3.

 僕らは行為が終わった後、しばらくベッドに寝転がって体を休めた。
肌に触れる湿ったシーツが、僕らの愛の激しさを物語っていた。
その時僕はさっきまで手首に巻いていた赤いリボンをグルグルと左手の小指に巻きつけていた。
そしてお兄さんは枕に頬を乗せて僕のその様子をじっと見つめていた。
さっきまで足元にあった掛け布団はいつの間にか床に落ちていて、裸の僕らを覆い隠す物は何一つなかった。
「お兄さん、手を出して」
「ん?」
彼はちょっと不思議そうな顔をしながら僕にそっと右手を差し出した。
僕は彼の手を取り、今度はその小指にリボンを巻きつけていった。すると僕らは、細いリボンで1つに繋がった。
「ほら、運命の赤い糸だよ」
僕が彼の目を見てそう言うと、お兄さんは白い歯を見せてにっこりと笑った。 でも照れ屋な彼はそれからすぐ枕に顔を埋めてしまった。
運命の赤い糸は、淡い照明の下で一瞬キラッと光を放った。

 「ねぇ、腕枕して」
「おぅ」
お兄さんは、僕の望みをなんでも叶えてくれた。彼のたくましい腕を枕にすると、すごく幸せを感じた。
お兄さんの頬にそっとキスをした時、薄暗い部屋の中でも彼の耳が真っ赤になるのが分かった。
僕らは数分前までもっともっといろんな事をしていたのに、お兄さんは僕のすべてを手に入れた後もちっとも変わっていなかった。
「学習机……懐かしいなぁ」
お兄さんが僕を抱きしめながら突然そんな言葉をつぶやいた。
その時彼の目は僕の背後にある木の学習机をじっと見つめていた。 それは特別立派な物というわけではなく、ごく一般的な普通の机だった。
「お前、偉いな。本棚に参考書がいっぱい詰まってるもん」
僕はそう言われ、一瞬振り返ってなんの変哲もないその机を見つめた。 たしかに机の上に備え付けてある本棚には学校で使っている教科書や参考書がいっぱい並んでいた。
「俺の本棚にはマンガとエロ本しかなかったな」
お兄さんがマジメな顔をしてそう言うから、僕は思わずクスッと笑った。
でもその時お兄さんはニコリともしなかった。彼の目は、僕を通り越して遠い所を見つめていた。

 しばらく休んでクーラーの風を浴びると、体が涼しくなって汗が乾いた。
少し前まで汗ばんでいた腕枕も、今はサラッとした感触に変わっていた。
その時、静かな部屋の中にグーッと大きな音が響いた。それはお兄さんのお腹が鳴る音だった。
僕らは2人とも声を上げて笑い、その場の空気がすごく和んだ。
僕はお兄さんと一緒にいるとすごく楽しかった。
いつも開けっぴろげで気取らないお兄さんが大好きだった。
真っ黒に日焼けした肌。真っ白な歯。小さな目。たくましい腕。僕は彼のすべてを心から愛していた。
「お兄さん、お風呂に入ってから一緒にご飯を食べようね」
「おぅ」
「お兄さんの体は全部僕が洗ってあげるから、僕の体はお兄さんが洗ってね」
「う……うん」
「僕、今日は絶対お兄さんを帰さないよ」
彼を見つめてそう言うと、たくましい腕が僕を更に強く抱きしめた。
僕は今夜、このたくましい腕に抱かれて眠りたい。でもその前に、もっともっと彼をかわいがってあげたい……