炎色反応 第五章・16
「いたっ……、やめて…」
苦痛でしかない行為にティスは弱々しくうめいたが、ヴィントレッドは乱暴をやめないばかりかこんなことまで言って来た。
「グラウスのところには人間の兵士もたくさんいる。欲にまみれてぎらぎらした野郎ばかりだ。あいつらの慰みにお前を与えてやろう」
くく、と彼は残忍に笑った。
「素っ裸で四つん這いにして、木の板で頭と腕を平行に固定する。足には重し。その格好で、毎日何十人からの男たち全部の相手をするんだ」
うっとりと語られる恥辱に、ティスの全身に震えが走った。
まるで屠殺される家畜。
そんな格好で、同じ人間たちに犯されろと言うのか。
「穴という穴に精液を注がれて、本当に狂うまで犯させてやるよ、兎ちゃん。嬉しいだろう? 公共精液便所にしてやる」
「いや…」
次々と投げかけられる言葉にたまらず首を振ると、尻を小突いていた足先が止まった。
「じゃあ誓いな。このヴィントレッド様の子を生みたいと」
赤い髪を顔の横に垂らし、腰を屈めたヴィントレッドがティスの顔を覗き込んでいる。
「詫びにオレのを目一杯しゃぶって、その後妊娠するまで中出しして欲しいと頼んでみろ。それが出来たら考えてやってもいいぜ?」
にやにや笑う魔法使いの顔から、ティスは眉根を寄せて目を逸らす。
だがそれは許されず、ぐいと顎を捕まれ無理やり彼の方を向かされた。
「言えよ兎ちゃん。お前は飼い主がいないと満足出来ない体だ、そうだろう?」
靴先で乱暴された尻肉を太い指が割る。
「ん、んっ」
顎を捕まれたまま、ティスはぴくっと身をよじった。
どろどろの穴を太い指がかき回す。
二本、次に三本に増やされた指は並の男の一物ぐらいはあった。
「やっ、っんっ」
根元まで差し込まれた指に肉をもみ込むように愛撫されると声が抑えられない。
どこまでも浅ましい体を持て余すように震わせるティスを、ヴィントレッドは満足そうに見て言った。
「オルバンはもういないんだ。さあ言ってみろ、ぶち込んでひいひい泣き喚かせて下さいとな」
すでに突き込まれた指に、何度も射精したはずの性器がまた反応している。
いや、と言いたい。
だけど言ったが最後家畜の扱いで毎日強姦される日々が続くのだ。
……でも、相手がヴィントレッドに固定されたところでどこにその差があるだろう。
この身を貫くのがオルバン以外の男なら、誰だって…
きゅっと唇を噛み、答えないティスにヴィントレッドがまた何か言おうとした時だった。
「そいつのガキを生む前に、オレの子を四、五人生むのが筋ってもんだろうが、ティス」
笑いを含んだ声、笑っている金の瞳、その奥にある残酷な火。
いつから話を聞いていたのか、貧相な枯れ木たちをまるで従えるように堂々と林の奥から黒衣の男が姿を現した。
本気で驚いているヴィントレッドに見せつけるよう、オルバンは手を後ろに回し何かを掴んで前に投げ出す。
投げ出されたのはザザだ。
そして彼の髪は、全く一本も残っていなかった。
「…………あぁ?」
言葉を失っている様子のヴィントレッドを見つめ、何があったか禿頭になったザザが恨みがましい声を出す。
「お、おまっ、お前のせいだっ……お前のせいで!」
髪がないせいで逆に多少健康そうになった幼馴染の姿を、オルバンはけらけらと無邪気なほど明るく笑った。
「はは、どうだ、似合うだろう。そこの赤毛、お前も揃いの格好にしてやろうか?」
哄笑する彼を、ティスは安堵のあまりの泣き笑いの表情で見た。
全くの無傷。
息一つ乱している様子がない。
やっぱりオルバンは強いのだ。
ザザなどに遅れを取る訳がなかった。
ぱっと表情を明るくしたティスに気付き、ヴィントレッドは低く舌打ちをする。
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