炎色反応 第四章・5



「んあ、あっ」
オルバンの挑発に激怒していた彼の顔を思い出しながら、オルバンに愛撫される。
レイネもこんな風に指で攻められ、ほぐされてから、あの太い物を受け入れさせられたのか。
自分がイーリックにさらわれている間、そんなことになっていたのかと思うとティスはただただあ然とするのみだ。
「水の石はあいつがオレにくれたんだぜ」
ティスの中をなぶりながら、事もなげにオルバンが言うとディアルの瞳がつり上がる。
「ふざけるな」
「本当だ。レイネに聞いてみろよ。オレがくれてやった快楽の代償に、あいつは大事な石をくれたのさ」
くく、と彼は喉の奥で笑う。
「初めての男に惚れたんじゃないのか?」
「馬鹿なことを言うな!」
かっとなって叫んだディアルを見て、オルバンはまたくすくすと笑った。
「でかい図体をして、何が勘弁してやるだ。水もどうしようもないが、地も相変わらずだな。揃いも揃って腰抜けばかりだ」
そう言って、びくびくと身悶えるティスの中に差し込んだ指をもう一本増やす。
「ふああっ」
刺激に声を上げ、次第に立っているにも困難になりつつあるティスをディアルは苦い顔をして見ていた。
彼の頭の中では恐らく、ティスにレイネの姿が重なって見えているのだろう。
「地は動かず。まだそれを守るのか」
黙り込んでいるディアルに、オルバンが意地悪くささやきかける。
「お前、レイネに惚れてるんだろう」
「下らない。お前といっしょにするな」
これは素早くディアルは否定したが、オルバンは動じずまた言った。
「少なくとも、こうして代わりに指輪を取り返しに来るぐらいは気持ちがあるんだろう? ふん、だが、それでオレに仕掛けても来ないんだからな。人間びいきの水どもにも反吐が出るが、貴様ら地の腑抜けぶりも大したもんだ」
馬鹿にしたように吐くと、オルバンはティスの片足を持ち上げる。
ひくつく桃色をした穴をディアルの目に見せ付けるようにした後、一度の放出では萎えることもないもので一息に貫いた。
「ああああっ!」
大きく背を反らし、頬を紅潮させるティスを立たせたまま背後から犯す。
押し入ってきたものを飲み込めはしたものの、急すぎる挿入に少年の内部はきつく男を締め上げた。
だがそれも、オルバンを喜ばせる結果にしかならない。
「あぅ、んっ………あっ、オルバンさま……ッ」
ぬらつく物を出し入れされ、尻肉を震わせてあえぐティスからディアルは静かに目を背けた。
その唇から、重々しい最終確認の声が吐き出される。
「指輪を返す気はないということだな」
器用に腰を使いながら、オルバンは鼻で笑った。
「水の奴らはむかつくが、水の魔法は意外に使い勝手がいいんでな。嫌だ。返す気はない」
笑いながら、何度も強くティスを突き上げる。
「こいつを離す気もな。レイネはこのガキをオレから引き離そうとして、同じ目に遭ったわけだ」
自業自得だとでも言いたげなオルバンにディアルは黙って背を向ける。
そのまま立ち去るかに見えていた彼だが、ふと足を止めこちらを振り返った。
彼の瞳はオルバンではなく、立ったまま犯されるティスを映している。
どきりとして、ティスが彼を見返すとディアルは静かな声でこう聞いて来た。
「レイネの話では、お前はオルバンにさらわれ無理やり慰み者にされたらしいが」
後は彼は言わなかったが、続く言葉はティスにも分かった。
そうは見えない。
望んで抱かれているようにしか見えない。
胸の奥、忘れようとしていた傷が蔑みに近い視線で蘇る。
男に犯されるのが好きでたまらないのだろうと、金色の髪をした優しかった人も言った。
「……っ」
耐えられず、目を逸らす。


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