炎色反応 第五章・20



美しい水の魔法使いが怒り狂う姿をふと思い描いたティスを尻目に、オルバンは王城な、とつぶやいた。
「カービアンな……なるほど。王城に行けば、とりあえずそいつには会えるわけだ」
そう言うと、彼はザザを見て物騒な目付きで笑う。
「案内を」
「御免だ!」
死にそうな顔でザザはぶるぶると首を振った。
「嫌だ嫌だ、絶対嫌だ! し、死にに行くようなもんだ、ヴィントレッドは絶対オレの悪口をグラウスに伝えてる! 殺される!」
まくし立てるザザのすねをオルバンがいきなり蹴飛ばす。
ぎゃっ、と声を上げ、蹴られたところを抱えてうずくまる彼をオルバンは軽蔑した目で見て言った。
「ぴいぴいぴいぴい、立場もわきまえずがなるんじゃねえよ。小物は小物らしくしていろ、オレに逆らうな」
汚らしいものを眺めるようにザザを見ていたその目が、いきなりティスに向けられる。
「それにしても、お前もずいぶん楽しんだようじゃないか、ティス」
にやっと笑われ、ティスは裸身に精液をまといつかせたまま必死に頭を下げた。
「も、申し訳ッ」
「まあいいさ。オレの仕込みがうますぎるせいだろう。一度お前を抱いた野郎は、可愛い兎ちゃんを食い尽くすまでやめられなくなるらしい」
ヴィントレッドの軽口を彼に繰り返されるといたたまれない。
「申し訳ありません…」
消えてなくなりたいような気持ちでティスがつぶやくと、オルバンはこう言った。
「自分が誰のものか分かっているな?」
ティスは慌ててすぐに答える。
「オレはオルバン様のものです!」
「そうだな。だが今は、ご主人様以外の男に散々中出しされまくった後だ」
とっさの言葉が出ないティスに、彼はこんな命令を下した。
「きれいにしろ」
「……え?」
「中からあいつの種をかき出して、きれいにしろ。その後でオレが種付けし直してやる」
あごをしゃくっての言葉に、ティスは恐る恐る聞いた。
「今…………ここで、ですか……?」
ザザの存在を気にしながら言えば、オルバンは逆にこんな風に尋ね返してくる。
「どこでやるんだ? この先に村があるようだが、そこでやりたいか?」
ティスはさっきのザザのようにぶるぶると首を振った。
「し、します」
迷いながら、視線にうながされぺたりと地面に尻をつく。
そのまま足を開き、つたない手付きで尻肉の狭間に指を差し入れた。
「……んんっ」
指に絡み付く白濁はまだ体温を宿している。
ヴィントレッドの指の跡の残る首を切なそうにうつむけて、ティスは中に出された精液をかき出し始める。
少年の痴態に痛みも忘れて釘付けになっているザザをちらりと見て、オルバンは軽く足を上げその胸を突いた。
「おい、こっちの話はまだ終わってないぞ。見物は後にしろ」
言われてザザは慌ててオルバンの方を向いた。
だが、オルバンは彼を見ない。
金の瞳はまっすぐティスに固定されたままだ。
視姦されているような気持ちになり、ティスの唇からは自然と声が零れた。
「……あ、ぁ…………オルバンさま…」
鼻にかかった甘ったるい口調で、うわごとのように彼を呼ぶ。
オルバンはティスを見てこそいるが、そこから動かずにザザに尋ねた。
「グラウスに従っているのは水だけか。地は?」
地と聞けば、ティスの頭に浮かぶのはディアルの武骨な姿。
途端に乳首がきゅっと硬くなったのを感じ、彼は恥ずかしくなって精液をかき出す作業に専念した。
ティスにとって、ディアルは一種特別な男だ。
ヴィントレッドにくびり殺される前に助けてくれたのも彼の守り。
ディアルが渡してくれた布は、もったいなくてしまったきりだ。
地の魔法使いのことを思い出していたティスだが、その視界で黒い衣の袖が動く。
オルバンが右手を上げたのだ。
長い指が形良い薄い唇に触れる。
彼はティスを見つめたまま、その指をいやらしいしぐさでぺろりと舐めた。
「……あ!」
声が跳ねる。
背筋がぞくっとした。


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