炎色反応 第七章・2



一度恐る恐るイーリックに聞いたことはある。
オルバン様はどうなったのかと。
答えは卵大の振動する玩具を押し込まれた上に、彼のものまで入れられて気が狂いそうなほど攻め立てられるというものだった。
「そんなにあいつのことが好き?」
息も絶え絶えな状態でがくがくと揺さぶられながら、耳元でそう繰り返すイーリックの言葉をずっと聞いていた。
失神することも許されないような甘美なあの時の責め苦を思うと、とても同じ愚を繰り返すことは出来ない。
けれど、だからと言ってこのままでいいとも思っていない。
だけど…………一体どうすれば、事態を好転させられるのだろう。
こんな風に縛り上げてティスを犯したりするイーリックだが、普段は泣きたい位に昔のままだ。
暖かく、優しくて、行為を終えた後はある程度の自由は与えてくれる。
彼に与えられたこの部屋を含めた、一定の区画内なら歩き回っても問題ない。
もちろんひとたび逃げ出そうとすれば、にっこり笑って簡単に阻止され後は手酷い陵辱が待っているのだが。
例えイーリックが出かけていった後でも、ここは王宮内部という全くの別天地。
グラウスの配下たちがそこここを歩き回っており、とても隙を盗むことなど出来そうにない。
何とか逃げ出そうとしたことはあるが、いつも呆気なく連れ戻されてしまう。
そしてその報告を聞いたイーリックは、仕方ないな、と微笑みながら震えるティスの体をたっぷりと貪るのだ。
「……んっ、ん、くぅっ…………」
整った顔立ちを歪め、ティスは懸命に喘ぎを殺そうとする。
ぎしぎしと激しく鳴るベッドの上に、桜色に染まった肌から汗と精液が滴り落ちては敷布を濡らしていた。
今のティスに出来る抵抗は、せめて少しでも感じまいとする時だけ。
きゅっと唇を結び、切なそうに眉を寄せた表情を見てイーリックは低く笑った。
「……しょうがないな、ティスは。もっとひどくしないとだめみたいだね」
声音の底に潜んだ残忍な何かにぞっとする。
だが次にイーリックがしたことは、風の石を光らせてティスの太腿を押し広げていた金属棒の結び目を切ることだった。
驚いたティスが思わず彼を見上げると、イーリックは同じ力で空中に棒を持ち上げてしまう。
そして、広げた太腿の上に手を置いた状態でティスの中に突き入れていたものを引き抜いた。
「えっ………?」
訳が分からず、掲げられた棒をティスは戸惑いながら見つめる。
するとイーリックはにっこりと優しく笑った。
「君は、色々なものを入れてもらうのが好きだよね?」
一瞬硬直したティスの、まだ濡れてひくひくしている穴をむき出しにした格好で固定したイーリックの指輪がまた光る。
彼が何を考えているのか悟り、次の瞬間ティスは真っ青になった。
「え、やっ……いや、いや! やめて!」
風を切る音が無情に響く。
さっきまでティスの足を拘束していた金属棒が、躊躇のないしぐさで中に突き入って来た。
「い、いやっ! 嫌そんなの……あああっ!」
拒もうとしても、精液に濡れてひくつく穴は異物をたやすくに飲み込んでしまう。
ずぷっ、ずぷっと音を立て、濡れた奥をえぐるように人ならぬ硬い感触が出入りを始めた。
風の魔法に動かされている棒に犯されるティスを、イーリックはあくまで優しい顔で見つめている。
「気持ちいい? ティス。好きだろう? 長くて硬いの」
「ひっ…………ん、冷たいっ……やっ、だめえ……」
異常な光景から眼を覆うことも出来ず、掲げられた尻に埋まっては引き抜かれる棒を絶望的な思いで見つめる。
「やだっ…………こんなのやだ、やめて、イーリックさ、やっ……!」
肉棒ならぬただの棒で、こんな風にされて絶頂を迎えるなんて嫌だ。
縛られた手首に縄が食い込むのも構わず、激しく状態を揺すって泣き喚くティスにイーリックは選択を迫って来た。
「じゃあ、僕のが欲しいって言って」
言葉と同時に指が伸び、硬くとがった乳首を片方つまみ上げられる。
新たな刺激に短い悲鳴を上げたティスの顔をじっと見ながら、彼はこうささやきかけて来た。
「こんなのじゃなくて、僕に犯して欲しいって言ってごらん」


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