炎色反応 第三章・17



「お前がよがってるのは事実だろうが。さあ、そろそろおにいちゃんにいつものを注いでもらえよ」
オルバンの胸元で彼は泣きながら金の頭を振った。
「そんっ……いや、もう……」
イーリックのものを入れられて犯された、それだけでもう十分じゃないか。
この上彼にまで中に出されたらどうにかなってしまう。
半狂乱で泣くティスの耳元でオルバンは冷めた声で言った。
「興ざめだな。じゃあ、イーリックはもう用済みだ」
頭に上がった血が下がっていく。
そんな、という言葉を危うく飲み込んで、ティスはきつく唇を噛み締めた。
分かっていたことじゃないか。
オルバンはいつだって自分の予想を越えた恥辱を強いてくる。
イーリックに自分を、自分にイーリックを人質に取られた状態なのだ。
これ以上抗うことなんか出来ない。
「さあ、お願いしろ、ティス」
爪を立てられ、もっと赤くなった乳首を両手の指でくりくりともてあそびながらオルバンは言う。
「っん……あっ、イーリック、さん…」
さっきのオルバンの恐ろしい一言ももう届いていないのか、夢中でティスを突きまくっている青年にティスは手を伸ばす。
はっとしたようにこちらを向いた彼の埋まったその場所を、自らの指で押し広げてみせた。
こすられて泡立った白濁にまみれた赤い肉が、淫猥に濡れ光る様がイーリックの目に映る。
「だ、して……ここに、出して…」
「ティスッ……!」
ずんと深く、奥を突かれた。
それだけでは止まらず、続け様に二度、三度と熱い肉棒を押し込まれる。
「ふあっ! あんっ、あっ、あぁーっ……!」
最早ただの雄でしかない彼のものを、ティスの体はきゅうきゅうと締め上げた。
意思とは裏腹の快楽がわき上がり、打ち込まれた肉棒の放出を誘う。
「ティス、ティスっ…」
少年の上に身を乗り出し、強く腰を押し付けながらイーリックは射精の快楽に整った顔を歪ませた。
人並みには女性との経験を持っている彼が、弟同然の同性の肉体で初めて味わう、未知の快楽だった。
「あっ……あぁ」
イーリックの精液を、今なお体の奥に流し込まれながらティスは目を閉じて身を震わせている。
彼のものからも体液があふれ出し、イーリックの服を汚してねっとりと自分の腹の上に伝い落ちていた。


***

その夜、ティスは眠れないまま宿のベッドの上にいた。
イーリックの白濁を身の奥に受けた後、オルバンは自分を抱き上げ彼にこう言った。
「約束だからな。今回は見逃してやる」
そしてあっさりと踵を返し、ひどい格好のイーリックを置き去りにしてここに戻って来たのだ。
ティスについては、いつものあの火で清められ案の定またここでオルバンに抱かれた。
四つん這いにされ、腰だけ上げてずんずんと貫かれて、狂ったようによがった。
宿中に聞こえるような声で叫びながら絶頂に達し、忘れようとした。
「…………さん」
彼の名を毛布の影で小さくつぶやいては、首を振って目を閉じる。
イーリックだって犠牲者だ。
言うことを聞かなければ二人とも殺されていたかもしれなかった。
その上で目の前であんな風に挑発されたら、誰だって従うだろう。
彼があくまでオルバンの命令を跳ね除けた結果、無残に殺害されでもしたらそれこそ後悔に胸が潰れる思いがしたに違いない。
だから今感じている悲しさはただの自分勝手なのだ。
ティスはもう暗闇にも慣れた目で、かたわらのオルバンの背中をそっと見た。
かすかな寝息に合わせ、その背はゆっくりと動いている。
不思議に彼を恨む気持ちは湧かなかった。
魔法使いは絶対者であり、逆らえない雲の上の相手である。
ティスは幼いころからそう刷り込まれて生きている。
実際初めて間近で触れ合った火の魔法使いは恐るべき暴君で、およそ太刀打ち出来るような相手ではなかった。
天災のようなものだ。
運悪く出会ってしまった、それ以外のことを恨んでも仕方がない。

←16へ   18へ→
←topへ