炎色反応 第三章・23



「誰か他の子と間違えてるんじゃないかと思った。だけど君だった。宿で、いやらしい声を上げて、オルバンに抱かれている君を見た時は本当に驚いたよ」
彼の前で辱められたことをティスはとても気に病んでいた。
だがとっくの昔に、イーリックはオルバンのおもちゃになっている自分の姿を目にしていたらしい。
いっそ知らずにいたかったことを次々と持ち出され、とてもイーリックの方を見ていられない。
恥ずかしくて死にそうだ。
唇を噛んでティスが顔を背けると、イーリックはその横顔に唇を寄せて来た。
耳たぶに彼の息がかかる。
「あっ……やっ、やめて…」
荒い呼吸音といっしょに、生暖かい感触が耳の穴に差し込まれた。
濡れた感触と、ぴちゃぴちゃという音に犯される。
乳首を転がされながら耳を攻められ、ティスはうわずった声を上げた。
「助けたかった。でも……ティスは、こういうことをされるのが本当は好きなんだね」
ひとしきり耳をなめた後、イーリックは熱い声でそんなことをささやいてくる。
「違う……違う、あ、やっ…!」
手が、今度はズボンの中に入ってきた。
下着の中に入り込んだ指がきゅっと性器を握り込む。
「嘘つき。もうこんなだよ」
先端ににじんだぬるつきを、その指は全体に塗り込むように上下に扱く。
直接的な刺激にティスはびくんと背を反らせた。
「や、やっ……! イーリックさん、嫌だっ!」
「なんで? オルバンは良くて、僕はだめなのか?」
咎めるようにそう言うと、イーリックはまたティスの胸元に顔を伏せた。
「あ、あっ、あんっ」
左右の乳首を、順繰りに吸われる。
びくびくっと胸を弾ませ、素直に反応するティスを見て彼はかすかに笑った。
「感じやすいね、ティス」
吐息を乱し、ティスは切なそうに眉を寄せて彼を見上げる。
何を言えばいいのか分からない。
どうしたらこんなことをやめてくれるのか。
まだ性器に絡んだままの指を振りほどこうとしても、上に乗られている状態だ。
先の薬の効果もあり、せいぜい身をよじるぐらいのことしか出来ない。
「オレ…、イーリックさんのこと、好き、です。だけど、こんな…」
「僕も、ティスのことが好きだよ。大好きだ。だから君を、あいつの手から救い出したいと思ってる」
イーリックはそう言うと、ティスの性器から手を離してくれた。
だが彼は、そのまま下着ごとズボンを引き下ろしてしまう。
「や……!」
慌てても遅い。
ほぼ無抵抗なティスの足から衣服は取り去られ、ベッドの隅に放り投げられてしまった。
しかもイーリックは、むき出しになった白い足を強引に左右に開かせてしまう。
その上枕元のランプに火を入れられた。
揺れる炎がティスの体を照らし出す。
吸われて硬くなった乳首も。
ぬめりを擦りつけられ、頭をもたげている性器も。
その下でまだ口を閉ざしている穴さえも、全てがよく見えているだろう。
「いや…」
恥ずかしさに震えるティスを、イーリックは瞳の奥にほの暗い光を宿して見つめていた。
「………可愛い。ずっと、気付かなかった。君は本当に可愛くて、きれいだ」
彼の唇がティスの膝頭に触れた。
誓いを立てるようにそこに口付けして、次第に内股の方に進んでいく。
くすぐったさにティスは身をよじりながら、ここだけは自由な口で一生懸命彼を止めた。
「やめてやだ! オレ、オレ本当にこんなこと、……あっ!?」
性器の根元のふくらみに息がかかる。
さっき乳首にしたように、イーリックはそれを片方ずつ口に含んで舐め始めた。
「はっ、やあっ……ん、んっ、そんな、とこ……」
オルバンや他の男に対し、自分が口で奉仕することはある。
だが自分に口でされたことはまだなくて、ティスは未知の快楽にあえぐことしか出来ない。


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