炎色反応 第四章・4
地の魔法使いはまだ無言だ。
濃い眉をほんの少しひそめた、不機嫌そうな表情ではあるが何も言わない。
「あッ」
初対面の男の前で痴態をさらした、そのことを恥ずかしく思う暇もない。
オルバンの手が伸びてきて、上着の上から乳首を探られた。
「やっ……」
布地ごと搾り取るようにつままれ、服とこすれて痛いぐらいに感じてしまう。
乳首をなぶる手を止めるべきか、性器を隠すべきか迷ってティスの手はふらふらと宙を泳いだ。
結局どちらもうまく出来ず、ディアルの目の前でまたオルバンのいいようにされ始める。
「ん、あっ……オルバン様っ…」
あせったようなティスの声を聞き、ディアルは苦々しい顔でため息をついた。
鋭く細められた彼の瞳はティスの胸元に注がれている。
露骨な視線が余計にティスの羞恥を煽るのだが、ディアルが見ているのはオルバンの指。
右手の小指の根元で輝く、生来彼が持っていた物ではない青い精霊石のはまった指輪だ。
「貴様はレイネも、こういう風に犯したのか」
ディアルの声はますます低くなり、そこには確かな怒りが込められていた。
ティスはぎょっとして彼を見つめる。
今までティスは、オルバンがレイネを殺してその指輪を奪ったのだとばかり思っていた。
レイネは彼を激怒させたように見えたし、あれ以降姿を見ていないからだ。
だがイーリックの手で魔法使いたちの戦場より連れ去られて以降の、詳しい事の成り行きを考えてみればティスは知らない。
「レイネさんも……? あっ」
オルバンの指がティスの性器を握り込む。
まだ濡れているものを大きな手に包まれ、やわやわと扱かれるとそれは急速に硬くなっていった。
「あん、アッ、だめっ……」
くびれをすくうように指を使われ、先端の穴をくじられると声を抑えられない。
震えながら身悶えるティスをその腕に抱いたまま、オルバンはにやにやと笑って言う。
「レイネに聞いたか。オレが初めてで良かったろう? あいつも、最後にはひいひい言って悦んでたぜ」
聞いたか、という辺りからして、オルバンはレイネの命までは取らなかったのだろう。
その代わり彼は、ティスにしたようにあの美しい銀髪の青年を陵辱したのだ。
「………レイネは、オレと顔を合わせることさえ最初はひどく拒んだ」
ディアルの表情が暗く陰る。
重々しい声には怒りと後悔がにじんでいたが、彼はかろうじて感情の暴発を抑えているようだった。
「無理に訪ねて行ったら、青い顔をしてオレの接近を拒む。大事な指輪をしていないことに気付き、問い詰めたら…」
ディアルの口元が歪んだ。
「あの気丈な奴が、泣いてお前に指輪を盗られたと言った」
「それで?」
ディアルが顔を歪めれば歪めるほど、オルバンの瞳は生き生きと光る。
「オレに犯してもらったとお前に言ったわけか。孕むぐらいに精液を注がれて、気を失うまで何度も絶頂に達したと言ったわけだな」
瞬間、ディアルが放った鋭い殺気に魔法使いではないティスですら一瞬びくっとした。
だが彼は、怒りに任せて力を使う様子はない。
その指先にある指輪も輝かないままだ。
「…………レイネの指輪を返せ」
低い、低い、抑揚の全くない声でディアルは言う。
「レイネとお前の問題に、オレは深く首を突っ込む気はない。だからその水の石を返せ。それで勘弁してやる」
「勘弁、な」
薄笑いしてつぶやいたオルバンの、ティスの性器をいじっていた手がその尻に回る。
「あ、ンッ」
魔力の塊……落火というのだったか、に犯されて開いていた穴に指が潜り込む。
火の魔法に付いている名前を、ティスに最初に教えてくれたのもレイネの言葉だった。
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