炎色反応 第六章・1
燭台の火に照らし出された広い宿の一室の中に、押し殺したようなあえぎが漏れる。
「あんっ……、んッ」
大きく広げられた白い足の爪先が、ひくひくと震える。
ベッドに腰かけたオルバンの膝の上に座らされ、座ったまま後ろから貫かれた状態でティスは羞恥に頬を染めながらよがっていた。
冷酷無比な火の魔法使いの奴隷になり、その欲望を処理するようになってからもうかなりの間が経った。
今更この体位が特別恥ずかしいわけではない。
だが大きな水色の瞳は固く閉じられ、両手は自分の口元を塞いでいる。
なぜなら今、彼らは部屋に二人きりというわけではないからだ。
「それで? ザザ」
大きく広げたティスの白い足を掴み、がくがくと揺さぶりながらオルバンは平気な顔で言う。
彼に呼ばれ、二人の結合部に目が釘付け状態のザザは隣のベッドでびくっとした。
髪と眉をオルバンに焼かれてしまったザザは、貧相ななりが更に貧相になってしまっている。
「王宮の周りには、グラウスが見張りをばらまいてるって話だったな?」
オルバンの命を狙い、彼に恨みを持つ幼馴染・火のザザを配下としていた風のグラウス。
人間の王族に取り入り、王宮を根城としている彼の動向を探るため三人は王宮に近い大きな町に入っていた。
「あっ……ああ、そう、そうだ…………この次の町辺りからだな。王宮の守護兵士に混じって魔法使いがうろついてる」
「なるほど」
うなずいたオルバンが、一際強くティスを突き上げた。
「ああッ!」
ぐちゅっ、という恥ずかしい音と共に、深いところまで主人を迎え入れてしまう。
思わず口を覆っていた手を外してしまい、慌ててももう遅い。
「あッ」
手に、見えない何かが絡み付く。
ティスには見えないが、多分オルバンの指先で風の精霊石が光っているだろう。
両腕が頭上に引き伸ばされた。
まるで見えない縄で吊るされたような姿勢で、ティスは下からの容赦のない突き上げに翻弄される。
「オルバンさまぁ……っ、あん、あああっ」
一突きされるたび、さっき一回中に出された白濁が逆流して卑猥な飛沫をまき散らす。
ぐちゅぐちゅといういやらしい音に加え、ザザがごくりと生唾を飲む音が聞こえた。
「あぁっ……、ザザ様、み、見ないで、そんなに…! ああっ……!」
「ティス、わざわざそいつにまで様を付ける必要はないぜ」
ザザと比べると一層引き立つ精悍な顔立ちに、一人涼しげな微笑を浮かべオルバンは言った。
「ザザもこいつの淫乱ぶりも見慣れただろうが。お預け食った犬みてえな面はそろそろやめたらどうだ?」
だったらわざわざ自分を犯しながらではなく、話に専念したらどうだろう。
恨みがましい気持ちでティスは思ったが、そんなことを思っていられたのも一瞬のことだった。
「ひっ…………!?」
全身に、一時に違和感が生じた。
例えるなら鳥の羽根で、さわさわと撫でられているような感触。
くすぐったさにも届かない、何ともじれったい感覚がティスを包み込む。
しかもオルバンは、乱暴な抜き差しを突然やめてしまった。
「んっ、ん…………」
深々と彼に貫かれたまま、中途半端に追い上げられた体をくまなく撫でられる。
「はぁっ……、ん、ぅ……」
分かっている、これも風の魔法だ。
普段鍛錬など積んでいる気配のないオルバンが、他を圧倒する強大な力を保ち続けていられる理由にティスは最近気付いた。
元からの素養も群を抜いているのだろうがそれだけではない。
自分をこうしてもてあそぶ際、彼はよく魔法を使う。
あれがおそらく訓練の一つになっているのだ。
特に今は、風の精霊石というまたとないものを手に入れたばかり。
地水火風の四つの要素に分かれた魔法使いの内、最大の能力を持つのは風。
つい最近まで水の精霊石を自在に使いこなしていたオルバンだが、さすがに風は一筋縄ではいかないのだろう。
そのためにかティスを実験台にして、毎日あれこれと試行錯誤を繰り返している。
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