炎色反応 第一章・2


オルバンに服を裂かれたティスは、一瞬の後我に返り必死になって許しを乞おうとした。
「オルバン様っ……お、お許しを、オレはただまよっ」
迷っただけだ。
そう言おうとしていたあごを、ぐいと取られて持ち上げられる。
「黙れガキ。誰がお前の都合を話せと言った?」
整った顔立ちを更に冷たく見せる笑みを浮かべてそう言うと、オルバンはいきなりティスの頬を引っ叩いた。
痛みと衝撃にその場に尻餅をついた少年を見下ろし、彼の右手の指先と指輪が再び光る。
流星のようなあの光がまた尾を引き、ティスの残りの服は呆気なく引き裂かれてしまった。
手首や足首などにわずかに残った布も、衣服としての意味など成していない。
せいぜいオルバンの嗜虐心をあおるだけだ。
「お前もあいつらみたいに体中ぶち抜かれて殺されたいか」
あいつら、という言葉といっしょにオルバンがこれみよがしに後ろを振り向く。
そこにはさっきの男三人の、血まみれの無残な死体が転がっている。
よくよく彼らの姿を見てみると、金属製の丈夫なプレートにも手の甲などの露出した部分にも等しく小さな穴が空いていた。
無数の穴に撃ち抜かれてこの男たちは殺されたのだ。
これがオルバンの力なのだろう。
光の球と化した魔力を自在に操り、相手を貫く。
「馬鹿が、オレ様を火のオルバンとも知らずに襲いかかって来やがった。この辺りの連中は礼儀ってものを知らない」
忌々しそうにつぶやくオルバンの指先の光が離れ、宙を飛ぶ。
一つがティスの鼻先辺りに飛んで来た。
彼は息を飲み、近付いて来るそれから逃れようとした結果、座り込んだ態勢から完全に地面に寝転がることになってしまう。
オルバンは満足そうに笑い、他にも数個の光をふわふわと身の回りに漂わせながらほとんど全裸のティスの腰の辺りをまたいで立った。
彼が従えた光がまた速度を増す。
それは寝転がったティス目掛けて降り注ぎ、ヒッと喉を鳴らして縮み上がった少年の体から指一本ほど離れた地面に小さな穴を空けた。
「殺さないで」
ティスはがたがたと震えながら懇願する。瞳にみるみる涙が盛り上がってきた。
「殺さないで下さい。お願いします」
彼の側に穴を空けた光が、ゆっくりと宙に浮き上がり再びオルバンの周りを取り巻く。
火の魔法使いは支配者の笑みを浮かべてゆっくりと言った。
「ああ、殺さないさ。オレの言う通りにすればな」


男に抱かれるのはとにかく、口付けももちろん、ティスは初めてだった。
「ふっ……、んぅ…」
オルバンの膝の上に抱き上げられたティスは、魔法使いの意のままに口の中を蹂躙される。
「んはっ………はあ、あ…」
呼吸するので精一杯のティスの口腔をなめ回しながら、オルバンは長い指先でその胸元のとがりに触れた。
緊張につんと勃った乳首を摘み、なめらかな肉に浅く爪を立ててこりこりともみほぐす。
「ん、ふっ…」
くすぐったさに身をよじるティスの、ぼんやりとした視界の端をあの光がかすめる。
その一つが近付いて来た。
まさか、と思い身を硬くしたティスは、それがオルバンがいじっていない方の胸に飛び込んできたことに気付き凍り付く。
「オルっ……、ん、んんっ!?」
約束が違う、と言おうとしたティスは乳首を下から押し上げるような感覚にびくりとした。
オルバンのもう片方の手は自分の背中を支えている。
だからこの感覚は彼の手ではないし、第一手で触れられているような感触がしない。
「オレの力は殺すだけの力じゃない」
唇を離した魔法使いが含み笑いをしながら言うのが聞こえた。
「触れるぐらいの力にとどめることも出来るのさ。もちろん、もっと力を込めたら……分かるな?」
脅しの込められたその言葉と同時に、乳首を押し上げる力が強くなった気がした。冷や汗をかきながらティスは必死にうなずいた。
「いい子だ。なあに、おとなしくしていればお前にもいい思いをさせてやるさ」
そう言うとオルバンは、もう一度ティスに口付けをして来た。


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