27.

 カーテン越しの朝日を浴びて、そっと寝返りを打つ。
チビはとても疲れているようで、まだ起きる気配がない。裸で眠る彼の口許には、少しヨダレが光っていた。
壁伝いのロープには、洗濯済みの衣類がたくさん干されている。
それは昨日アパートへ戻った時から、そこにあった光景だ。
チビは僕が仕事へ行っている間に、掃除と洗濯を済ませていたのだった。

 それが分かった時は、少しショックだった。
チビはこの前僕が言った事を気にしている。だからこそ、少しでも僕の負担を減らそうと考えたに違いない。
ただ僕が問い詰めても、彼は決してそうは言わなかった。
「僕の言った事、まだ気にしてるのか?」
「そんな事ないよ」
「じゃあどうして急に洗濯を始めたりしたんだ? 今まではそんな事なかったのに……」
僕の言葉は、そこで途切れた。
チビがいきなり身を寄せて、ぎゅっと抱きしめてくれたからだ。
「昼間のうちに洗濯をしておけば、トシくんと一緒の時間をもっとゆっくり過ごせるからだよ」
干された衣類をチビの肩越しに見つめて、そんな甘い囁きを聞いた。
そして僕は、しばらく面倒な事を考えるのはやめにした。

 だけどそろそろこれからの事を考える時がやってきた。
チビは昨日、店長に暴行を加えてしまった。だからといって、それを責める事などできやしない。
チビはすごく敏感なところがある。 彼は店長の顔を見た瞬間に、それが僕を落ち込ませた張本人だと分かったのだろう。
恐らくチビは、あんな形で僕を守ろうとしてくれたのだ。
かといって、やっぱり暴力を振るったのはまずかった。
それはもちろん分かっていたけれど、チビが僕を思ってあの行動を起こした事は嬉しかった。
僕は多分、仕事をクビになる。でもそれはもう覚悟ができていた。
ただその前に、店長に一言謝らなければならない。まずはちゃんと謝罪を済ませて、今後の事はそれから考えよう……


 しばらくすると、チビがゆっくり目を開けた。
彼は口元のヨダレをサッと拭い、ベッドの上でそっと僕を抱き寄せた。
「おはよう、トシくん」
「おはよう、チビ」
頬を寄せ合って、静かに朝の挨拶を交わす。
カーテン越しの朝日は、チビの肌をわずかに照らしていた。
昨夜は何度セックスを繰り返したか分からない。彼の胸や首筋には、キスマークがいくつも点在していた。
それを見ると、ついまた興奮してしまった。
僕はチビの胸に圧し掛かり、小さな唇に吸い付いた。
店長に謝りにいくには、それなりの勇気が必要だった。 僕は彼と愛し合う事で、自分を奮い立たせようとしていたのだった。