炎色反応 第六章・2
最もこれは、オルバンにじかに聞いたわけでない。
あくまでティスの想像であり、余計な質問をして彼を怒らせるつもりはないのだ。
だがオルバンがどういうつもりでいるのであれ、ティスにしてみれば実験をされているのと同じである。
次から次へと手を変えられるためいつもびくびくしていなければならない。
いつ何をされるか分からないまま、常に気を張った状態に置かれているのはつらい。
しかしその緊張や不安さえも、快楽を高める一因となっていることをティスもまた心のどこかで知っていた。
「あぁ、う……あぅ………っ……」
そうは言っても、今使われている魔法はつら過ぎる。
脇腹、首筋、へそや乳首、硬く張り詰めた性器など全てを満遍なくくすぐられる。
「はっ、あっ………あ、あ……もう……、オルバン様、もう……っ」
高められるだけ高められた体には、この責めは耐えられない拷問だった。
「どうした?」
理由など分かっているくせに、オルバンはとぼけて見せる。
「あっ! あっ…………あ……、も…、早くっ……」
自ら尻を振れば、深くくわえ込んだ肉棒が中をこすって痺れを生んだ。
でも到底、ティスの求めには足りない。
「早くぅ…………オルバンさまぁ、して、して下さいっ……」
微細な力にくすぐり続けられる体は、達するぎりぎりのところで留められた状態にある。
放り出されているわけではないが、一度に与えられる快楽が弱すぎて絶頂まで昇り詰められない。
「奴隷の分際で、主人に命令とはいい度胸だな」
低く笑ったオルバンの手が伸び、ティスの右胸の乳首を軽く摘む。
「んっ」
それだけで、刺激に飢えたティスの体はびくんと跳ねた。
「ザザ」
指先でそこだけをいじってやりながら、オルバンはもだえるティスの向こう側のザザを呼んだ。
「他に知ってることは?」
またもティスの体に見入っていたザザは、慌てて彼の問いに答える。
「……いやっ…、わ、分からない、それぐらいだ。後は王城の中のことぐらい…」
「それでいい。しゃべれ」
「わ、分かった」
切ない息を吐き続けるティスの、この上なくいやらしい表情から目を逸らしながらザザは努めて冷静な声を出そうとする。
「王城の中の、西の棟をグラウスは丸ごともらってる。その中に魔法使いと、それに人間の兵士も大勢いる」
「人間の王から兵士を頂戴したってわけか?」
「そういうのもいるが、グラウスが自分で集めた奴も多い。多分あいつ、何か実験をしてるんだ」
「実験?」
興味を示して聞き返したオルバンの指が、きゅうっとティスの乳首を摘む。
「あんっ!」
強くなった刺激にびくびくと震えるティスにかすかな笑みを漏らし、彼は顎でザザに話の続きを促がした。
「多分だけどな…………あいつが集めてる人間は、ごろつきみたいなのも多いけどそれこそその、ティスみたいな、ただのガキとかも混じってるんだ。そしてそいつらは、しばらくすると、全然、姿を見なくなる」
「臆病風に吹かれて消えたんじゃないか?」
「そうかもしれないが……でもそれなら、何でそんなのを、あのグラウスがわざわざ連れて来るんだよ」
少しだけ反抗的な口調で言い返したザザの右手が、いきなりティスのそれのように頭上に引き伸ばされる。
「いてて!」
「口のきき方に気を付けろよ、ザザ」
風の魔法を素早く放ったオルバンは、調子を確かめるように小指を動かした。
水の精霊石に代わったような形で手に入れた風の精霊石を、彼はその指に付けている。
「ふん、だがお前の言うことにも一理ある。……そうだな、まずはやはりこの目で確かめてみるか」
つぶやいたオルバンの手が、ティスの胸を離れゆっくりと下方に動き始める。
同時にティスの体を攻めていた、そよ風のような力が止まった。
「……あっ……」
ぴくっと震え、小さな声を漏らしたティスは次の瞬間痛みに悲鳴を上げた。
「いたっ…! オルバン様、い、痛い……っ!」
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