記事一覧

あそこそ4日

 ずっと考えていたことではあるが……この物語、つまり「あいつはそいつでこいつはそれで」の意味というのは、いったいなんだというのだろう。
 私は、この不定期連載が始まった当初の感想でこう書いた。

 もし連載が、ワニ娘話のようなすべてが終わった後のおまけエピソードだったら、嬉しいのに変わりはなくともここまで盛り上がらなかっただろう。われらが主人公、オーフェンを待ち受けているのは永遠に終わらない楽園ではなく、更なる困難に満ちた道行きだ。あの世界にふたたび触れられること、これを喜ばずしてなんとしよう。

 「オーフェン」はすでに終わった物語である。物語の終わり、それは語られるべき事象がすべて語り尽くされるということだ。たとえ消化不良の点があろうとも。
 これは別に「オーフェン」に限った話ではない。ファンサービス的に、大団円を迎えた後の楽園の世界を垣間見せるのならばともかく、「あそこそ」は未回収だった設定が開示されるなど、続編といっていいように思われる。一度エンドマークを打った物語に対して、これ以上いったい何をつけくわえようというのか?そのことがずっと頭にあった。
 「スレイヤーズVSオーフェン」で断片が提示されたように、秋田禎信はオーフェンたちの「その後」は考えていたらしいから、富士見書房に後日談競作企画を提示されて「扉」後の顛末を書いてみるのもいいか、と思ったのかもしれない。あるいは、本編中で物語を動かす役割に徹していたクリーオウを、物語の中で意思を持って動くキャラクターとして描こうと思ったのかもしれない。用意はしていたものの、結局使われることのなかった設定群をファンサービス的な意味合いで披露してみようと思ったのかもしれない。
 と同時に、私はコルゴンが登場してから、「この話はひょっとして『同質で正逆』を語りなおそうとしているのでは?」という考えがあった。
 東部編で繰り返し出てきたわりに、カタルシスにはあまりからまなかったフレーズである。というより、物語の中でフレーズについての決着のつけ方が弱かったと言う方が正しいだろう。超人を目指していたコルゴンと、超人は世界を救わないとしたオーフェン。この二人の関係は、本編中では対立や対照というより「ずれていた」という印象がある。互いが手前勝手に行動した結果、「扉」で対峙する場面になっただけであり、しかも対照性を強調して描かれていたわけでもないからだ。こうして「あそこそ」において、やっと関係性が生じたわけだが。
 あえて否定的な言い方をする。「あそこそ」は本編で未消化だった「同質で正逆」の後始末が芯になっているのではないだろうか。新たな要素をつけくわえるならばともかく、本編で語るべきだったはずの事象を後日談で片付けるのは、筋が通らないことと私には思える。

 ……それにしても、本来ならきちんと東部編を読み返してから書くべき内容だな、これは。盛大な勇み足である。

コメント一覧