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「食前絶後!!」

 「オーフェン」のまだ持っていない巻を求めて古書店へ行った。するとどうでしょう、ろくごまるにの「食前絶後!!」があるではないか。
 おりしも下巻発売を知った矢先である。喜び勇んでさっそく購入した。図書館に置いてあったのでン年前にすでに読んでいるのだが、やはり手元に置いておきたいもの。ちなみにタイトルは「くうぜんぜつご」と読むなり。
 北浜雄一は放課後の教室で幼なじみの立野徳湖から愛の告白を受けた。しかし、彼女から差し出された弁当はただの弁当ではなかったのだ――
 と、一見してラブコメのよーな導入だが、奇怪な設定と珍妙な文体が描き出す「なんじゃこりゃ」な物語、そして締めるところはきりりと締めるシリアスさに読者は脱帽するしかございません。
 以下は弁当を口にした北浜雄一のモノローグである。もうここが素晴らしい。

 それにはソボロの風味すら残っていなかった。ソボロが巻き起こせる不味さではない。
 恐怖小説の大家、ラヴクラフトならば『ああ、それは名状しがたき味をもって私の薄灰色の器官に忍び込んでいく』と表現したかもしれない。だが俺はラヴクラフトではなく北浜雄一なのだ。表現してみせよう。
 徳湖のソボロは、『さっぱりとしたアスファルト』もしくは『天津甘栗を作る機械の中で、栗と一緒にぐるぐる回っている石を柔らかくした物』の味がした。

「食前絶後!!」p.13-14

 こういう文章を生み出す作家の書くものがつまらないわけがない。かくして北浜雄一は不味いソボロから、ドテライ男、関西地方に暗躍する謎の落語家一門、かわいい先輩に恋する素直な一年生、幾何学模様が生成する擬似人格、らが絡むとんでもない騒動に巻き込まれることになる。
 ああ面白いなあ。こんな面白い本が読めるなんて幸せだなあ。

 なまたさう。

 あ、「オーフェン」の方も買いましたよ、と思い出したように。未所持なのは「獣」と超ピンポイントな理由で重要な「狼」だけ。「狼」がなぜ重要かって?そんなもん言わずもがなではないか。
 「まわり道」と「スレイヤーズVSオーフェン」の方はもう手に入らないだろうなあ……。

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