2011年05月

サイト運営者の日々の日記。2011年05月。

21日

現実的な恒星間戦争

現実的な方法で恒星間を行き来すると仮定したとき、恒星間戦争がどうなるかについて考えていたネタの適当まとめ。

先ず、非科学的なワープや空間跳躍を考えず、理論上実現がありうるものとして反物質を利用した恒星間航行を仮定。他の星系への侵攻を考えてみる。侵攻に用いる船は反物質を燃料として加速し、星系に入る際には減速しなければいけない。例えば、光速の50%で航行する船は1G加速で加速減速に195日を要し、20%で航行する船は72日を要する。反物質の推進光は減速方向に対して放射されるため、星系に対して減速アプローチをかける場合、減速に要する期間だけ相手から察知される可能性がある。光速の5割からのアプローチならば195日前から減速炎が観測される。

できうる限り相手に準備期間を与えずに攻撃を実行するならば、減速炎よりも前に攻撃をかけるしかない。巡航中に予め攻撃用の弾頭を発射しておき、減速に要する日数分だけ先行させる。こうすれば攻撃を開始した後から減速噴射が開始でき、相手に攻撃を事前に察知される可能性は小さくなる。

攻撃方法が質量弾頭であるなら、攻撃は減速より前に行うほうが威力面でも都合が良い。巡航速度は光速の何%オーダーであるため運動エネルギー兵器に使うならそのままで十分な威力が発揮でき、弾頭の質量分の減速が不要になって燃料の節約にもなる。恒星船を一度減速させてから星系内の戦闘時に再び弾頭を加速して発射するよりも遥かに手間がかからないのは自明だろう。

この考え方で星系攻撃のスタイルを想定すると、限られた反物質でより多くの攻撃資源を投入するために必要な要素がわかる。1.攻撃用の弾頭群は減速せずに加速させたまま星系に撃ち込む。2.侵攻用の宇宙船は最小限の質量として可能な限り弾頭に質量をつぎ込む。3.威力さえ出せる速度なら弾頭の速度は低いほど多くの質量を投入できる。侵攻側は燃料を消費して星を渡るため搭載できる質量に限度があり、防衛側では星系内の資源を無尽蔵に消費できることを考えても、攻撃兵器は多いほうが良いといえる。

結論として導き出されるのは、侵攻用の宇宙船はほとんど不必要であり、減速なしで星系を攻撃する質量弾頭群が侵攻兵器の質量のほとんどを占めることだ。減速に燃料を使う以上、攻撃に使用する兵器は減速せずにかつ低速で突入させるほど大量に投入できる。手順としては、先ず侵攻側の星系から光速の数パーセント程度の弾頭群を攻撃の数百年前に発射し、後から軽量の侵攻宇宙船を発進させる方針になる。

究極的には、侵攻宇宙船は自己複製マシンとして本当に最小限の質量にしても良い。侵攻側は投入質量が大きく制限されるため物量では防衛側に大きく負ける。弾頭群が減速せずに星系を長時間爆撃している間に、カイパーベルト天体に自己複製マシンを着陸させ、星系内用の低速な攻撃兵器を量産する戦術が考えられる。

一方防衛側はどれだけ速く攻撃を察知できるかが重要であるため、星系全域に観測衛星を浮かべる手段が考えられる。物量で劣る攻撃側が自己複製マシンを投入してくるとわかっていれば、いち早く検出して破壊しなければいけない。逆に、攻撃側にとっては星系内での戦力生産が鍵であり、防衛側の観測網の破壊が重要になる。結局、防衛側の目を奪うかどうかの問題であることがわかる。考察でわかる最大の事実は、少なくとも反物質などの燃料を使った推進方式では、フィクションであるような巨大な宇宙船は質量の無駄遣いにしかならないであろうことだ。

HugeInt進捗

speed.jsが完成を見たHugeInt Ver.0.6 alpha7公開。改良したニュートン法による平方根の関数を実装したものの、現時点では従来のものより低速で使用されていない。一時的に必要精度の数倍の桁数を計算している乗算群の高速化が鍵。

ページ情報

作成日時
2011/05/21
最終更新日時
2011/05/21
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