「はーちゃん・・。脱がして・・くれる?」
絢夫、いや絢は春希におねだりする様な甘えた声を出した。
「あ、はい・・。」
絢の甘え声に春希は穏やかな声で返事をすると絢の着物に手を伸ばしゆっくり脱がし始めた。
「はーちゃんの手、大好き。暖かくて優しくて・・。」
着物を脱がされながらも絢や春希の手をいとおしげに撫でる。繊細な容貌に相応しい長くすらっとした指。
それでいてどこともなく力強い。
「私も絢の手・・大好きですよ。」
自分の手を撫でる絢の手の感触に嬉しげな表情をする春希。小さめでぽちゃっとした子供の様な可愛らしい手。
「やっと言わなくてもボクのこと呼び捨てに出来る様になったね、はーちゃん。」
自然に呼び捨てにされたことを心底喜ぶ絢。
「はい・・。でも大変だったんですよ。十六年間様付けだったんですから・・。」
「ふふふ。」
絢と春希、夏希兄弟は乳兄弟で俗にいう幼馴染という関係である。真琴には子供が絢しか生まれなかった。
その為息子として育てられた。その事実は絢の両親と乳母一家、つまり春希達のみが知っていた。
その為着替えや風呂などの世話はいつも春希と夏希が行っていた。ある程度の年齢になってからは
一人で行える様になったが気がつけば恋人関係になっていた春希に甘える様に時々世話を頼んでいる。
それゆえ絢の着物を脱がせる春希の手つきは手慣れている。ちなみに真琴や夏希には二人の関係は秘密にしている。
「あ・・・。」
小袖を脱がされた絢の上半身はさらしのみになった。裸を見られるのは初めてではないとはいえ顔を赤らめる。
「さらし、ほどきますよ・・。」
そういうと春希はゆっくりとだが慣れた手つきでさらしをほどく。さらしがほどけていくたび絢の顔が赤くなる。
ぱさっと音がして完全にほどけたさらしが行為の為に敷かれた布団の上に落ちる。
「・・・・・。」
久しぶりゆえに緊張している絢は露わになった胸を隠そうと腕を上げたが春希の優しげな顔を見て決意した様に腕を下ろす。
さらしがないとごまかせない程度のふくらみはあるがさほど大きくはない乳房。それが絢の可愛らしさを引き立ててる様に見える。
「やっぱ何度目でも恥ずかしいな・・・。あんまり大きくないし・・。」
「でも・・・綺麗だと思いますよ・・。可愛いです・・・。」
「えっ!!そ、そんな・・・・。」
臆面もなくほめる春希の言葉に照れる絢。春希はその様子に微笑みを浮かべながら自分の着物を脱ぎ始めた。
見た目よりしっかりした上半身をしている。
「絢だけを一方的に脱がせるわけにはいきませんから・・。」
「はーちゃんって着痩せする方だよね。」
見た目よりたくましい身体つきを見て絢は素直な感想を述べた。
お互い上半身裸になった二人。
「絢・・。」
春希は絢を優しく抱きしめる。
「はーちゃん・・・。」
春希の腕の感触に安心した様な声を上げる絢。
「下も脱がせますよ・・。いいですか・・?」
「うん、早くやりたいもん。でも・・・今日もまだ本番はやらないんだよね?」
「はい・・・。嫁入り前の姫様は処女を大切にしないと・・。それに妊娠させるわけにもいきませんから・・。」
「旦那ははーちゃんしか考えられないけどなーボク。でも、妊娠とかはまだ・・。でも、はーちゃんとなら・・。」
「嬉しいです、絢・・。実は避妊が確実で一緒になれる方法・・見つけたんです。」
「えっ!!ほんと!!じゃあ今それしようよ。」
「申し訳ないけど今はまだ出来ないんです。くわしいことは終わってからでいいですか。」
そう言いながら絢の袴に手を伸ばす。
「あっ!どさくさに紛れて!はーちゃんの助平ー。」
「ふふ、じゃあやめてもいいんですよ。」
穏やかな物言いでからかう。
「やめろなんて言ってないもん。助平上等だよ。」
対抗する様に言う絢。
「ふふふ、じゃ、脱がせますよ。」
春希は絢の袴を掴みゆっくりと下ろし始める。
白くわりと肉付きのいい脚がすべて露わになり絢が褌のみの姿になる。
「・・・今更だけどなんか恥ずかしいな・・。」
絢は恥ずかしげに身体を縮めてそう言う。
「大丈夫ですよ・・。褌も下ろしますよ。」
春希の優しい声に安心し心の準備が出来た絢。
「うん、いいよ・・。ボクの本当の姿・・ちゃんと見てね・・。」
「はい・・・。」
春希は穏やかに返事をするとゆっくりと絢の恥部を守る褌を下ろした。
「あっ・・・。」
覚悟はしていても一糸纏わぬ姿になり恥ずかしげな声を上げる絢。
陰毛も薄く処女特有の初々しい女陰が春希によって露わにされる。
「いつ見ても綺麗ですよ・・。絢のここ・・・。」
「もう!恥ずかしいからそんなこと言わないで!!」
照れる様な喜んでる様な声を上げる絢。
「はーちゃんにしか見せたことないし、はーちゃん以外の男の人には見せないんだから・・。」
「私だけのの特権ってことですか。光栄です。」
春希が笑顔を見せる。
どうやら夕顔丸は夏希同様風呂場に向かってる様だ。やけに周囲に警戒している。その様子を見て夏希は見つからないよう隠れた。
『そーいやあいつ、人前で風呂どころか薄着になろうとすらしないよな。
確か身体に傷があるから人に肌は見せない様にしてるって言ってたよな。』
その話を聞いて痕が残る様な怪我をするなんてマヌケとからかってそのマヌケに負けたのはどこの誰だって反撃されて
喧嘩になったのを思い出した。今思うと言いすぎだったかなと思ったが夕顔丸の弱点と言えるだろうその傷を見てやりたいという
心境に駆られた。ばれない様こっそり後を付ける。すると案の定風呂場に入った。
『よし!』
周囲に誰もいないことを確認するとわずかな隙間から夕顔丸の姿を捉え観察した。
風呂場に入ってからも夕顔丸はどこともなく警戒した様子だ。夏希が覗いてるとも知らず少し警戒を解き服を脱ぎ始めた。
その様子は妙に色っぽく、夏希は自分の心臓の鼓動が速まるのをはっきり感じた。
『な、何考えてんだ!オレ!!男が服脱ぐ姿に・・、それも夕顔丸に・・・。』
そうは思っても夕顔丸が服を脱いでいくにつれ興奮し、その姿に釘付けになっている。夕顔丸が髪を下ろす。
下の方で一本に束ねられていた腰まである艶やかな黒髪が広がる。その姿に夏希は思わず息を飲む。
『本当にどうしちまったんだ、オレ・・。男色の趣味はないはずなのに・・。』
夕顔丸は上半身の着物の中で最後の一枚である襦袢を脱ぎ始めた。
『そ、そうだ!オレはあいつの身体の傷を見てやろうと・・。』
ほぼ忘れていた目的を思い出し夕顔丸の姿を凝視した。すぐ肌が現れるのかと思いきや胸に白い包帯の様な物が巻かれていた。
『あれで隠しているのか?でも、ああやって胸に布を巻くってどっかで見たことが・・・!!?」
夏希は思い出した。その「どっか」とは・・・絢が男装の為胸を隠す際巻くさらし。絢が十三くらいまで着替えの世話をしてたので
胸を隠す為にはさらしを使うことは知っていた。尚、春希が今でも時々着替えを手伝ってることや絢と春希が恋人関係であることを
夏希は知らない。
『さらしを巻いてるってことはあいつ・・・もしや・・・!?』
そう思うと色々納得がいく。自分が夕顔丸が服を脱ぐ姿に興奮してしまったことも、さらしのみの夕顔丸の上半身が
あまりにも色白で華奢なことも・・。夕顔丸がさらしを解いていく。それがすべてほどかれたとき予想してはいたものの
驚きを隠せなかった。傷などどこにもない。あるのは華奢な身体には不釣合いな豊かな双丘。女性の胸を見たことなどない
夏希はその光景に今まで以上に釘付けになる。そして思い立った様に風呂場に入り、夕顔丸の前に姿を現した。
「!!!い、いや!!」
驚いた夕顔丸は普段とは全く違う女の悲鳴を上げ、胸を隠す。しばらく沈黙が続いたが夕顔丸が口を開く。
「あ、あの・・・。騙してたのは謝ります・・。どうか、わたしが女だってことは秘密にしてください・・。」
今までの低めに作ってたのであろう声とは全然違う澄んだ声。口調もあのきつい言い方が嘘の様にしとやかでしおらしい。
きっとこれが彼女の本性なのだろう。
「黙っててやるけどその代わり・・・服を着直してオレの部屋に来てくれ。」
「えっ・・・。」
思いがけない要求に声を上げる夕顔丸。しかし逆らうわけにはいかない。
「わかりました・・・。」
「じゃあ、俺は部屋で待ってるから・・。」
そういって風呂場を後にする。
「・・・・・・。」
その場に残された夕顔丸は少しぎこちない手つきで服を着直し始めた。
部屋に戻った夏希は興奮が治まらない。まだ閉ざされている襖を見つめている。長い様な短い様な時間。
・・・襖がゆっくりと開いた。そこから姿を現す夕顔丸。その表情にはいつもの冷静で愛想のないものではない。
困惑した様な不安そうな表情。その顔は間違いなく少女の顔だった。
「座りなよ。」
布団の上であぐらをかく夏希は夕顔丸を見上げながらそう言った。
「は、はい・・・。」
その言葉を聞いて布団の前に正座する夕顔丸。
「あの・・わたし、何をすれば・・・。」
夕顔丸が聞いてくる。部屋に呼び出された時点で何かを要求されると思ったらしい。
「察しがいいな・・。流石だな。」
夕顔丸の予感の通り夏希は夕顔丸の正体を誰にも言わない代わりに要求を出すつもりだった。
「こっちに来な、夕顔丸。」
夏希は夕顔丸に自分の方に寄ってくる様言った。少しずつ近づく夕顔丸を待ちきれないといわんばかりに抱き寄せた。
「・・・・!?」
いきなり抱き寄せられ夕顔丸は驚きの表情をする。自分とさして身長差がないはずなのに
華奢な柔らかの身体の感触に夕顔丸が男でないことを再認識する。
「ほんとに・・女なんだな・・。」
「・・・・・・。」
夏希の行動に戸惑いを隠せない夕顔丸。自分を抱きしめる夏希の身体は春希同様見た目の割にがっちりしている様だ。
「お前の正体、黙ってる代わりに・・・。」
そう言い掛けると思い立った様に夕顔丸に口付けをした。
「・・・・!!?」
あまりにも思いがけない事態に目を開けたまま夏希の唇の感触を味あわさせられる夕顔丸。
「口付けしたの・・初めてだよ・・。夕顔丸もか?」
夕顔丸の唇から自分の唇を離すと真っ先にそう言った。
「あ、初めてです・・。あの・・。」
「月並みだけど・・、身体で払ってもらう。」
夕顔丸が言い掛けた黙ってもらう代わりに何をすればいいのかという問いに答えた。
「身体・・・!?」
夕顔丸が驚きの声を上げる。意味を理解したのだろう。そんな夕顔丸を布団の上に押し倒した。
服は着直していたが髪はおろしたままだったので美しい黒髪が布団の上に広がる。
「あ・・・。」
少し怯えた表情になる夕顔丸。
「なるべく・・・優しくするから・・・。」
夏希は怯える夕顔丸を優しく諭す様に言いながら彼女の着直された着物に手を伸ばす。
続く