炎色反応 第四章・12
「んん…」
そそり立った性器の先を指先で撫でられ、ティスはうめいた。
見開かれた瞳はどこを見ているとも知れず、宙に溶けたその視線にはだがかすかな陶酔の色があるように見える。
ディアルはふっと息を吐き、分かった、と言った。
「そうだな………お前に、こんなことを言っても無駄だ。せめて、オレの気を鎮めさせてもらおう」
前置きをして、彼はまた腰を動かし始めた。
「あ、あああッ」
痛みの最奥に、腐り落ちる寸前の果実のような快楽が埋もれている。
ぴったり張り付くように直腸を押し広げる男に奥を突かれるたび、ティスの口からはたがが外れたよがり声が漏れた。
「ああっ、あああっ、あああああ!」
びく、びくんと体を跳ねさせ、小さな舌を突き出してあえぐティスを見下ろしディアルはつぶやく。
「哀れな………お前はもう、男に貫かれてよがるだけの人形だな」
「ん、んっ……そおです……」
痛みの裏側に潜んでいた悦楽に酔いしれ、錯乱状態に陥ったティスはディアルの言葉にうなずいた。
「オレが、あの人に逆らったらオレの両親も殺すってぇ……イーリックさんも、殺すってぇ」
お互いの命を人質に取られ、オルバンとイーリックに交互に中にぶちまけられたあの日。
「オレ、オレ、だけどもうっ、いいですっ……誰でもいい、入れてくれたらいい、気持ち良くしてくれたらいいんです……っ!」
オルバンでもイーリックでもディアルでも、火に包まれて死んだアインでも、他の大勢の男たちでも誰でも。
淫乱で男好きのティスは、いやらしいこの穴に太いものを入れてもらうのが大好きだから。
「逆らわない、から……あんっ、…オレ、もう、痛いの、つらいの、やだ……何にも考えないから、全部言うこと聞くからぁ…」
甘い声ですがるように叫び、ティスは潤んだ瞳でディアルを見た。
「ディアル様、出して……ね、ディアル様の、熱いの、ちょうだい…………」
いつしか、ディアルの表情が変わっていた。
大声で誓願し終えたティスを見る黒い瞳が、険しく細まっている。
「お前………」
絶句したように一言つぶやき、続いて彼は言った。
「……すまない」
深く埋め込まれた男根が抜け出ていく。
ずるりと引き抜かれたと同時に四肢の拘束も解かれた。
地の魔法使いに従っていた土の塊が崩れ落ちる。
ティスはゆっくりとその場に下ろされ、平らになった地面の上に戸惑いの表情で横たわった。
ディアルは苦り切った顔をしながら一物をしまい、右手を上げて地の精霊石を輝かせた。
地面がまた盛り上がる。
だが今度は、土の壁がまるでティスを庇うようにその周りを囲い込んだだけだった。
「すまないが、代えの服がない。それで寒くないか」
「は…………い」
まだ、事態がよく分からない。
おずおずと身を起こそうとしたティスは、下肢の激痛に気付き顔をしかめた。
裂かれた肉がぴりぴりする。
なのに、中はまだディアルが打ち込んだ楔を欲しがってひくついていた。
中途で放り出されてしまった性器も半分勃った状態だ。
狂ったような交わりから突然放り出されてしまって、どうしたらいいのか分からなかった。
ディアルは呆けたような顔をしているティスの髪に触れ、乾いて固まっている土をそっと払った。
武骨な指先が伸びて来た瞬間ティスは思わず身を逸らしたが、ディアルは黙って金の髪に付着した汚れを払ってやる。
「悪かった。どうかしていた」
強い後悔を感じているらしい彼の声は誠実だった。
「地は動かず……それをずっと、守って来たというのに」
ため息を吐いたディアルは、ふと思い出したように腰の辺りに手をやった。
背中側に小さな皮袋が結わえてある。
それを外し、中をまさぐった彼は丸くて平たい親指の先程の入れ物を取り出して言った。
「オレには傷を治すような法は扱えない。その代わり、水の魔法使いにその魔力を分けられた塗り薬をいつも携帯している」
ディアルはその入れ物をティスに向けてみせてから続ける。
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