炎色反応 第四章・6



目の端でディアルが意外そうな顔をしたのが分かったが、もうそんなことはどうでもいいと思った。
「あ……んっ、オルバン様ぁ…」
わざと、甘えるような声を上げる。
「もっと…、もっとして、もっと……」
木々に閉ざされた暗い空を見上げ、ティスは熱に浮かされたように言った。
「もっと、欲しいです………オルバン様ので、オレのそこを、もっとぐちゃぐちゃにかき回して…!」
もっとぐちゃぐちゃにして、いっぱいにして。
他のことを何も考えずに済むように。
「……本当に、どうしようもない淫乱だな」
つぶやいたオルバンの腕が、ティスの背を乱暴に押す。
森の地面に獣のように這わされ、背後からめちゃくちゃに突きまくられた。
「あぁん、あんっ、オルバン様っ、オルバン様ぁ…!」
一突きごとに、強烈な快楽が広げられた入り口から頭のてっぺんまで駆け抜ける。
地面に爪を立て、種をつけられる雌そのもののよがり声を上げるティスの前からいつしかディアルの姿は消えていた。
それに心のどこかでほっとしながら、ティスは胸元に忍び入ってきたオルバンの指に酔う。
「ん、んぅ……もっと、こりこりしてぇ」
乳首を転がす指先をねだりながら、力強い肉棒を夢中で貪った。
「レイネも悪くなかったが…」
激しくも余裕のある動作でティスを犯しながら、その背に圧し掛かった男がつぶやく。
「お前の乱れぶりには負ける。そして…」
言いかけた言葉を、珍しく彼は止めた。
代わりのようにもう一度抱き起こされ、両の胸のとがりをもみしだかれながら膝立ちで繰り返し貫かれる。
「んはぁ、ああっ、いいっ、いっちゃう、いっちゃう……!」
背後から回された逞しい腕にすがり、ティスは口の端から唾液の糸を引きながら再び絶頂を迎えた。


***

失神するように眠りに落ちた翌日は、また何事もなかったように一日が始まる。
寝ていた間に浄火に焼かれたらしく、きれいになった体を動かしティスはいつものようにオルバンの身の回りの世話をした。
世話と言っても、それ程厄介なことはない。
旅で一番面倒なのは食事だと思うが、食料を調達するのは基本的にオルバンである。
ティスは切ったり味付けをしたりするだけで、火を使う段階になると魔法使いが代わってくれるのだ。
後は適当に盛り付けてしまえば勝手に食べてくれる。
豪勢な食事が好きなようだが、なければないで文句を言うこともない。
眠っている間も彼の魔法が身の安全は約束してくれる。
見張り番などをする必要がないので、毎度気を失うまで抱かれても後のことまで考えなくていいのだ。
貧しい家に育ち、子供の頃から働き手の一人だったティスには火の魔法使いの世話は思ったよりも簡単なことだった。
元からオルバンは一人で旅をしていたのだから、従者がいなくても別に構わないのだろう。
要するにティスの一番の役目は、彼に付き従いその気まぐれで性の相手をすること。
とはいえ、これに多大な消耗を強いられるため他のことをしようと思っても難しいのだが。
「行くぞ」
昨日の夜のことは結局一言も口にしないまま、オルバンがそう言って立ち上がる。
荷物も彼が持っているので、ティスは身一つでついて行くだけだ。
「はい」
おとなしく立ち上がり、彼の側に行くとオルバンは右手を前にかざした。
小指にはめられた水の石が青く輝く。
森の地面から飛水と呼ばれる、移動用の帯状の水流が流れ出した。
オルバンはティスを抱き上げ、ひょいとその上に乗る。
二人を乗せ、魔法で出来た小川は木々の間を縫って進み始めた。
「火でも似たようなことが出来なくはないが、専用魔法の方が楽でいい」
すっかり水の精霊石を使うことに慣れたらしいオルバンが機嫌が良さそうに言う。
彼はこの飛水という魔法がお気に入りで、最近の移動には専らこれを使っていた。


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