炎色反応 第七章・8



思わせぶりな言葉をいぶかしみ、ティスは戸惑いの瞳で彼を見つめ続ける。
そういえばさっきヴィントレッドも妙な様子を見せていたような。
彼らの言葉の意味が掴めず、不安げな表情をしているのにカービアンも気付いたようだ。
おや、というような顔をして、相変わらずのおっとりとした笑顔で聞いて来た。
「イーリックに何も聞いていない?」
「いえ、何も…………何のことですか?」
「そうか、私はてっきり君は分かっていて彼を拒絶しているのかと思っていたよ」
穏やかに微笑むカービアンの唇から続けて出て来た台詞に、ティスは言葉を失った。


***

夜遅くイーリックが戻って来た時、ティスは昼間彼が放置したままの格好でベッドに寝そべっていた。
微笑みを浮かべて近付くと、びくっと肩を震わせ彼の方を向く。
もう一度微笑んだイーリックは、細い手首を戒めたままの縄の辺りを撫でて言った。
「すり切れて、赤くなってしまってるね。ごめんね……」
そのまま縄を外すかと思いきや、彼は突然ベルトを緩め始めた。
少しだけ前屈みになり、取り出した一物をティスの口元に持っていく。
瞳をぱちぱちとさせ、かすかに怯えたような顔付きになった少年にイーリックは優しい声で言った。
「手、外して欲しいんだろう? 口でちゃんとしてくれたら外してあげる」
口での奉仕は積極的な動きが必要になるため、普段ティスは嫌がってなかなかやらない。
だが今夜の彼はいつもと様子が違った。
おずおずと唇を開き、自分から少し顔を寄せてすでに硬くなり始めている物を口に含む。
「んっ…………ん」
ちゅう、と音を立てて先に吸い付いてから、目を閉じ無心に舌を使い出す。
横になっている姿勢が辛いのか、自ら起き上がり口一杯にイーリックのものを頬張った。
「そんなに痛かった?」
思わぬ積極的な反応に意外そうな声を出したイーリックだが、巧みな舌使いにすぐにかすかに息を乱した。
「うっ……、いいよ、ティス、上手だね…………」
大きな手が、口淫技術を褒めるように頭を撫でる。
その指先にはまった精霊の指輪を意識しながら、ティスはひたすら男の性の求めに応じることだけを考えていた。
「んっ……ん、んむぅ……」
くびれた部分を辿るように舌を這わせ、喉の奥まで飲み込むようにして扱く。
柔らかな粘膜に包み込まれ、丁寧に舐めしゃぶる熱心なしぐさを見下ろしイーリックはぶるっと腰を震わせた。
「ああ、すごいよティス………、本当に、上手だ……」
頭を撫でながら、彼はゆっくりと体を前後に揺すり出す。
喉の奥を突かれてむせそうになりながら、ティスはもう咥えきれない程に育った男根をしゃぶり続けた。
「んふ、んっ、んぐ…………っ!」
ぐぐっと大きくなった肉棒が口の中で弾ける。
青臭い味が口腔に広がり、どろりとした感触が食道を伝い落ちていった。
溢れんばかりの白濁を滴らせる一物を、イーリックはティスの口から引き抜き先端を愛らしい顔に向けた。
「……ふっ……、ん、ぁ…………」
濃い体液が上気した額や頬を汚して流れ落ちる。
こんな風にされても、今夜のティスはどこか痛ましいような表情をして目を伏せているだけだ。
「……どうしたの? 変におとなしいね」
ひとしきり欲望を満たしたイーリックは、荒い息を整えながら自分の出したものでべたべたになったティスの顔をそっと撫でる。
「昼間の、そんなに辛かった? どこか痛い?」
そう言って彼は、まだ縛られたままのティスの手首に目をやった。
「まずはこっちを外そうね。傷も治して……」
言いながら彼は指輪たちに力を送る。
風の石が輝き始め、空気の刃が縄を切ろうとした瞬間ティスははっとしたように声を上げた。
「やめて!」
突然のことに、イーリックはびっくりした顔をして術の発動を中途で止めてしまう。
「ティス?」


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