炎色反応 第七章・17



「……何にも考えられないぐらい、気持ち良くしてあげるよ」
ささやいたイーリックは、ティスの性器を束縛していた指をどけた。
代わってひくつく先端の穴に、ひどく細い水の触手が潜り込む。
「んっ! んふ……ぅ…………」
びくんと背筋をしならせ、また一つ増えた快感にティスはなすすべもなく身をよじった。
それを確認し、無言でイーリックは腰を動かし始める。
「ンン! んっ! んぅ、んあ、んん、んーっ……!」
口を塞がれた状態で、三つの穴に甘い責め苦を与えられる。
銀の触手が動くたび、水と体液の入り混じったものがそれぞれの穴から卑猥な音を立てて飛び散った。
イーリックは空いた手でティスの乳首をいじり、摘み上げ、全ての性感帯をそうして支配してしまう。
「んあ……、ん…………むぅ、んん、ん、ぅ……」
声も上げられないまま、感じやすい場所をぐちゃぐちゃにこね回されて頭の中が白く溶けていく。
信じられないぐらいに気持ちがいい。
それしか考えられない。
でも、これも魔法による力だ。
これ以上彼に魔法を使わせるわけにはいかないのに。
そう思い、一瞬身じろいだティスの中に更に触手が押し入って来た。
「んんんんーっっっ……!」
敏感な内壁が蕩け出しそうなほどに舐めしゃぶられ、擦られる。
「んふ、んあ、んっ、んッ…………!」
理性を飲み込み、まるで暴力のような快楽がわずかな抵抗をも押し流していく。
オルバンにされる時にも似た悦楽にかかっては、この体が抗い切れるはずがなかった。
「んっ、んんっ、ん……っ……」
絶頂は、呆気なくやって来た。
力なく伏した肉体の中心、嬲られて薄赤くなった性器の先から涙のような白濁がとろとろと零れ出す。
ぼやけた視界の向こうにイーリックの辛そうな顔がにじみ、そして全てが闇の中に吸い込まれていった。



***

目覚めると、軟禁されていた部屋のベッドの上だった。
白い簡素な寝巻きを着せ付けられた状態で、ティスは敷布の上に横になっている。
「……イーリックさん…………?」
ぼんやりしたまま起き上がって辺りを見回しても、彼の姿はどこにもない。
ただ枕元にパンと冷たいスープの入った皿が置いてあって、おなかが空いたらお食べと一言彼の字で伝言が残されている。
食欲などあるはずもなかったけど、いつも通りのその優しさが身に染みる。
と、その時、また部屋の入り口のところでかたっという音がした。
今度こそイーリックだろうと思って見てみると、そこにいたのはティスの全く知らない少年だった。
だが何となく、不思議な親近感を感じる。
そう思ったティスは、次の瞬間少年の大雑把な外見が自分に似ているのだと気付いた。
年の頃も同じだし、ちょっと色味が違うが金髪であることも同じ。
細い体型も髪形もそっくりなので、遠目に見たら間違えてしまうかもしれない。
白っぽい金髪をした彼は、ティスを怯えたような目で見つめている。
いじめられることに慣れて諦めた、痩せた子犬のような目付きだ。
見たことのない顔だが、王宮仕えの誰かが間違って入って来てしまったのだろうか。
すぐに逃げていくかと思いきや、その少年は何か決心したような顔になってそろそろと室内に足を踏み入れて来た。
「君が……、ティス?」
しげしげとこちらを見つめながら名前を呼ばれ、ティスはびっくりして思わず聞き返した。
「だ…………、誰?」
「……僕はレミー」
名前を出されても、やっぱり全く聞き覚えがない。
戸惑うばかりのティスの気持ちを読んだのだろう。
おどおどと視線を床に伏せたまま、レミーはためらいがちにこう聞いて来た。
「イーリックさんから、僕のことを聞いたことがない?」
「ううん……」
「…………そうか」
心なしか、彼は傷付いたような顔をした。


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