Don't Leave me ・14
「だが……やめてもいいのか?」
ちゅく、と音を立て、彼のものがほんの少し強くアシェンの濡れた穴に押し当てられる。
「あっ」
びくっと身を逸らすと、それは呆気なく引いていった。
そしてまた、焦らすようにゆっくりと擦り付けられる。
「んっ、んっ……」
ぬめる先端を含まされた一瞬、痛みと恐怖と甘い痺れが蘇って来た。
最後の最後で選ばせてくれようとする、ジラルドの申し出がかえってもどかしく感じられた。
いっそ無理やりに貫いて欲しいと、思った瞬間かっと頭に血が昇る。
こんなことを考えてしまうなんてどうかしている。
でも、こんなことを考えてしまうこと自体が魔物の毒に当てられてしまっている証拠なのかもしれない。
アシェンはただの行商人の子で、魔物に対抗するような力も知識もない。
ジラルドの指で繰り返し突かれた中が、じんじんとうずいているのも事実。
ここで彼の申し出を拒んだらどうなるのだろう。
汚されたこの体を抱え、ふらふら家に戻ったりしたら家族に何があったのか知られてしまうかもしれない。
迷うアシェンの背に、ジラルドの唇が触れる。
「……んっ……!」
舌先でゆっくりと背筋を辿られると、アシェンは声もなく震えびくびくと身をよじった。
「アシェン…」
なぜか切ない響きのこもった声で名を呼びながら、ジラルドはそのまま更に舌を滑らせる。
両手でアシェンの尻肉を掴み、そこへ顔を寄せた。
「あぁッ!?」
アシェンの声が大きく跳ねた。
「ひゃんっ……、やっ、舌ぁ…………、だ、だめっ……」
知らぬ間にぱくぱくと、物欲しげに口を開けていた穴に熱い舌がねじ込まれる。
ぴちゃぴちゃと音を立ててそこを舐められ、アシェンは敷布を握り締めた。
自分を犯したあの魔物が、最初にしたのと同じ。
思い出したことが更にアシェンの肌を過敏にさせる。
「だめっ……そんなとこッ、そんなに、ジラルドさっ…、いやあ、もうだめ……!」
熱に浮かされたような声で叫ぶアシェンのものは、だがまた硬くなっていく。
ジラルドの舌も止まらず、とがらせた先で細かなしわを辿るようにたっぷりと舐めしゃぶった。
「……はっ……、ぁ……、あ」
恥ずかしいところを隅々まで舌で犯されて、アシェンはぐったりと力を抜く。
か細い息を吐くその瞳は潤み、全身が淡い桜色に染まっていた。
「…………可愛いアシェン。我慢しなくていい」
顔を上げたジラルドは、濡れそぼりひくひくと震える穴を親指でなぞりながら言った。
アシェンには見えない怜悧な美貌には、ほの暗い微笑が浮かんでいる。
「一言、オレが欲しいと言ってくれれば……何もかも忘れられるぐらい、気持ち良くしてやる」
親指が濡れた穴の縁にかかる。
「やだっ……」
軽くそこをめくり上げられたことを知って、アシェンはいやいやするように尻を揺らめかせた。
「要らないか?」
だが、そう言われると困ってしまう。
舌で濡らされた内部は勝手に収縮し、満たしてくれる何かを求め恥ずかしげもなくひくついていた。
やっぱり今日のジラルドは何か変だ。
もう意地悪はしないと言ったくせに、妙に饒舌にアシェンを追い立ててくる。
でも、自分も変だ。
彼に意地の悪いことをされるたび、怖くて恥ずかしいのに感じてしまう。
これが魔物の使った何かの力のせいならば、アシェンが頼るべき相手は一人しかいない。
それにあまり時間もない。
これ以上迷っている暇はなさそうだった。
「…………して」
小さな声でアシェンはつぶやいた。
「して…………ジラルドさんので、僕、きれいにして……」
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