炎色反応 第七章・1



昨日から今朝方にかけての時間の中で、多分イーリックを受け入れていない期間の方が短い。
「はぁ、んっ、やっ……あぁ…………っ」
強制的に開かれた足先を震わせながら、ベッドの上に横たわったティスは苦しげな喘ぎを漏らす。
「ティスのここはすごいね……こんなに広がって……」
容赦のない腰使いで少年を征服しながら、その上に覆い被さったイーリックはうっとりとそう言った。
朝の光が窓から差込み、美しい金髪を振り乱し情交に耽る二人の姿を惜しみなく照らしている。
グラウスの配下として王城の一角に部屋を与えられているイーリックは、そこにティスを軟禁していた。
元が優れた剣士だった彼は、今や三つの精霊石を駆使する魔法使いである。
あの火のオルバン、地のディアルすら撤退させたという実力をかわれてのことだろう。
再会して後もたびたび何かの用事を言い付かり、名残惜しそうに出て行く背を見送るたびにティスは大きな安堵の息を吐いていた。
だがその分、ひとたび空き時間が出来ればこういう状態になる。
ずっと硬いままの彼の男根に串刺しにされたまま、夕べティスは意識を失いこの朝を迎えた。
「真っ赤になって、ひくひくして…………いやらしい子だ。本当に、ひどくされるのが好きなんだね…」
何度も精液を吐き出された穴はどろどろに濡れそぼっている。
剣だこのある長い指でイーリックは軽くそこを引っ張り、自分を受け入れている箇所を覗き込んで来た。
「やめて……やだ、そんな風に見ないで……」
今更と思われても、嫌なものは嫌だ。
泣き腫らした瞳を固く閉じ、ティスは懸命に聞くまいとする。
だが両手をそれぞれベッドの柱に縛り付けられ、太腿に金属棒を渡され固定された苦しい体勢だ。
この状態で尻を抱え上げられ、開いた足を胸に突くような姿勢で犯されている。
身をよじろうにも限界があり、耳をふさぐことも叶わない。
「外して…………痛いよ、もう、やぁ……」
夜遅くに戻って来たイーリックは、うとうとしていたティスをいきなりこんな風に拘束した。
驚き暴れようとしたが叶うはずもなく、風の魔法に服を裂かれそのまま犯されたのだ。
あれからずっと、縛られたまま。
手首が縄ですり切れて痛い。
棒で固定されている足も、縛られているところが青いあざになり始めているのが分かった。
再会してからイーリックはひどいやり方でばかりティスを抱く。
オルバンのように他の男にさせたりはしないが、それ以外はほとんど変わらない。
水の魔法による癒しの術を持っているから、体に傷が付くようなことがあれば後で治してはくれる。
痛くしてごめんね、とも言ってくれる。
だけどその後こうも言う。
けどティス、悦んでたよね?
「嘘つきだね。いつもよりきついよ…………縛られるの、好きなんだろう?」
兄のように慕っていた青年が口にするはずのなかった言葉の数々もまた、心からティスを犯していく。
最悪なのは、それもまたこの淫らな体の感度を高める一つの要素なのだとティス自身が知っていることだった。
「可愛いティス。さあ、中に出してって言ってごらん…」
「……やっ…………、嫌ぁ……」
尻肉をもみしだかれながら犯されるティスは、唯一動かせる首を振って恥ずかしい行為を拒む。
だがイーリックはくすくすとおかしそうに笑うだけだ。
「嫌がるふりしたって、最後には君はおねだりするじゃないか。夕べだって…」
昨夜の痴態を匂わされ、ティスはただでさえ赤い顔をもっと赤くした。
わずかな時間をも惜しむよう、ねっとりと攻め立てられ散々喘がされたことは記憶に新しい。
体中彼の舌や手が這わなかった場所はない程じわじわとなぶられ、どんなに嫌がっても恥ずかしがってもやめてくれない。
けれど最後には彼は必ずこうやって、ティスに求めさせようとする。
そしていつもいつも、淫らなこの肉体は絶頂の誘惑を拒むことが出来ない。
夕べもこんな風に突き入れられ、微妙な線で保たれた快楽を与え続けられていたぶられた。
中に出して、犯してと大声でせがむまで、執拗な愛撫から解放されることはない。
…………オルバンが来てくれる様子も、ない。


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