「ん・・・うぅん・・・ジェイドさん?」
マオの意識が覚醒する。
「すみませんご心配かけて、私はもう大丈夫です。」
「・・・・本当にそうか?」
「え?」
「何か隠してないか?」
「あ!!・・・・その・・・えーと」
思い当たる節があるようだ。マオは徐々に口ごもっていく。
「・・・お前、女だったのか?」
「!!」
俺の一言にビクッと身体を震わせるマオ。
「どうなんだ?」
「あ・・・う・・・」
俺の言い方を怒りの現れと思ったのかマオの目に涙が溜まっていく。
「マオ?」
「ごめ・・な・・さ・・い・・・ふぇぇぇぇぇん!!!!」
ついにマオは大声を出して泣きはじめてしまった。
「ごめん、俺が悪かった。だから泣くな。」
何よりも罪悪感が先にたってしまう。
「・・・マオ。」
他に手が無かった俺はマオを抱きしめる。
「あっ・・・」
「泣きたいなら泣いてもいい。でも俺は怒ってないから。な?」
「ジェイドさん・・・。」
マオは俺の胸に顔をうずめてしばらく泣き続けた。
「もういいのか?」
「はい・・・ありがとうございます。」
泣き止んだマオは気の置き場が無いのか顔を合わせようとはせずに下を向いて俯いている。
「説明・・しないといけないですよね?」
「言いたくないなら無理には聞かないけど・・・」
「・・・いいえ、ちゃんと言います。」
意を決したようにマオは俺に顔を向けて説明した。
「ジェイドさん、私の事、男と思ってました?それとも女と思ってました?」
「いやそれは・・・・男だと。」
「私の一族は成人になるまで性別が無いんです。」
「は?」
「なりたいと思った性別に外見を近づけることは出来るのですが
それが正式な性別になるのは成人になるときなんです。」
「それでオマエさんは・・・女を?」
「・・・・・ハイ。」
「そうか。」
別にどちらを選んだとしても、それはマオの決めることで俺がとやかく言うことではない。
しかし、なぜマオが女を選んだのか・・・・少し気になった。
「ジェイドさん。」
「どうした?」
「今から言うことは戯言だと・・・思ってください。聞いていて不快に感じたら
お帰りになっても結構です。」
「・・・・言ってみろ?」
「私はジェイドさんが好きです。」
「マオ・・・」
「ジェイドさんに出会うまでどちらにするか迷ってました。男も女も
どちらにも魅力を感じませんでしたし・・・。けど、ジェイドさんを初めて
見たとき、なんて素敵な人なんだと思いました。」
マオの顔が赤くなっていく。・・・男として喜ぶべきか・・・・
「そのとき決めたんです女になりたいって・・・。女になればジェイドさんも
私の事を好きになってくれるかもしれないって・・・ジェイドさんには女として
見てもらいたかったんです。」
まさかマオがそんな風に俺のことを思っているとは思わなかった。・・いや、
もしかしたらと感じてはいても知らずに目を逸らしていた。
「この一ヶ月、ジェイドさんと一緒にいれて幸せでした。でも、結局は女になるために
ジェイドさんを利用していたんです。プレゼントも貰いました。魔法も見てもらいました。
うれしかった・・・でも内心『これで完璧に女になれる』と計算している自分がいました。」
「もういいよ。」
マオを抱きしめる・・優しく、でもしっかりと。
「魔王だけあって私はズル賢いですね・・・”勇者様”、こんな魔王は早く倒してください。」
自嘲気味に笑うマオを見て俺はもう我慢の限界だった。俺も覚悟を決める。
「やなこった。」
「え?」
「逆に俺は勇者のクセにズル賢い。マオが女と知って狂喜乱舞してる俺がいたよ。」
「ジェイドさん・・・。」
「『何でマオは男なんだ?』、『マオが女だったらいいのに』って思う気持ちは
ずっとあった。俺のほうが最低だぞ?オマエが女になったとわかった時、胸の仕えが
取れたんだ。・・・俺は男のマオを心の中で否定していたんだ。」
俺はマオの手をとり自分の心臓の上に押し当てる。
「やっぱ人間は汚い生き物だ・・・”魔王陛下”、あなたの手で私を・・・」
「イヤです!!」
マオはそのまま俺にしがみついた。
「絶対にイヤです・・・イヤ・・・・」
「俺もだ。」
そう言ってマオの頬に手を伸ばし見つめ合う。
「俺は人間の平和に興味は無い・・・俺は・・・マオだけの勇者でいたい。」
「ジェイドさん・・・・」
「マオ・・・愛してる。」
そのまま俺とマオは唇を重ねる。
これが禁断の愛だと言うなら・・・上等だ、最後まで戦ってやるよ。