Don't Leave me ・12
「あ、あっ……! ジラルド、さんっ、や、やめてぇ……!」
快感にびくびくと抱えられた足先が引きつる。
乳首に感じたよりもはるかに強い性感にアシェンは恐怖すら覚えた。
当然恥ずかしさも比べ物にならない。
「やんっ……、やぁ、そこだめッ、そんな……、あ…!」
見下ろせば、ぎりぎり上着の裾に隠れる位置でジラルドの指が自分のものを握っている。
ねちゃねちゃという卑猥な音がひっきりなしに聞こえていた。
服の下では先走りがあふれ出て、彼の指を汚してしまっているだろう。
「だめッ、服、指……ぃ、よごれ、ちゃっ……」
手を伸ばし、ジラルドの愛撫を止めようとしたが、くすりと笑った彼に呆気なく阻まれた。
「構わないからいい子にしていろ。大丈夫だ、誰にも言わない」
アシェンがこんな風に、彼に触れられよがっていることは誰にも。
あやすように言われた台詞が羞恥を煽る。
その上ジラルドの指は単調に上下に擦るだけではなくなって来ていた。
「あっ、あっ」
親指の腹で、先のくぼみを丁寧になぞられる。
体液を搾り出すように、根元の辺りから何度も握り込まれた。
そうかと思えば急に乱暴に、摩擦で焼けそうなぐらいに扱き上げられる。
緩急を付け、次第に激しくなっていく指の動きに、アシェンは簡単に追い上げられていった。
「僕、……僕っ、だめ、で、ちゃ、うっ……!」
びくっと一際大きく震え、アシェンは涙混じりにそう叫んだ。
「…………っは……」
びくびくと胸や肩が震える。
下腹に広がる、濡れた感触がいたたまれない。
おまけにジラルドは、散々アシェンをなぶった指先をすっと彼の目の前に掲げた。
「ぁ…」
声が詰まる。
ジラルドの長い指に、半透明の液体が糸を引いて絡まっていた。
「……たくさん出たな」
指先をこすり合わせ、ねっとりとしたそれを楽しむように見せ付けてジラルドはささやく。
「ぼ、僕っ……」
真っ赤になって身を縮こまらせるアシェンに、彼はなおも意地悪く笑った。
「そんなに気持ちが良かったか? 可愛い声を出して……」
艶っぽい低い声は、今までアシェンが聞いたことのないもの。
耳元に吹きかけられる吐息といっしょになって、奇妙に胸をかき乱す。
守ってくれた優しい人。
そのはずの彼が、このような状況の中で思わぬ意地の悪さを見せてくる。
ひどく悲しくて、悔しさすら覚えて、アシェンは思わず言った。
「……ジラルドさん、ひどい……っ!」
あんまりな彼のやり様に、涙を浮かべて抗議する。
濡れてきらきらと光る青い目が、責めるように背後の男を見上げた。
「から、からかわないでよっ……、僕、僕っ、……こっ、怖かったんだ、からっ……!」
殺される、食べられると怯えて泣き叫んだ。
最後まで自分が何をされているか分からず、終わった後は衝撃と喪失感だけが残った。
何度ジラルドの名を呼んだか分からない。
彼さえ来てくれればとあんなに願ったのに、その彼がこんな風な態度を取るなんて。
勝手な期待だったかもしれないが、どこか寂しげで優しいジラルドのことが大好きだったのに。
今にも泣き出しそうな顔をしたアシェンを、ジラルドはかすかに瞳を細めて見下ろしている。
端正な顔立ちを切なげに歪め、彼はぽつりとこう言った。
「本当にひどいのは、誰だろうな」
思わぬ言葉に戸惑い、アシェンはジラルドを見つめた。
曇りのない青い瞳をじっと見つめたジラルドは、なぜか諦めのこもった微笑を浮かべる。
「何でもない。……悪かった、もうこんな意地悪はしない」
彼はそっとアシェンの髪に口付けを落とした。
「意地悪はしないから……続きをしてもいいか?」
濡れた指先がまた上着の下に潜る。
あぐらをかいた膝の上、緩く開かれた状態のアシェンの足の間にその手が入って来た。
「あっ……」
ぴくっと震えたアシェンの、射精直後の萎えた性器の下に指先は進む。
さっき媚薬をかき出されたそこを、ジラルドの指が軽く押した。
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