攻略難解!
「せんぱーい。わたしかえっていいですかー」
なんとなく棒読みっぽい口調で、久々知先輩に声を掛けた。
もう少しで二人の元に辿り着けると思っていたは、目の前にかすかに見えた茶色い髪の人物を見て、そんな本音を漏らしてしまったのだ。
彼らの知り合いで、髪の茶色い人といえば、二人しかいない。
よく考えてみれば、先輩たちは、4人で来たと言っていたではないか。何故その時点で、その人物に思考がぶち当たらなかったのか。あ、いや、不破先輩はいいんだよ、別に。鉢屋先輩がちょっとだけウザイかなって思ってるんで、出来れば、関わり合いになりたくないなぁ、と。
「え? 折角の花火を見ずに帰るのか?」
先輩、それは本気で返しているんですか。
やっぱり、この人天然入ってるのかもしれない。
「……見ますけど」
「じゃあ、行こう」
えーい、もう知るか。
はそう思いながら、カキ氷を食べる事に専念した。
シャクシャクシャクシャク……うまいうまい。
「あ、兵助。八左ヱ門に聞いたぞ。お前らずる過ぎる。何でもっと早くに連絡を――」
うわぁ、やっぱり鉢屋先輩だーって、なんで凄んだ顔のままこっちに近寄ってくるんだろう。
「兵助。その手は何だ?」
「え? ああ、人が多くてはぐれそうになったから対策で」
鉢屋先輩は私の肩に回った久々知先輩の手をぺしりと叩いた。
それが痛かったのか、久々知先輩が叩かれた手を撫でていた。
「手でいいだろ手で」
「がかき氷食べてて手が塞がってたから、つい?」
「ついってなぁ……おい、、お前もさっきからカキ氷ばっか食べてないでなんか言え」
関わり合いにならないように傍観していたのに、行き成り話題を振られた。
まあ、二人に挟まれてて存在を消せるはずもなかったな。
「あ、竹谷先輩、カキ氷買って来ましたよー」
「おう、サンキュ!」
「話題を逸らすなコラ」
えー、別にわざとじゃないのに。
「三郎落ち着いて。もう直ぐ、花火も始まるんだし」
「あ、不破先輩だ。こんばんはー」
「うん、こんばんは……えっと、そ、その浴衣、か、可愛いね!」
「ありがとうございます。今日のために新調したんですよー。髪もタカ丸のパパに特別にやってもらったんです」
あれ? なんか空気が変わった。もしかして、また失言をしてしまったのだろうか。
どれ? 今度はどれなんだ? 本当、先輩たちって扱いにくい。
「え、そうだったの? 父さん何にも言ってなかったけど」
「予約いっぱいだったから、駄目元でタカ丸くんの友達でーすって言ったら、なんか快く引き受けてくれたよ?」
自分でやっといてなんだが、それで良いのかとは思ったけど。
でも代わりに、パパと呼んでくれと言われてしまったので仕方なく、そう呼んでいる。
「えー、だったら、僕に言ってくれればタダでやったのにー……」
「アンタが私の髪に触れるなんて、100年早い」
「本当、ちゃんって、言う事が酷いよね」
「……さん」
タカ丸と話していると、不破先輩が声を掛けてきたので、視線をそちらに向けた。
「彼は、クラスメイトなんだよね?」
「はい、ただのクラスメイトですよ」
即答すると、後ろの方でタカ丸が、ガーンと口で効果音を発していたが無視だ。
だって、本当の事だ。そりゃ、多少は仲良しなのかもしれないが、彼との付き合いは、学内に留まっていた。彼と学外で行動を共にしたのは、今回が初めてだったのだ。だから、ちょっと仲のいいクラスメイトでいいと思う。
すると、その答えに満足したのか先輩たちは、うんうんと頷いている。
今度の言葉は、お気に召したようだ。一体どういう発言をするのが、先輩たちには有効なのだろうか。
先輩たちへの対応は、謎解きRPGをするよりも本気で難しいと思った。