽和攻撃開始』
すると、軍用機は無差別にある限りの爆弾を投下した。
火の雨—血の嵐—最後に爆弾の雨が降った。
のび太たちもこの爆弾の雨に晒される。
轟音と共に、ドラえもんは軍用機に地対空ミサイルを発射した。だが、多勢に無勢、ドラえもんもドラミのヘリコプターも無傷ではすまなかった。
日が昇り始めた。黒ずんだ血はもう輝きを失っていた。
『ウザいな・・・』
ドラえもんは無線機をとった。
『六幹部第六席ミニドラ、最高幹部ドラえもんより、本部からの高火力中距離ミサイル発射の要請をする。』
『ドララ。』
———————GENOCIDE本部ミサイル発射装置——————
日が昇っていくと共に、ミサイルが白い煙を上げ昇っていく。
高火力中距離ミサイル戦地到着まで———あと1時間。
『ドララドラドラドララドラドララ。』
『そうか・・・着弾まで1時間か。分かったそれまでに撤退する。』
現在時刻8時40分。着弾予定時刻——9時40分。
その頃、のび太たちは、爆弾の雨の中を走り回っていた。
逃げ回る18の命・・・爆弾が一人を直撃した。1つの命が消えて行く。あと17人。
現在時刻9時00分ミサイルの事実を、彼らは知らない。
その頃、軍司令部のレーダーに、何かが向かってくるのが映った。
『何だこれは!?』
『正体不明<アンノーン>が時速2170kmで接近中です。!』
『詳細画像は?』
『現在衛星に軌道座標転送中。衛星の追尾システムが使用可能になるまで10分かかります!』
『そうか・・・出来るだけ早急に頼む。』
その間にも、ドラえもんはロケット砲を乱射しながら撤退を続ける。
のび太たちは逃げ惑う。
ドラえもんが攻撃を止めた。すると、4次元ポケットから何かの起動装置を取り出した。
『さて、軍隊には混乱してもらおうか・・・』
そして、そのスイッチを押した。現在9時05分。
その頃、軍司令部。
『正体不明<アンノーン>がレーダーから消えました!』
『消えた!?』
『ミサイルの軌道データも消えました!』
『何だと!?』
ドラえもんはニヤリと笑った。レーダーから忽然と姿を消すミサイル———
———————ステルス装甲———————
現在9時15分,地獄の協奏曲<コンチェルト>まで———あと22分。

12th war 協奏曲<コンチェルト>

砲弾、銃弾が飛び交う最前線、消えぬ血の臭いと共に、黒い煙が上がりゆく。
ドラえもんが時計を見た。
『9時25分・・・あと10分したら一気に逃げるか・・・』
のび太たちは逃げ惑う。15分後のここが炎に包まれることも知らないで。
刻一刻と時間が過ぎる。軍、未来警察も、この事実を知らない。
KI427Y地区の戦争は、9時40分をもって終結する————それを知るのはGENOCIDEだけであった。
9時35分。東の空にわずかに光る銀色の物体が見える。
『何だ?あれは・・・』
ドラえもんがどこでもドアを用意した。
『退くぞ。ドラミ。』
『了解。』
そういってドラえもんとドラミはどこかへ行った。
9時38分。
肉眼でミサイルが確認できるようになった。
『ヤバイ・・・逃げるぞ!!』
走った。
9時39分。
ミサイルの姿が段々大きくなる。
走る走る。
軍用機が地区から離れていく。兵隊がヘリに乗り込む。
もう逃げるしかない。
—————————————
            9時40分—————
————周りが明るくなった。
————熱い風が吹いた。
————飛ばされた。
————熱い地面の上に倒れこんだ。
『くっ・・・』
地響きは止まらない。
『・・・皆は・・・?』
のび太は数を数えた。
『1、2、3・・・』
『12、13、14・・・・・・』
『14人・・・』
『僕を入れて・・・15人・・・』
ドラえもんのミサイルは、2人の犠牲者を出してその使命を終えた。
KI427Y地区戦争、参加者GENOCIDE2名、のび太たち20名、軍隊4000名・・・・・・・・・・・・
生存者、GENOCIDE2名、のび太たち15名。軍隊約1000名。
死の協奏曲は約3000の命を奪って行った。
————GENOCIDE本部————
『ドラえもん、あの計画は順調に進んでいるな?』
幹事長が訊いた。
『滞りなく。のび太抹殺と同時に進行しています。』
『そうか・・・』
幹事長は真剣な顔つきになった。
『時空間弾道ミサイルを準備せよ。』
『了解・・・目的は?』
『時空間戦争を開始する。地獄の協奏曲の次に・・・戦慄の前奏曲<プレリュード>をお聞かせしよう・・・』

13th war 前奏曲<プレリュード>

スネ夫は、もう嫌になっていた。ここから逃げ出したかった。だが、逃げる道はない———
何故なら逃げるべきところはこの世界にないのだから。
時間を超えて逃げることなど不可能———————…そのとき、スネ夫は、閃いた。
『そうか!タイムマシンだ!』
だが、そのタイムマシンも今どこにあるか分からない。ましてや今いるところが西暦何年かすら分からない。廃墟———地面は焦土と化している。こんなことろで逃げ場などという考えは、所詮空虚な妄想に過ぎなかった。
だが、スネ夫は希望を捨てなかった。スネ夫はもう一度——ここへ飛ばされてきた場所へ、のび太たちと共に行った。皆、ここから逃げることを望んでいる誰一人その意見に反対する者はいなかった。
…やはり何もない。
ただしずかの死体が残酷を誇示しているだけだった。
何もできない哀しさが、彼らを締め付ける。
その頃、GENOCIDEは、時空間誘導爆弾を用意していた。
六幹部第一席、ドラ・ザ・キッドはそれの目標座標を合わせていた。
『えーと・・・目標は2時間後ののび太達の後方5m…っと…』
設定すると爆弾が消えた。
『HEY!2時間後に死の前奏曲のスタートか!』
時空間戦争の前奏曲が2時間後に始まることを、彼らは知らない…
のび太たちは休んでいた。15人———4〜5mの列になって。
昨日の夜は酷いものだった。眠ることもできず———仲間が次々死んで行くのだから…。
記憶には血と轟音と光しか残っていない。
久々の休息——だが2時間後の地獄を想像する者は誰もいなかった。
今狙う者は誰もいない———安心して眠る者も多かった。だが————
————運命の2時間後————
突如眠りは轟音と爆風と熱によって妨げられた。
それまで音はしなかったなのに———
空間が爆発した。
一人が直撃を喰らった。
————あと14人。
のび太たちもわけが分からなかった。
突然何もない空間が爆風を産んだ…?
一人の人間を生贄に、前奏曲は聖譚曲<オラトリオ>に変わる。

14th war 聖譚曲<オラトリオ>

また一人———休む暇も与えられず、のび太たちは歩き続ける。
その様子を、GENOCIDEのレーダーで監視していたドラえもん。
『まずいな…幹部第四席…ドラパンの要塞に向かっている…あいつが奴等を殺しては、俺がのび太を抹殺<イレイズ>する楽しみが無くなってしまう…それに————もし間違えて全滅でもさせれば————…例の計画が水の泡だ…』
ドラえもんはドラパンに連絡をとった。
『最高幹部ドラえもんだ。ドラパン、14人の餓鬼共がそっちへ向かっている。数人程度なら殺っていいが、のび太は殺すな。幹事長直々の計画のプロジェクトの下に抹殺するからな。あと———
くれぐれも計画を忘れるなよ。』
『わかった…ならば奴らに…友情の脆さと儚さを教えてやる…』
———彼らは妙な建物を見つけた。この荒野に土が盛り上がって造られてた入口があった。
『何だこれは?』
のび太たちは安全な場所を求めて入っていった。そこが——死の修羅場になるとも知らずに。
 
——ドラパンの要塞1F——
 
彼らはまだ、ここがGENOCIDEと深く関わりのある場所だとは知らない。この建物の地図が壁に貼ってある。

要塞地図

『あ…気密室…ここなら安全そうだ。ここは何かの研究施設らしい。』
『どこにある?』
スネ夫が訊いた。
『B3F…先が妙に長いね。』
『とりあえず廊下の先の階段を下りればいいらしい。』
そう言ってのび太と13人が続く。
暗い要塞の先にあるものは、何もないのに———
 
———ドラパンの要塞B1F———
 
ここにも地図があった

GENOCIDE要塞地図

『GENOCIDE…要塞…?』
その瞬間、背後の壁が————
「ガシャァアアン」
閉まった。
『な…戻れない!?』
すると、どこからともなく、
『生きたければB4Fまで来い…何人生き残れるかな?』
奇妙な声が響く。
『……!!』
体が震えた。
『…とりあえずB2Fへの階段を探そう…話はそれからだ。』
ところが、B2Fへの階段が見つからない。扉は2つある。
のび太が片方の扉に手をのばした。開かない。
『鍵が掛かってる。』
のび太はもう一方の扉に手をのばした。
『開いた…』
階段のない、行き止まりの部屋だった。
14人全員が部屋に入った。
ドラパンはそれを見計らってスイッチを押した。
扉が閉まった。
『なんだ!!?』
すると、部屋が突然暗くなり、何も見えなくなった。
『さて…秘密道具゛コピー人間"の出番か…』
そう言って笑った。
部屋の明かりがついた。
だが———一体何が起きたのか、目の前に自分が———自分が2人に増えている。
そっくりだ。もちろん、他の人にはどちらが本物かわからない。
『こいつが偽者だ!』
と言うと、
『お前こそ偽者だ!』
と返ってくる。
『クク…この偽者——`コピー人間′は俺の意のままに操れる。仲間に裏切られる哀しさをとくと味わえ…ククク』
ドラパンがまた笑った。
14人の`仲間′は、28人の`敵′へと変わった。

15th war 不協和音<ディソナンス>

部屋の中は騒然となった。
そんな中、一人があることに気づいた。
『箱がある。』
中を開くと、28の“ナイフ”と、一つの鍵があった。』
『自分の身は…自分で守るっ!…。』
そうして、各自ナイフを取った。
部屋の扉が開いている。
部屋を出て、鍵で扉を開けた。
開いた。
階段があった。
『これで下に降りれるな』
と一人が肩を叩いた。
肩を叩かれた方は、顔色が悪くなり出した.
『どうした?』
スネ夫が訊いた。
肩から——血が流れ落ちる。服を血で染め、倒れた。——丁度ナイフの刃渡り程の刺し傷があった。
『てめぇ!!』
スネ夫がそいつにナイフを突き立てた。
「ザクッ」
刺した。
だが——血は流れなかった。
消えた。
人間は26人。仲間はあと13人。
『そんな…少しでも仲間を信用したらダメなのか。』
スネ夫が気づいた。
『“もう一人の殺された方”は偽者だ。』
ナイフを刺した。
消えた。
…誰一人信用してはならない———孤独な闘いが始まった。
悲しむ暇もない。
のび太たちは階段を降りていった。
 
————ドラパンの要塞B2F————
 
細い通路を出た。高い壁がある。誰かを踏み台にして登ればいけそうだ。
2人で“協力”すれば進める———即ち、殺されるかもしれない奴と協力しなければならない———
協力しなければ脱出はできない。
それぞれが勘で2人組んだ。
恐る恐る進んでいく。
仲間———信じ合った仲間に殺されるかもしれないという恐怖。
その恐怖が、現実の物となる———
壁に血が飛び散った。
血が流れて赤い線を描いた。
残り12人———
1人死んで残りは全て通過した。
偽者——偽者と分かった者は消えた。人間はあと22人。
通路を通り抜けた。
広い部屋に出た。
上にドラパンが立っていた。

16th war 幻想曲<ファンタジア>

『死の抽選のスタートだ!!』
そう言って偽者が分かるスコープを外し、加粒子砲を構えた。
『偽者もセットで3人消えな!』
加粒子砲を1発射った。
白い閃光が放たれたと同時に、1人が光となって消えた。
『はずれか…』
次の弾を装填した。
射った。
また1人、光となって消える。
『またはずれ…』
次の弾を装填した。
『ラスト!!!死ね!!』
白い閃光共に赤い花火が爆発した。
『Hooo…当たり。』
高速でスピンする弾丸は目を貫通して後頭部から出ていた。
血と脳漿が宙を舞う。
脳片が、骨片が赤く染まる。
あと—————11人。
飛び散る血と肉片の幻想曲。
あまりに残酷な幻想曲は、一人の死を持って終幕する。

17th war 組曲<スウィート>

血で染まった鉄格子が開く。
B3Fへの階段だ。
血の雫が、階段を赤く、紅の階段へと変えている。
彼らは下りた。紅の階段を。生きる希望を求めて。空虚な“仲間”と共に。
 
————ドラパンの要塞B3F————
 
十字路に分かれた通路に出た。
のび太が扉を調べると、2つが鍵をかけられていた。気密室と——B4Fへ通じる部屋だ。
鍵のかけられていない部屋——1つは、厳重なロックのかかった———司令室のようだ。
ここにはいけそうもない。
もう一つの部屋——のび太たちは扉を開けた。
彼らは目の前の光景に息をのんだ。
幅10cm、長さ10m程の床——そこから落ちると——4m程の深さに、針地獄が待っている。
その先に————何かが————カードのようなものが置いてある。
恐る恐る手をつないで行くことにした。
落ちる恐怖と裏切られる恐怖を胸に。
よろけながら、少しずつ、進んでいく。
少しずつ、少しずつ。
10mの橋を渡りきった。
カードキーを手に入れた。
それを向こう側に投げた。
ここまでは何の異常もない。
あとは帰るだけ———途中まで、何も起こらなかった。
全員がホッとした表情を浮かべた。
だが—————そのとき————
「ドンッ」
————前から4番目の———スネ夫が、3人を突き落とした。
安心が戦慄へと変貌した。
落下した者の中、2人は光となって消えた。
「ポタッポタッ・・・」
一人は、針地獄を紅に染めた。
突き落とした張本人——スネ夫も消えた。偽者だ。
地獄に堕ちた死体は、底の暗さで黒く見えた。
カードキーを手に、“10人の仲間”と共に進む。
部屋を出た。もう血や死体に慣れたのか、顔色を悪くする者はいなかった。
カードキー…B4Fへと続く部屋の鍵ではない。
気密室…そこの鍵だ。
カードキーを差し込んだ。
開いた。
中には——何もない部屋だった。
探している鍵も見つからない。
『何もない・・・・・・?』
そう言ったそのときだった。上から2m四方の立方体のブロックが落ちて来た。
その下には2人の人間が———
のび太たちは、下から血が流れないのを祈った。
空しく————
「ビチャッ」
その音と共に、のび太たちの足下に血が飛び散った。
一人は死んだ。ブロックに潰されて。
ブロックの外から見える伸びた片手は、蘇ることのない命を象徴していた。
一人は光となって消えた。死んだ“仲間”は一人—あと9人。
上から何かが落ちて来た。
鍵だ。
鍵が落ちて、地の池に中に落ちた。
彼らは気密室を出た。
血の足跡が、B4Fへの階段へと向かう。
鍵を差し込んだ。
開いた。
階段があった。
それぞれ、靴から血を滴らせながら地下に向かった。
 
————ドラパンの要塞B4F————
 
彼ら全員が階段を下り終った。
目の前に立っていたのは———
ドラパンだった。
彼は叫んだ。
『“仲間”などという——空虚な存在、儚さを、身をもって知れ。』
そう言うと、彼は偽者コピー人間を全て消した。
これから何かが———始まる。

18th war 神曲<ディビーナコメディア>

1人がナイフを手にとった。
ドラパンに向かっていった。
「ズドォンッ!!」
のび太たちが止める暇もなく、彼はドラパンの加粒子砲に撃ち抜かれた。
『無駄だ…俺に立てつこうなんざ、二世紀早ェ…』
そう言うと、火炎放射器を手にとり、死体を焼き払った。
死体が、熱硬直を起こすまでに。
ドラパンが死体を踏んだ。
灰が風にのり旅立つ。
あと8人。
ドラパンは言った。
『貴様ら…ナイフは持っているな?』
『・・・・・・・・』
沈黙が流れた。
『あと8人で———ナイフを持って殺し合え。1人分の死体を、この穴の中に入れろ。センサーが反応してエレベーターが作動する。』
そう言うと、どこでもドアで去っていった。
残された彼らは、ナイフを手にとった。
しばらくの間、沈黙が流れた。
「ザッ」
スネ夫が沈黙を破った。
背後から、わき腹を一突きにした。
刺された方は、金魚みたいに口をパクパクしながら崩れ落ちた。
スネ夫の袖は血で染まっていた。
全員が何も話さない。
スネ夫は一人死体を穴に落とした。
ドンという鈍い音がした。
電子音の後に、エレベーターが作動した。
“7人の仲間”がそこに乗った。
エレベーターが動き出した。
誰も喋ろうとする者はいなかった。
ただ、エレベーターの作動音とスネ夫の手から落ちる血の雫の音が聞こえるだけだった。
1Fに戻った。外に出た。
彼らはひさしぶりに空気を吸った。
再び彼らは歩き始めた。
あてもなく。

19th war 行進曲<マーチ>

———GENOCIDE本部———
 
幹部のドラミが訊いた。
『最近“殺し”の愉しみがないね・・・奴ら、あと7人でしょ?きりがいいから、2人程度殺していい?』
ドラえもんが答えた。
『そうだな…』
間隔を置いて、また答えた。
『奴らが逃げる気力も失せるような殺り方で・・・殺れ。』
『了解。』
ドラミは行った。奴らの気力を失わせるために。自らが“殺し”を愉しむために。
ドラ・ザ・キッドはその様子を見ていた。彼は何かを考えていた。
その頃、のび太たち。
この世界に安全な場所などない——そう、彼らは悟っていた。
生き残れ—仲間が次々消えていく中での極限のサバイバル。
7人が歩く意味すらない。
だが、彼らは歩きつづける。生ある限り———。
靴は、もう血で黒ずんでいた。
ナイフを持ったドラミが、空飛ぶスケボーのような物に乗って、彼らが歩く様子を見ていた。
『瞬殺じゃ面白くない。苦しみ喘ぐ姿を見て血の幻想曲を聞かなくちゃねぇ・・・』
そう言って、猛スピードで彼らに向かっていった。
音もなく。
「グサッ」『ぐあっ』という音がした。後ろから強い風が吹いた。
『何だ!?』
彼らは後ろを見た。血の跡が、残っていただけだった。そして———人間が、一人減っていた。
・・・彼らは、サバイバルタワー周辺の廃墟に来ていた。
サバイバルタワーまだ黒煙を空に吹き上げている。
地面を見ると、飛び散ったビルの破片の上から、血で矢印が書いてあった。
どうやらタワー爆破後に書かれたもののようだ・・・
不安がよぎった。
彼らは矢印の方向へと走っていた。
血文字に向かう者たち。
何があるかは全員が予想できた。そして、見たくもない。
だが、この世界に拠り所の無い6人は、進むしか選択できない。
矢印の先にはビルがあった。
そしてそこに————赤い十字架があった。
ビルの外壁に、開きにされて磔にされたクラスメイトが鮮やかな真紅を放っていた。
ついにあと6人になった。
まるで人体実験のように開きにされたクラスメイト———内臓が、まだ水々しかった。
赤く長い十字架———流れ落ちる血。飛び散った血。
逃げることの愚かさ———彼らは悟った。
『もう逃げられない』と。

20th war 3人目の死者

ドラ・ザ・キッドは、タイムマシンを呼び出した。
『退路を塞げば更なる絶望を味あわせることができる・・・』
そう言って、タイムマシンの裏に発信機を取り付けた。
そして、ドラえもんに言った。
『時空間弾道ミサイルの使用許可を願いたい。』
ドラえもんは即座に答えた。
『承知した。』
時空間弾道ミサイル(亜空間弾道ミサイル)———タイムマシンのように、亜空間を飛ばすことができるミサイル。
ドラ・ザ・キッドはミニドラに発射を要請した。
しずかの死体が佇む、この場所に戻ってきたのび太たち。
もうしずかの死体は腐敗が始まっていた。
スネ夫は、一つ希望を持っていた。
『タイムマシンで過去に戻れれば逃げられるのではないか』
そう思っていた。
儚い思いと、現実。
タイムマシンなど勿論ない。
ところが、突然、空間が開いた。
スネ夫の目の前で、タイムマシンと共に。
『あっ!!』
スネ夫は真っ先に乗り込んだ。
愚かな判断だ。後の惨劇を、スネ夫を除く全員が予想していた。
もはや逃げる以外のことは頭にない。
スネ夫はタイムマシンに乗って発進した。
『あの野郎・・・』
不安と絶望がよぎる。
だが———
「ギュオオオオオオオオ・・・・」
何かの音がする。段々大きくなる。
『何だ!?』
スネ夫が辺りを見回した。———そして気づいた。
前から———・・・
「ギュオオオオオオオオオオ!!!」
激しく回る回転翼、タイムマシンをロックオンした赤外線センサー。
亜空間に死の予告を告げる轟音が響く。
ミサイルが向かってくる————
『うわ・・・うわぁああぁああぁぁあああ!!!』
その瞬間、のび太は彼の狂った叫びと爆発音を聞いた。
『ドゴォオオオオオオ・・・ゴォオオオ・・・』
遥か遠くの亜空間に、青白い光が放たれた。
彼は燃え盛るタイムマシンの残骸と共に亜空間の狭間へと堕ちていった。
そして、また一人人は減り、残りは5人となる。
穴の空いた空間から、熱い風とわずかな電気放電が吹き出した。
黒煙を上げながら、爆砕されたスネ夫とタイムマシンが堕ちていく。
これは同時に、ただ一つの退路を塞がれ、彼らにはもう一つの逃げる道——希望さえなくなった。
一点の光すら見えぬ真の絶望と恐怖。
彼らはただ、立ちすくむ。
“のび太の友達”は、これでいなくなった。
独り、佇む。
その頃、GENOCIDE本部・・・。
ドラえもんが、ミニドラに訊いた。
『例のプロジェクト・・・進行しているか?』
ミニドラは即座に答えた。
『ドララドラドラドラララドラドララドラ。』
『そうか・・・』
幹部第二席ドラリーニョは影でそれを聞いていた。
『・・・完成まであと少しか・・・』
ドラリーニョはどこかへ去りながら言った。
『進入<クラック>に成功すれば・・・完成は時間の問題だ。』
そう言って、火のついていない爆弾を蹴り上げた。

21th war 鎮魂歌<レクイエム>

のび太たちは、もう動く気力すら失せていた。
命を永らえるため——逃げていたことの意味すら、なかったのかもしれない。
ただ、死を待つ。
『…』
『…みんな…死んだ。…殺された…。』
31人の死が走馬灯のように浮かんだ。
残った5人は、何を考えていたのだろう。
逃げる方法はない。
自らを護る方法もない。
今日明日で死ぬのは間違いない。
目に見える死の時間制限<タイムリミット>——気が狂いそうだ。
今日もまた、日が沈む。辺りが暗くなり始めた。
彼らは眠りについた。
起きたときに、自分が生きていることを祈りながら。
・・・・・
・・・・・
日の光が差し込んだ。
のび太は起きた。
『えっ・・・!?』
のび太は驚いて、声も出なかった。
————周りに、誰もいなくなっていた。
のび太、一人。
真の孤独。
のび太は立ち上がって歩き始めた。
みんなを探すために。
だが——孤独という現実。
そして廃墟となったビル群に入って、彼は知った。
多くとも、今生きているのは4人だと。
ビルの柱に、大型のナイフで頭を真っ二つにされ、ビルにぶら下げられいるクラスメイトを見た。
血がしたたる。
のび太が死体に触れた。
まだ、生温かかった。
死んでまだ時間は経っていない。
『こいつが最初に殺されたなら、まだみんな生きているかもしれない。』
という儚い想い。
みんなは—何処へいったのか。

22th war 狂想曲<カブリッチョ>

みんなを探すどころか、死体を発見してしまったのび太。
孤独は、さらに深まる。
みんなは何処へいったのか。
その頃、GENOCIDE。
『アメリカ軍軍基地の制御コンピュータに侵入成功…あとは核弾頭の制御スイッチのコントロールを奪うだけだ…。』
ドラミの顔に笑みが浮かんだ。
その横で幹事長がドラミに訊いた。
『のび太の仲間…4人程生け捕りにして一人殺したそうだが…何故そんなことを?』
ドラミが冷淡な声で答えた。
『おもちゃで遊んでるだけよ…』
『残りの3人は?』
『一人はドラリーニョのおもちゃ…残りは連れて来る途中に逃げ出した…でもおもちゃは2つで十分だと思ったから追わなかった。』
そこで会話は途切れた。
しばらくしてドラリーニョがやってきた。
『おもちゃ遊びは終わったの?』
ドラミが訊いた。
『死のPKはキーパーの死亡により終了…』
そう答えた。
そう言って、ダストシュートに焼け焦げた死体を放り投げた。
遠くの方で「ドサッ」という音が聞こえた。
あと3人になった。
『…で?時空間戦争の方は…?』
幹事長はドラミに顔を向けた。
『時空間通過式手榴弾の用意はできているけど・・・』
幹事長は返事をせずに、顔を前に向けた。
『そういえば…最近雨降ってないね…』
ドラミが上を向いた。
『のび太共は確か…サバイバルタワー周辺にいたはず——。』
そう言って、例の手榴弾を用意した。
『何をする気だ?』
幹事長が訊くと、
『雨。』
とだけ答えた。
幹事長は首を傾げた。
その頃、のび太たちは未だに仲間と合流できずにいた。
そして、雲の上に大きな穴が空いた。半径1km程の、大きな穴だ。
そして——————————————
雨が降り出した。
手榴弾の——
『うわぁああぁ!?』
降り注ぐ。
灰色の街に。
「ヒュ———…ドゴォォォォン…ヒュ———…ドゴォォォン…」
街の中にバラバラにいた3人は、
物陰、ビルの中へ逃げ込む。
「ドゴォォォン…ドゴォドゴォォォォン…」
地響きは止まる様子を見せない。
そしてさらに———
『4倍』
ドラミが量を増やした。
「ドゴゴゴゴゴゴゴゴォゴゴゴゴゴゴ…」
ビルの入口から爆風が入り込む。
惨劇はそれで終わらない。
「ギギギギ……ギィィィ……」
ビルが傾き始めた。
『まずい…逃げろ!!』
入口に向かった。
しかし————————
『うわぁああぁああ!!?』
手榴弾で入口を塞がれた。
ビルが倒れる。
そして——
「ドゴッドゴッドゴォォォォォォォォ…」
その轟音と同時に、手榴弾の雨が止んだ。
穴が閉じていく。
この街の生存者——2名。
物陰から出てくると、二人は鉢合せした。
のび太は即座に聞いた。
『みんなは!?』
『………』
クラスメイトは、少し間を置いた。それから答えた。
『一人はその場で殺された。3人のうち2人、僕を含めて2人はうまく逃げられた。一人は…』
そこで言葉が詰まった。
『じゃあ、逃げた2人は!?もう一人は!?』
『さっきの手榴弾でビルが倒れて、その——』
その先の言葉は、言わなくても分かっていた。
おそらく、今生きているのは2人だろう、そう思った。
倒壊したビルの破片が足下に散らばる。
巻き上げられた土煙を、風が拭い去る。
徐々に姿を表わす、嵐の後の廃墟——
最初36人いた仲間はついに2人になった。
孤独。
絶望。
静寂。
あと一人。殺されたら、もう、誰もいない。
極限のサバイバルも終わりに近づいている。
GENOCIDEのプロジェクトと同時に。
そしてまた、のび太は歩き出す。
そのころ、GENOCIDE。
六幹部第五席マタドーラが、パソコンに向かって‘もう一つの侵入’を試みていた。

23th war 独奏曲<ソロ>

のび太は、荒野を越えて草原に来ていた。
——ここだけは、青空が広がっている。
青空を、久しぶりに見た気がする。
少なくとも、‘絶望’は和らいだだろう。
草原の丘の上に、ドラえもんが立っていた。
ドラえもんは表情を変えずに鋭いブーメランを放り投げた。首へ。
『!!』
草が微風にさらさらと舞う。
青く輝く草むらに、吹き出した血が。
雨の後の、雫のように、
輝く。
ドラえもんは、笑うそぶりもせずに、冷淡な超えで言った。
『逝け』
そう言って立ち去っていった。
何を考えているのだろう。
横に佇む首なし死体だけが、変わらぬ殺意を誇示していた。
GENOCIDE本部。
幹事長——————野比 せわし、彼はマタドーラに訊いた。
『ロシア軍の核制御コンピュータに侵入できたか。』
『ええ…成功しました。』
『これで…今回のプロジェクトは完了だ。』
そう言って立ち上がると、核の用意を始めた。

24th war 交響曲<シンフォニー>

『アメリカ軍のアトミック…
ロシア軍のハイドロジェン…
それぞれの目標をのび太に設定し、双方の爆発により殺す…』
ここで幹事長が気づいた。
『どこちらにしろ爆発の及ぶ地域から奴は出られないが…
双方の爆発が混ざる辺りにのび太を置いておきたい…発射した後のコントロールは効かんからな…』
そう言って、モニターを見た。
のび太が草原の奥へ歩いていた。
『ちょこまか動き回られるのは厄介だ。』
そう言うとドラえもんが
『お任せを…』
と言って去っていった。
……そして。
のび太の前に現れた。
『ドラえもん…?』
ドラえもんがサングラスを外した。
のび太は、ドラえもんが元に戻ったのを期待し、歩み寄った。
ドラえもんは、即座にKILL-44-Mを手にし、
「ダダダダダダダダダダ…」
のび太の両足を撃った。
血が吹き出した。
『ぐあ…っ…』
弱々しい声が、青空に響く。
ドラえもんがGENOCIDEに戻ってきた。
『のび太の倒れている正確な位置…JN-8-8-O-Nだ。』
『分かった。』
そう言って、侵入したコンピュータから核制御コンピュータのスイッチを押した。
『それはのび太抹殺同時に、双方の軍をあの国と衝突させる囮———』
せわしが口を漏らした。
アメリカの核も。
ロシアの核も。
あと15分でのび太のもとに到達する———。

25th war 終曲<フィナーレ>

ドラえもんは再び草原に来た。
のび太はかろうじて意識があった。
『あと10分程度で貴様の命は終曲を迎える。覚悟しておけ。』
それだけ言って去っていった。
「ゴォォォォォォ…」
どこかで小さな音が聞こえる。
何かが向かってくる…?
音が段々大きくなる。
白い煙が見える。
二つ————。
東と西と、二つの方向から。
のび太の背中を。
音と—————
煙と——————
青空と——————
核が————————
飛んでいく。
あと3分。
遠くで鳴る地響きの様な音は、
突き刺さる針の様に高い音に変わった。
着弾まであと1分。
のび太は目を閉じた。
地震に近い、地響きと共に、
あと0秒。
着弾。

26th war 未来の世界の殺人ロボット

蒼い火球と紅い火球が、世界を彩った。
草は燃え、一瞬にして灰となり、
山は消え、一瞬にして土に還り、
海は荒れ、一瞬にして波が押し寄せ、
空は青から灰色の仄暗い雲が覆った。
天高く上がる雲———全てを破壊する爆風。
大地が燃えた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ドラえもんが笑った。
‘コロシノタノシミ’を味わって。
——跡形もないのび太の上を、灰色の空が飛んでいく。

エピローグ

…あれからどれくらいの時間が経っただろう。
…目を開けた。
自分は生きているのか…?ここはあの世なのか…?
目の前に良心の頃のドラえもんが立っていた。
『復元液とタイムふろしきで元に戻した。ジャイアンとしずかも、出来杉も無事だ。スネ夫は…』
ここで言葉が詰まった。
スネ夫は亜空間に堕ちた。もう元に戻せない…。
『もう一度未来へ行き、GENOCIDEを、あの”ドラえもん”を倒しに行く。のび太くん…君にその勇気はあるか?』
ドラえもんは真剣な顔つきで言った。
『うん。』

番外編

プロローグ

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「何だったんだろう・・・今のは。」
「突然・・・亜空間みたいな・・・世界に引きずられてここに・・・」
彼は出来杉。ドラえもんが34人のサバイバルメンバーを連れて来る際、亜空間のずれに引き込まれ、みんなとはぐれ、
独り。
時間にもずれが生じ、今は夕方だった。
彼ら・・・のびたたちが、サバイバルタワーを脱出した頃のことだった。
出来杉は、西の方角に煙が立っているのを見た。
「なんだ・・・!?行ってみよう。」
惨劇と地獄は、ここから始まる。

1st ADVENTURE 紅の傷跡

目の前に横たわる、4つの死体。何かに、誰かに切り刻まれていた。
そして——煙立ち血のにおいのする残骸。
きっとたくさんの人が死んでいる。
誰がやったんだろう——
不安——孤独——よぎる。
もう日は完全に沈んでいた。
闇の中、再び彼を不安の底に陥れる音が聞こえる。
「ドキューーーーン・・・ドサッ・・・」
誰かが撃たれ、倒れた音が聞こえた。
きっとまた誰か死んだ。
でも——そこに誰かいる。
出来杉は、それが敵であれ味方であれ、孤独を和らげる存在であればよかった。
それが敵であれ味方であれ——
音のした方角に、彼は走っていった。
月が昇り始めた。
孤独を象徴するように、ひっそりと。

2nd ADVENTURE 現実と絶望の狭間に

出来杉が音のした方角で見たもの——惨劇の後だった。
警察のような服装をした人間が、死んでいた。
粉々に砕けた頭蓋骨が、そこから流れる血が、まだ、温かかった。
怖くなった出来杉は、そこから離れ、いつのまにかサバイバルタワー跡に戻ってきていた。
そこで彼は、何かが動いているのを見た。
小さい。
「何だ・・・?」
今は夜。暗くてよく見えない。
近づこうとした、その時だった。
「ガシャッ」
という音と同時に、それが自分に銃を向けるミニドラだと分かった。
ミニドラは引き金を引こうとした。
出来杉は即座に反応し、しゃがみこんだ。
「キューーーーーーン・・・」
50cm程上を、銃弾が通過した。
「ガシャッ」
ミニドラが次の弾を装填した。
出来杉は目をつぶった。
その時、
「やめといたら?」
の声と共に、どこでもドアでドラミがやってきた。
「ドララ。」
ミニドラがドラミの方を向いた。
「殺しの玩具(おもちゃ)が欲しかったらのびたの仲間共を連れて来ればいいじゃない・・・」
「ま、ほとんど最高幹部・・・ドラえもんのターゲットだろうけど。」
そう言うと、2人ともどこでもドアでどこかへ去っていってしまった。
また、彼は1人になった。
月が高く昇っている。出来杉は寝ることにした。
言い知れぬ、不安の中で。

3rd ADVENTURE 奏鳴曲<ソナタ>

朝になった。出来杉はまた、歩き始めた。
そのころ、GENOCIDEのレーダー。
出来杉と、のびたたちが映っていた。
「まずいな・・・のびたたちのいる方角に向かってる・・・」
幹事長はつぶやいた。
「どうするの?」
ドラミが訊いた。
「いい加減・・・殺しとくか・・・」
「分かった。」
ドラミが立ち上がった。
出来杉は、遠くで奇妙な音がしているのを聞いた。
何か、虫みたいな、ブゥゥゥンという音。
だが、出来杉は気に留めなかった。
のびたたちを捜す——それだけを念頭に入れて。
——だがしかし、この音が出来杉の命を奪う音と、彼は知らない。
上空で、大型のナイフを持ったドラミが、構えていた。
スケボーのような乗り物に乗って。
そして、音もなく
「フッ・・・」
ナイフが、出来杉の頭に紅の三日月を描いた。
出来杉の頭が斜めに半分に切れて、ずり落ちた。
——決して知られることのないサバイバル参加者の命の灯火が消えた。
サイレント・キリング——音もなく、ひっそりとドラミは標的を倒した。

エピローグ

——復元液とタイムふろしきによって、出来杉はまた、命を取り戻した。
スネ夫を除いた、仲間もいた。
出来杉は、あの惨劇を夢と思った。
後に——彼はそれが夢でないと思い知る。     END

ページ情報

作成日時
2003/11/25
最終更新日時
2005/09/07
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