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ロマンの真骨頂 1

実験屋◆ukZVKLHcCE氏

「・・と、言うわけだ。山崎を叩き潰せ。」
「分りました。しかし、すごい姿ですね〜升沢さん。」
「黙れ!!こんなミイラ男にされて・・・クソッ。」
「OK!!仇はとりましょう・・・お任せあれ。」

『ロマンの真骨頂』

「・・・で、おたくは升沢に雇われて俺を襲ったと。」
「・・・ええ、・・・まぁ。」
俺は自分が腰掛けているボロ雑巾、もとい升沢の刺客に語りかけた。
「しかし、ボウガンで狙撃なんて・・・俺様感心しないなぁ。」
「いや・・なんて・・・お詫びしてよいか。」
「反省の色があるから許してやってもいいよ。」
「ホントっすか!?」
「でもさぁ・・・先立つものがあるでしょ?」
「え・・・!!あっ・・どうぞ」
刺客さんは丁寧に自分の財布を差し出した。有り金(紙幣ONLY)を抜き取り
身分証をじっくりと拝見する。
「お宅のパーソナルデータは暗記した。後は・・・」
        ピロリ〜ン
「今、写メにとったアンタの情けない姿とこのデータ・・・ネットに公開されたく無かったら・・。」
「はっはい!!・・・分りました!!」
こうして『恐怖!!ボウガン男』は俺の必死の説得に答え自ら降参した。


「あーどっこいしょ。」
足取りも重く席に座る。朝っぱらから動きすぎた。
「よぅ。大変だったな朝から。」
「おぅ。まぁね。」
声をかけてきたのはクラスメートの藤澤秀平。
「若いと朝から無理でるなぁ〜。」
「オッサン言うなとか言うクセに、そういう時だけ年寄り臭いな。」
そう、このオッサ・・もとい藤澤の旦那は俺や有紀より一つ年上である。

なんでも中学校卒業時に『スマイル0円買ってくる』といったきり行方不明に。
7ヵ月後、アメリカはグランドキャニオンのコロラド川流域で
アメリカンバイソンを丸焼きにして食っているところを当局に捕獲、
強制送還された過去の持ち主である。・・・ちなみに去年まで保護観察が付いていた。


「それはそうと・・・。」
旦那が話しかけてくる。正直、居眠りこくつもりだったのでウザい。
「ユーちゃんとお前、どこまでいったの?」
ガタン!!
俺は珍しくイスからこけると言う醜態をさらした。
「な・・何言って・・・」
「だから、ユーちゃんのナイト様である狂の甲斐性チェックを。」
旦那の言う「ユーちゃん」とは有紀、「狂」とは俺のことである。
「って、んな事はどーでもいい。何でお前そのこと・・・」
「シッ!!声を荒げるとみんなが注目すんぜ。」
捕獲歴ありの少年Aはモノ有りげな笑みで話しかけてきた。


「どうしたのさっきから?」
俺たちのやり取りが気になったのか有紀が話しかけてきた。
ちなみに、俺の席は教室の窓側の後、有紀の席は俺の前、旦那は俺の右隣。
俺たち3人は自然とダベる魔の三角地帯グループなのだ。
「いやナニ、ナイトの甲斐「有紀。」」
旦那の声を遮り有紀に話しかける。
「何でこのクソオヤジがお前のこと知ってんの?」
「オヤジ言うな!!」
オヤジの訴えはあえて無視する。
「僕のこと?」
有紀はコテンと首をかしげ「?」といった顔をする。
(激カワイイ。有紀、可愛すぎるぞコンチクショー。)
有紀のしぐさにアッチの世界に旅立つ俺。
「あぁ。秘密のことか。」
有紀はやっと理解したらしい。

「ヒソヒソ・・・だって、秀さん一発で僕が女だって言い当てたんだよ。」


な・・・なんだってーーーーーーーーーーーーー!!

2ちゃんねるでおなじみのAAが頭の中を駆け抜けた。
「はっは〜」
してやったりという顔で俺を見る旦那。
「何で俺に言わないの?」
「だって狂介聞かなかったじゃないか。」
有紀はプゥっと頬を膨らませる。その表情に頭のネジがまた一本抜けた俺は
残る理性で総集結させた。

有紀が女だということを・・・・・
旦那は会ったときから知っていた・・・・俺は言われるまで気づかなかった・・・。
敗北感、嫉妬心、それらがグチャグチャになって俺の心に大きな穴を開けた。


「狂介?」
有紀が心配そうにをれを見る。しかし、今の俺にそれに答える余裕は無かった。
その日は一日中悶えに悶えまくった。C−3POのようなポーズで
上半身を揺らしながら授業態度に教師は
(また山崎か・・・・ほっとこ。)
クラスメートは
(どうしたの山崎君?)
(俺に聞くな。)
(いつも以上に壊れてるな。)
(ウホッ・・・いい男。)
などと思われていたらしい。しかし、俺にそんなことを気にする余裕は無かった。


放課後、誰もいない図書室で打ちひしがれる俺。その姿は真っ白に燃え尽きた
どこかの矢吹さんのようだった。
「ん〜・・・あ!!いたいた。狂介。」
俺をずっと探していたらしい有紀は俺を見つけると明るい笑みを浮かべて
近づいてくる。
「どうしたの狂介?今日一日ヘンだよ?」
俺は燃え尽きたまま何も答えない。つーか答える力が残ってなかった。
「・・・・もしかして秀さんの事?」
いきなり核心を突いてくる有紀。  はい、その通りです。
「あれは僕だってびっくりしたんだよ!?」
「そうなの?」
力無く俺は尋ねる。
「そうなの!!「なんで男の格好してんの?」っていきなり言うんだもん。
 隠し通せなかったんだよ。」
隠し通せなかった・・・・・でも俺は・・・気づかなかった。


「だからそんなに怒らないで・・・あぁん!!」
言い終わる前に俺は有紀に抱きついた。
「ちょっと・・狂介。」
「悔しいんだよ!!」
「え?」
「なんて説明していいか分んないけど、とにかく悔しいんだよ!!」
小さい頃から一緒にいた、だから何でも知っている。そう自負していた、
自惚れていた所を一気に破壊され、俺はどうしていいか分らなくなっていた。
「だから・・・だか・・!!」
有紀の唇が俺の唇に触れる。その感触が俺の意識をはっきりと覚醒させる。
「有紀・・・・。」
「狂介・・・・ヤキモチやいてたの?」
「うっ・・・」
何も言えない、だってその通りだから。
「うれしい、って言ったら悪いのかな?・・・・でも・・・」
有紀は少し怒った顔で俺を見つめる。
「失礼だよ。僕の一番は狂介なんだから。・・・・・じゃなきゃ。」
・・・・・じゃなきゃ?

      「僕のバージン、あげてないよ。」


帰宅路、俺はものすごく締まりの無い顔してるんだろうなと思う。
「狂介、ニヤけてる。」
有紀に言われて一応は直す。だけどそれも一時、すぐに顔の筋肉は
ユルユルになってしまう。
「狂介ったら、はずかしいよ。」
「俺はうれしい。」
「・・・・もう。」
アヘアヘ、もしくはエヘラエヘラといった表情をうかべる俺。
有紀の言葉にこんなに元気を分けてもらえるなんて・・・
どうやら俺も有紀がいないと死んでしまう体質になってたようだ。

「そうだ。ねえ狂介。」
有紀が俺に声をかける。
「今日ね。パパもママも仕事で帰ってこないの?良かったら晩ご飯どう?」
「喜んで!!」
俺の頭の中の少年頭脳やオンディーが発破一枚でYATTAを狂喜乱舞していた。


「母さん。オヤジ。晩メシは有紀のトコで食うから。」
帰宅してみれば俺の両親はもう帰ってきていた。
「そうなの?良かったわね?」
「でも、ご飯だけじゃ飽き足らず有紀チャンまで喰うんじゃないぞ?」
          ドンガラガッシャーン!!!!
何を言うんだこの人達は?
「な・・何言って・・・」
「有紀ちゃんのコト聞いたんでしょ?・・・・今更。」
(ムカッ!!)
そういえばコイツラ有紀の秘密を知ってたんだ。
「娘がほしかったし。有紀ちゃんなら問題ないな。なぁ母さん?」
「そうね。」
「オマエ等ーーーーー!!」
俺はガラに無くワナワナと怒りに震えていた。
「がんばんなさいよ。」
「父さん、お祖父ちゃんって呼ばれる準備は万端だぞ!!」
「死ね!!」
怒りと通り越して呆れ果てた俺はそう言い放つと有紀の家へと向かっていった。


「ったく。」
あんな人間から生まれてきた自分を忌まわしく感じながら有紀の家に向かう。
とは言っても有紀の家はお隣だ。歩いて10秒もしない。
             ピンポーン
有紀の家のインターホンを押す。
「は〜い」
ドアを開け有紀が顔を出す。
「いらっしゃい狂介。」
「よお。」
有紀は可愛らしいフリルの付いたエプロンを着けて・・・・あれ?
エプロン・・・・エプロン・・・・服は?
「アノ〜・・・有紀サン?」
「似合う?」
有紀はクルリと一回転した。
・・・・・・案の定何も着てませんでした。

これは・・・・これは・・・・これはぁぁぁぁぁ!!!

男のロマン究極の一品”裸エプロン”だぁぁぁぁ!!!!!!!!!!

脳内のいつもの連中が亀仙人そのままに鼻血ブーして倒れた。つーか俺もヤバイ・・・。


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