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ブラック・ラグーン シェイターネ・バーディ

 メディアミックスの一環として小説化、または漫画化される場合、ストーリーは若干の味つけをほどこされつつ原作通りの展開になるか、または挿話的なオリジナルになるかの二通りになることが多いのではなかろうか。神林長平版「ラーゼフォン」のように、設定すら原作からかなり離れたものになる場合もあるが。
 さてブラクラ小説版はというと、日本編の直前という設定でラグーン商会が巻き込まれたある事件を描いている。ロックがラグーン商会に誘拐されてから2年経っていると述べられ、バラライカや張の名前が出てくるなど、いくつかの設定が明かされている。特にバラライカについては、アフガン時代の姿が描かれたり、ダッチへの借りとは何かが出てきたり、と原作で出てくると思われていた重要な設定が満載。以前、インタビューでバラライカの過去はかなり作りこんであるとあったことだし、作者は原作者の広江礼威ときっちり打ち合わせをしたようだ。
 その作者こそ、今をときめく虚淵玄である。……などと言いつつ、私はかれの関わったゲームをプレイしたこともないし、「Fate/Zero」も読んだことがない。ただネット上で高い評価を受けているので、そうかならばブラクラ小説版も面白かろうと無責任に期待していただけだ。そして実際に面白かった。
 ブラクラの魅力たる木曜洋画劇場イズム――浅いストーリーと、キャラクターたちの「クールな」言動、ドンパチ、ときたま差し挟まれる底の抜けたお笑い――満載で、なおかつファンサービスも忘れない。失礼ながら、ますます混迷を深めつつある最近の原作よりも良かった。
 それにしても張さんはいつもおいしいところばかり持っていく。そこがかっこいいのだけど。

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