ハンター・ハンティング・4



セイを犯そうとしていた触手を切り落としたラヴェルが、平たい岩のすぐ横に立っていた。
手にした剣は暗緑色の体液に汚れている。
力強くその剣を払い汚れを跳ね飛ばすと、ラヴェルはテンタクル・ボールという名の魔物本体に再び向かって行った。
シャアッと威嚇のうなり声を上げ、魔物は何十という触手を掲げ彼を迎え撃つ。
だがラヴェルには何ら臆した様子がない。
酒場で横柄に振る舞っていた姿とはまるで違う。
名高いハンターに相応しい、一種荘厳さすら感じられる空気を今の彼は身にまとっていた。
よろよろと身を起こしたセイが見ている間に、瞬く間にテンタクル・ボールを形作る触手は減っていく。
最後には大量の体液を辺り一面にまき散らしながら、異形の怪物はこと切れた。


***

森中がほっと安堵のため息を吐いたような、そんな静寂が戻った。
「これでしばらくは遊んで暮らせる」
つぶやいたラヴェルは動かないテンタクル・ボールに近付き、狙いを付けて剣を突き刺す。
すでに流れ出す体液を失っているらしき魔物の腹部に手を突っ込み、そこから青紫色をした臓物を幾つか取り出した。
最近付近一帯を荒らしていたこの魔物を倒した証拠を持ち帰り、ハンターギルドに提出する。
そうすれば莫大な懸賞金と、また一つの名誉が彼のものとなる訳だ。
最も今のラヴェルにとって、名誉など何の腹の足しにもならない下らないものでしかないが。
ラヴェルは続いて汚れた剣を用意してあった布でざっと拭い、しかめ面をしてセイに近付いた。
まだ足を開いた格好のまま、夢見る瞳をしている少年を彼は呆れたように見て言った。
「オレが戻って来てやったことに感謝するんだな。でなけりゃ今頃お前はあいつの卵をぶち込まれ、卵がかえった後は最初のエサになるところだったんだぞ」
「……あ……、あ…?」
早口にそう言われても、セイにはまだ状況が飲み込めない。
潤んだ瞳をげんなりしたように見ていたラヴェルだが、彼の瞳はふとセイの体液にまみれた下肢へと移った。
「…………ん……」
ラヴェルの手が足に触れ、ぴくりとセイは身を震わせる。
「ふあ、あ、あっ!」
彼の手はいきなりセイの足の間に入り、無遠慮にしとどに濡らされほぐされた穴に触れてきた。
「はあっ、あんッ」
「卵を入れられた様子はないが……どうした、ずいぶんおとなしいじゃないか」
昨日の夜もついさっきも、セイはラヴェルの振る舞いにかんかんに怒って去っていった。
今あられもない姿をさらけ出し、そんなところを指で探られているのに上がるのは可愛らしいあえぎ声ばかり。
「あ、ん、だ、だって………」
ようやく、麻痺毒が抜けて来た。
しかし自由を取り戻し始めたセイは、ラヴェルの指を含んだまま切なそうに身をよじって言う。
「から、だ、あつい…………ラヴェルさん、指、……抜いて…」
だが、ラヴェルが少し指を動かすとセイはびくっと身体を跳ねさせた。
濡れそぼった柔らかな肉が引き止めるように締め付けてくるのを感じ、やや間を置いてラヴェルはにやりと笑う。
「抜いていいのか?」
くちゅくちゅと音を立てながら、彼は差し込んだ指を動かし始めた。
「ふあっ! あ、んんっ、ぬ、抜いて、だめ、へ、変だよ……」
「何が?」
意地悪く問いかけながら、ラヴェルはセイを正面から見下ろす位置にしゃがみ込む。
破れた衣服とちぎれた革鎧を身にまとった、恥ずかしい姿を眺める彼の顔付きも次第にいやらしいものを含み始めていた。
「行きがけの駄賃だな。見目も悪くないし…………助けてやった恩、返してもらおうか」
楽しそうにつぶやいたラヴェルはぐいっと大きくセイの足を開かせる。
ああ、と思わず声を上げたセイは、指を二本に増やされまたびくびくと身を震わせた。


←3へ   5へ→
←topへ