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「あそこそ」18日

 とんでもないことになった。単なるファンサービス、おまけエピソードぽいものと思われていた「あいつがそいつでこいつがそれで」。徐々にただの後日談ではおさまらなさそうな様相を呈してきたこれは、本日とうとうその核心を顕わにした。ぽいものどころではない。西部編、東部編に続くこれは第3部だ。

 まず、明かされた主人公の目的について。かれは追われるゆえに大陸外へ逃れることを望んだのではなかった。自分のしょいこんだ厄介な力を持ち主に返すためだという。つまり、「扉」で召喚された魔王の力はまだ残っており、そして魔王もまた現出しているというのか。うわあ。
 以前私は主人公の目は緑になっているのではと予想したが、予想を裏切りその色は青。カミスンダ劇場でスウェーデンボリー役の人形のみ目が青かったのはそういう意味か!一挙にテンションが上がる。いったい何年ごしで明かされたんだ、これ。
 この調子でいくと、まだまだ明かされる謎や伏線が出てきそうでオラすっげえワクワクしてきたぞ!<誰ですか
 「魔王」とあだ名されたのは比喩でもなんでもなく、真実そのままの意味だったのか。最終巻を読んだとき、感想を冗談半分で「グロ魔術士、ついに魔王と化す!世界の運命やいかに!」などと言っていたのが本当になってしまったな。あれは一時的な力などではなかったということか。使用者に制御できない力は無意味とされるあの世界観では確かに厄介。
 今回で主人公が始祖魔術士化したわけではないことが示され、「教主がいまだ自分を始祖魔術士と思いこんでいる」にも説明がついたな。機能停止という単語からも、教主ははじめから人形だったことがわかる。魔術士絶滅をうたいながら、いまひとつ本腰入れてるようには見えなかった教会の矛盾も、ある程度納得できるような。だってガラスの剣でどうやって魔術士と戦えるというのだ。愚犬の方が魔術士専門暗殺者としては各上だろう。教会も女神の指示ではなく、ドラゴン種族によって建立されたのだろうな。
 で、だ。教主が人形だったら「背約者」で出てきた、荒地でぼやく男は何者なのかという謎が出てくる。回想シーンらしきその場面では、確かに具体的な描写はなにもなかった。だが前後の会話から、生身だったころの教主が空中に突き出たオーリオウルの足を目撃したシーンと判断していた。いや、させられていたのか?もうなにも信じられない!おとなはみんな嘘つきなんだッ!
 それにしても秋田禎信はひどい作家である。いや鬼だ。まさに魔王だ。こんな夜な夜な読者をきりきり舞いさせるシロモノを隠し持っていたうえに、本編で出した情報をこんなところで覆すとはなんたる仕打ち。
 要約すると、一生ついていきます額を地面にこすりつけますからいじめないでください。
 さて、「あいつを殺してあいつを取り戻す」とはどういう意味なんだろね。殺される、いや機能停止するのはおそらく教主だ。それによって取り戻されるべき人物とは――というところで以下次号。なんかもー、擬似時間転移で一年後へ行きたくなってきたよ…。

 ところで毎日飽きもせず長文感想を書きつらねてきたが、これからもそうなるかはいまのところ不明。次から章が転換するとのことで、となるとモチベーションだった「こいつ」の出番があるかどうか分からないからだ。
 でも「こいつ」をまた秋田の文章で読めて本当に良かった。こんな嬉しいことってあるんだな。

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