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偽りの城 4

名無しのアヒル氏

食事を終えた和海と頼子は部屋に戻りくつろいでいた。
「うーんと、何しようかな?」
「そうですねぇ、私、実家から浮世絵を持ってきたのですが・・。絵、好きだと言ってましたよね。」
「あ、うん!覚えててくれたんだぁ。」
昨晩の会話を覚えてた頼子に和海は明るい笑顔を向ける。その可愛さに頼子は思わず目を逸らしてしまう。
――ああっ、自分はどうしちゃったんだろう・・・。
「頼子?どうしたの?」
頼子の様子が気になった和海は心配げに声を上げた。
「な、なんでもないです!心配掛けて申し訳ありません・・。」
必死で弁解する頼子の顔は真っ赤だった。
「ふふっ、気にしてないよ。早く絵見よ。」
和海は微笑みながら明るく呼び掛けた。
「あっ、はい・・・・・。」
和海の呼び掛けに頼子は浮世絵を取りに動く。その内心は和海の微笑みを向けられて今まで通り緊張し通しだった。

「え、えっと・・。これです・・。どうぞ・・・。」
頼子は実家から持ち込んだ荷物から数枚の浮世絵を取り出した。
「わぁ、結構あるんだね、美人画が多いね。わっ、綺麗な着物だなぁ。」
「えっ、(絵なんかより、和美さんの方が・・・・)。」
「なんか言った?」
「えっ!あ、何でもない!です・・。」
頼子があわてながら言うと一枚の浮世絵がひらっと落ちた。それを見た頼子の顔色が変わった。
「!!?(こ、これは!!)」
頼子はとっさに取ろうとしたが、和海に先に拾われてしまった。
「これは?どれどれ・・・。」
「あーーーーーー!!!」
頼子の絶叫に合わせる様に和海の顔がみるみる真っ赤になっていった。
「よ、頼子、これ・・・・・・。」
「・・・・・・・・。」
何の弁解も出来ず、顔を真っ赤にする頼子。和海が手にしている浮世絵は・・・・。


なんと春画だった。


「ま、間違えて、父か兄のを持ってきてしまったみたいです!」
頼子はようやく思いついたとっさの言い訳をした。
「あっ、そっか。成程ね。」
和海はとりあえず納得したようだ。
――よかった・・・。ふー。荷物分けしてたとき憂鬱でぼんやりしてたからなぁ。せかされてあわてたときもあったし。
ちらっとまだ和海に見せてない方の浮世絵を確認すると間違えて春画を結構持ってきてしまったようである。
和海はと言うと・・。
「へぇ、こんなんなんだ・・・。へぇー。」
顔を赤くしてはいるが興味深げに春画を眺めていた。ほぼ全裸の男女が脱がされた着物の上で抱き合ってる姿。
結合部分がはっきり描かれている。その男性の肉棒は女性の女陰に挿入されているが肉棒は半分程しか
挿し込まれてないため肉棒もそれを受け入れる女陰もはっきりと描かれており
男女ともに陰毛もはっきり描写されている。

――和海さん・・、春画に興味あるんだ。男の人だから当たり前だけど、なんか似合わないなぁ・・・。
しかし、春画を見つめる和海の様子は不思議と物珍しそうだ。頼子の視線に気付くと和海は顔を真っ赤にして
ばつが悪そうに顔を上げた。
「う、わわわわわ!ごめん!!こんなの女の子の前でじっくり見て失礼だよね!!!」
和海は真っ赤な顔で必死に弁解した。
「いいんです、私が持ってきてしまった物ですし。」
そう言いながら微笑む頼子の姿は不思議と非難の顔色は全くと言ってもいい程見られない。
自分の目の前で男が春画など見ることは女性にとっていいこととは言えないのに。
その表情に安心した和海は恥ずかしげに口を開く。
「じゃあ、えっと・・・。春画、まだあるの?」
「はい、結構持ってきてしまったみたいで・・・。」
頼子も正直恥ずかしかったが、和海の様子を見て素直に答える。
「見ても・・・いい?」
和海はこれ以上ない位恥ずかしそうに頼子に聞き出した。
「あ、はい・・・。和海さんが見たいのなら・・・どうぞ・・・・。」
頼子は浮世絵の中から春画を選び出すと、それを和海に渡していった。
「わ・・・。すごい・・・・。こんなに・・・・。」
和海は驚き半分の声を上げた。
――あ、これはあの子のだな・・・。
頼子は強姦や乱交描写の春画を見てふと思いながらも和海にあるだけの春画を渡していった。
「過激なのもありますけど、大丈夫ですか?」
頼子は和海の春画に見慣れてなさそうな表情を見て問い掛けた。
「あ、うん、平気。ひゃーすごぉい。」
和海は春画の過激さに声を上げながら手に取って眺めた。


「はーすごいなぁ。こんなこと、するんだ・・・。」
和海はよっぽど驚いたのか、いちいち声を上げながら春画を鑑賞している。

女性が男性の巨大な男根の亀頭部分を撫でる絵。女性が男性のそそり勃った肉棒を掴み、顔を近づけている絵。
よく見ればその絵の女性は赤く華やかな桜模様の着物の間から陰毛を覗かせている。
大股開きにされた女性に男性が下から肉棒を挿し込んでいる絵。男性が己の肉棒を挿し込んだ女性の女陰を
手鏡で見せ付けている絵。ほぼ全裸の男女が口付けをしながら男性の膝の上に乗った女性が下から男根を挿し込まれてる絵。
風呂場で男女が口付けをしながら絡み合ってる絵。布団の上で尻を突き出した女性に男性が後背位で挿し込んでる絵。
どれも過激な性描写が描かれている。

「和海さん・・・。私も一緒に見てもいいですよね?」
和海の妙に純粋な反応に気が緩んだ頼子は和海に問い掛けた。
「うん、全然構わないよ。頼子が持ってきた物なんだし。」
和海はむしろ一緒に見た方が楽しめると言わんばかりに明るく返事をした。
「よし、今度はこっち見てみよ。強姦系って奴だよね。」
「あっ、はい・・・(強姦系はあまり見たことないけどすごい、なぁ)。」
二人は描写が更に強烈な強姦系統の絵を鑑賞し始めた。

いかつい男が布団に寝かされた状態で両手首を拘束され、いやそうな顔の全裸の女性の下半身を持ち上げ陵辱する絵。
神社らしき場所で猿が生贄とおぼしき女性の恥部を舐める絵。野盗二人に襲われ、全裸に剥かれ押さえつけられている
高貴な身の上らしい女性の絵。巨大な蛸に絡みつかれたまま海に引きずりこまれ、蛸の足を挿入されている全裸の女性の絵。
陵辱に乱交、果ては獣姦とかなり過激な物であった。

「・・・すごいね・・。」
「そうですね・・。ところで和海さん、春画はあまり見たことないのですか・・・?」
「えっ!ああ、うん・・・・。」
「あっ、変なこと聞いて申し訳ありません、見慣れない反応が気になったので・・。」
そう言いながらも頼子は内心和海の受け答えに安心した。和海が当たり前の様に春画を見るのは
なんだか似合わない気がしたからだ。

「それにしても、性行為ってこんなのなんだ・・・。こんなことするなんて想像もつかないよ・・・。」
「そう、ですね・・。私達は、出来ないですけど・・・。」
頼子はそう言いながら和海を改めて見つめた。和海を見つめながら春画も見つめる。
特に男根を晒しだしている男性の絵を見つめた。
――・・・和海さんにこんなものが付いてるなんて、想像したくないなぁ・・・。和海さんにはむしろ女の人の・・・。
そう思いながら頼子は春画の男性から女性に目を移した。


「男の人のも女の人のもすごいねぇ・・・。」
和海の言葉を聞いて、しばらく春画を見つめていた頼子ははっとした。
――はっ!何考えてんだ・・・・。
頼子はありえない自分の考えを恥ずかしく思った。

和海は性器の生々しい表現に驚きを隠せない様だ。
「自分達のも、こんなのなのかなぁ・・・?」
「そっ!そうでしょうね・・・。きっと・・・。」
頼子は一瞬、驚いた様な声を上げると顔を下に向けながらそう受け答えた。
「頼子?」
頼子の叫びに少し驚いたのか和海がきょとんとした声を上げた。
「えっ、あっ、すみません・・・。」
「平気、平気。気にしないでよ。」
そう言いながら和海は頼子に顔を近づけてきた。

「か、和海さん?」
「また、口付けしてもいい?春画みたいなことは出来ないけど、少しでもそれに近い表現がしたいなぁって・・。」
和海は口付けの要求をした。
「は、はい!どうぞ・・・・。」
頼子は口付けの許可を出した。再び和海の柔らかな唇の感触を味わいたいと思ったからだ。

――男の子の唇が味わいたいなんて思う様になるなんて思わなかったな・・・。

――なんでだろ・・・・。一線を越えちゃいけないと思ってたし、越えられないって思っていたのに・・・。
二人は結婚式のときでは考えられない程、お互いに対して強い思いが芽生えていた。

「和海さん・・・・。」「頼子・・・・。」
二人は抱き合い、顔を近づけようとしている。

――和海さん、なんだか男の人にしちゃ、身体が柔らかい様な・・・。

――頼子、なんだかいつもと比べて凛々しくてなんか、男の人みたい。身体も意外とがっちりしてる様な・・。

二人はそれぞれに意外な一面を感じながら、顔を近づかせていく。

二人の唇と唇の距離は目前となった。


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